企業の人材育成のニーズに応えるために、著者は「マインド・ストレッチ・セッション」を開発した。このセッションの目的は、新たな価値とマーケットの創造に挑戦するために戦略的に発想する力と、人と組織を動かす変革のリーダーシップを身につけた変革リーダーを育てることである。
革新的な先進企業の事例として、セブン&アイグループを見てみよう。彼らが時代を超えて快進撃を続ける秘訣は、会社のブランドメッセージにある。そこには「お客様が望んでいること」にすぐに応えられるグループを目指すという、流通業の真髄をついた考え方が詰まっている。社員全員がこのミッションを実行できれば、マーケットから「なくてはならないお店」として支持されるだろう。
セブン&アイグループでは、各店舗が仮説と検証を繰り返しながら発注を決定しており、全ての仕組みが顧客起点で組み立てられている。商品のクオリティの追求も凄まじく、商品化するには、経営トップの試食という関門を通過しなくてはいけない。セブン&アイグループが生み出す付加価値は、顧客の期待値を超え、他社が簡単には真似できない商品やサービスとなって、顧客を感動させるのである。
日本企業は、グローバル市場で非常に厳しい状況に置かれている。日本より賃金が安い新興国でも、技術力の向上により、日本と遜色ないものを作れるようになった結果、他国の製品がグローバル市場を席巻するようになったのだ。
日本がグローバル競争で勝つためには、会社自体を「人がやっていないことをやる」「本当に社会が困っていることに取り組む」というマーケット創造型の経営に転換する必要がある。そのためには、日本企業は今ある前提を全て疑い、今後のあるべき姿を再定義して、経営構造改革や新たな文化の創造に取り組まなければいけない。企業が生まれ変わるには、組織のメンバーを力強くけん引しつつ、顧客や現場で働く人たちの意見をよく聞いて、良い提案を迅速に取り入れていくリーダーシップを持った「変革リーダー」の育成が重要である。
企業のミッションを考える際には、ケーススタディで「素晴らしい」「感動した」と思ったことを、「自分たちの世界ではどのように活かせるか?」と自分自身に引き寄せて考えてみることが大切だ。
リーダーシップを発揮するうえでは、権限を持つ職位に就いているかどうかは関係ない。リーダーシップは、先天的な資質ではなく、信頼感を得ることで生まれる自然発生的な影響力であるため、実践によって身につけられるのである。
変革リーダーになるには、次の3つの力を身につけなくてはいけない。人がまだ思いついていない次世代のマーケットや新しい価値を見つける「活路を見出す力」、批判を恐れずに大転換に突き進む「大きく舵を切る力」、そして説得力と人を惹きつける魅力によって「人と組織を動かす力」である。一方、変革リーダーは、前例主義やセクショナリズム(部門主権への固執)、管理統制の発想から脱却することが求められる。
変革リーダーの最初の仕事は、最大の抵抗勢力となる上司を口説くことである。「顧客の声」や「現場の声」を起点とした根拠ある提案ができれば、上司も納得し、周囲を巻き込んでバックアップしてくれるようになるだろう。
あらゆる仕事で成果を出す際に必要な要素が4つある。
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