モデレーターは、生活者に気持ちよくしゃべらせ、普段は意識にのぼらない、その人の本当の気持ちを引っ張り出すプロである。生活者の本音やリアルな声こそが、次なるヒット商品につながる大事なヒントになるのだ。
例えば、あるアイスクリームについて、インタビュー対象者から「トッピングがたくさんかかっているからおいしい」という声が出たとする。モデレーターが「なぜトッピングがほしいのか」を聞き出すことで、「最後までおいしく食べられるから」という隠れた本音にたどり着くことができる。この発見が「トッピングを表面にかけるだけでなく、中にも入れていこう」という新しい発想につながっていく。このように、相手の発言を深堀りして本音を聞き出すことが、成果を生む発見につながるのだ。
ビジネスにおいて、相手の考えや本心を聞き出さなければならない場面は非常に多い。「話を聞き出そう」という姿勢が身につくと、相手の発言で何度も出てくるキーワードに気づきやすくなり、相手の話したいことをつかみやすくなる。そして「なぜだろう?」という疑問や興味を持って問いかけることで、相手の言葉の深層へ入っていくことができる。
人の発言をそのまま受け取り、わかった気になることは、聞き出すことを妨げる大敵である。例えば「ガムを噛む目的は?」という質問に対し、「集中するため」と相手が発言したら、「集中ってどういうこと?」というように、相手にとっての「集中」の意味を尋ねる必要がある。そうすれば、「ガムでリフレッシュして、がんばるぞという気になる」などと、相手の生活や嗜好に基づいたリアリティあふれる発言を得ることができる。相手に真摯に向き合うためには、「自分が正しいと思いこんでいないか?」と常に自問自答することが重要である。
先入観を排除するためには、自分の価値観を普通だと考えずに、ありのままを受け取る意識をもつとよい。そのうえで、
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