モデレーター 聞き出す技術
モデレーター 聞き出す技術
マーケティング・インタビューのプロ
モデレーター 聞き出す技術
出版社
出版日
2014年05月29日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

「相手の本音やニーズを聞き出すにはどうしたらいいか」、「顧客や上司、部下の話を先入観なく聞きたい」、「話しやすい空気をつくる方法が知りたい」。こんな課題をお持ちの方は、本書を読めば、コミュニケーションの質が見違えるほど向上するかもしれない。

本書は、マーケティング調査専門のインタビュアー(モデレーター)の「聞き出す技術」を紹介した一冊である。著者は、食品や飲料、化粧品、医薬品、メディアなど多種多様な業界で、年間2000人、500時間以上の対面調査を行う敏腕モデレーターだ。インタビューの現場で繰り広げられる「相手の本心を探る」ための手法は、マーケティングに限らず、商談や交渉、クレーム対応など、役立つ場面が多い。相手の発言を深堀りし、本音を「聞き出す」ことができて初めて、成果を生む発見ができる。この「聞き出す技術」を身につけることで、伝える力や質問する力、共感する力などを総合的に磨くこともできるというから驚きだ。

本書には、商品やサービスに対する意見を調査するデプスインタビューの事例と、各場面でのモデレーターの工夫が詳しく書かれているため、効果的な聞き出し方や相槌の仕方などが手に取るように理解できる。プロのモデレーターの「頭の中」が可視化されているという点で、本書は巷のコミュニケーション指南本とは一線を画している。

「人見知りでも、会話ベタでも大丈夫」という著者の心強い言葉を胸に、コミュニケーションの本質を学んでみてはいかがだろうか。

ライター画像
松尾美里

著者

早尾恭子(はやお・やすこ)
株式会社シー・ユー代表取締役。商社勤務の後、マーケティング調査会社を経て独立。現在に至る。
マーケティングの定性調査として行われる、グループインタビュー、デプスインタビューのプロ、「モデレーター」として活躍。食品、飲料、日用品、化粧品、医薬品、金融、保険、自動車、家電、デジタル機器、通信サービス、ゲーム、メディアなど、さまざまな業界の上位企業を担当、調査プロジェクトの企画設計から実施、分析までトータルに行う案件も多い。
2001年より、自社にてモデレーター養成講座を開講し、後進のモデレーター育成を開始。その他、学習院大学ビジネス講座講師、企業向けの講習なども担当。また、2010年には、さらに質の高い調査を実現すべく、表参道に専用のインタビュールーム「Seed(シード)」をオープン。

本書の要点

  • 要点
    1
    モデレーターは、生活者に気持ちよくしゃべらせ、その人の本心を引っ張り出すプロである。相手の発言を深堀りして本音を聞き出すことが、成果を生む発見につながる。
  • 要点
    2
    人の発言に対して、わかった気になることは、聞き出すことを妨げる大敵である。先入観を排除するためには、自分の価値観を普通だと考えずに、ありのままを受け取る意識をもつとよい。
  • 要点
    3
    モデレーターは言葉だけでなく、視線や表情、身振り手振り、体の向き、動きを駆使して、全身で「あなたの話を聞いていますよ」と伝えるので、相手は自分の考えを気持ちよく話せるようになる。

要約

【必読ポイント!】 「聞き出す技術」でビジネスに差が出る

本心を引き出すためのモデレーターの術

モデレーターは、生活者に気持ちよくしゃべらせ、普段は意識にのぼらない、その人の本当の気持ちを引っ張り出すプロである。生活者の本音やリアルな声こそが、次なるヒット商品につながる大事なヒントになるのだ。

例えば、あるアイスクリームについて、インタビュー対象者から「トッピングがたくさんかかっているからおいしい」という声が出たとする。モデレーターが「なぜトッピングがほしいのか」を聞き出すことで、「最後までおいしく食べられるから」という隠れた本音にたどり着くことができる。この発見が「トッピングを表面にかけるだけでなく、中にも入れていこう」という新しい発想につながっていく。このように、相手の発言を深堀りして本音を聞き出すことが、成果を生む発見につながるのだ。

ビジネスにおいて、相手の考えや本心を聞き出さなければならない場面は非常に多い。「話を聞き出そう」という姿勢が身につくと、相手の発言で何度も出てくるキーワードに気づきやすくなり、相手の話したいことをつかみやすくなる。そして「なぜだろう?」という疑問や興味を持って問いかけることで、相手の言葉の深層へ入っていくことができる。

人の話を先入観で聞いていないか?
AdamGregor/iStock/Thinkstock

人の発言をそのまま受け取り、わかった気になることは、聞き出すことを妨げる大敵である。例えば「ガムを噛む目的は?」という質問に対し、「集中するため」と相手が発言したら、「集中ってどういうこと?」というように、相手にとっての「集中」の意味を尋ねる必要がある。そうすれば、「ガムでリフレッシュして、がんばるぞという気になる」などと、相手の生活や嗜好に基づいたリアリティあふれる発言を得ることができる。相手に真摯に向き合うためには、「自分が正しいと思いこんでいないか?」と常に自問自答することが重要である。

先入観を排除するためには、自分の価値観を普通だと考えずに、ありのままを受け取る意識をもつとよい。そのうえで、

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要約公開日 2015.10.08
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