著者は、シェル石油(現昭和シェル石油)に10年勤めた後、実力重視の外資系で成長するためにコカ・コーラへ転職した。34歳のとき、ブランドマネージャーに就任するが、部下の「感情への配慮」が足りなかったことに気づいたという。そこから、デール・カーネギーや安岡正篤などの本を読み、「人間力」を強化することで、部下との関係が良好になっていった。
その後ジョンソン・エンド・ジョンソンの経営者になってから、著者は、閉塞感が蔓延していた社内において、社員を元気にすることに注力した。閉塞感の原因は、全社的に短期の目標達成だけに明け暮れていたことだ。そこで著者は同社のクレド(信条)をもとに、「理念・目標・戦略」から成る方向性を積極的に示し、会社を活性化させていった。短期目標と長期目標をバランスよく実践できることが、一流の経営者の条件なのである。
こうして様々な企業でトップを務める中で、国籍や業種に関係なく、勝ち残る企業に共通する「経営の原理原則」があることに著者は気づいた。経営者の責務とは、会社の方向性を決め、人を育て、結果を出すことである。同時に、自分の会社が常に「建て直し期」にあると認識し、ビジネスモデルを見直し、やることとやらないことを精査しなければならない。経営にゴールはないのだ。
優れた経営者に共通する特徴の一部を紹介する。1つ目は「多長根」である。できるだけ多面的、長期的、根本的に物事をとらえることで、より柔軟な対応が可能となる。2つ目は、結果と過程をバランスよく見ることである。結果だけを重視すれば、利益の水増しなどの不正が横行しかねない。3つ目は、知識と自分なりの考えから成る見識に、決断力と実行力を加えた「胆識」だ。決断と実行が伴って初めて結果を出すことができる。4つ目は、現状に満足せず、常にどう向上しようかを考える「ポジティブ・ディスコンテント(積極的不満)」である。
運・縁・健康の3つに恵まれていない経営者は大成しない。
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