ポジティブ心理学が1冊でわかる本

未読
ポジティブ心理学が1冊でわかる本
ポジティブ心理学が1冊でわかる本
未読
ポジティブ心理学が1冊でわかる本
出版社
国書刊行会
出版日
2015年03月12日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
4.0
要約全文を読むには会員登録ログインが必要です
ログイン
本の購入はこちら
書籍情報を見る
本の購入はこちら
おすすめポイント

ビジネスパーソンにとって、心理学はどのような学問として受けとめられているのだろうか。うつ病のような病理を解決するためのものか、あるいは交渉のテクニックを学ぶためのものといった印象が強いかもしれない。しかし今回紹介する「ポジティブ心理学」は、上記の内容とは一線を画している。

マーティン・セリグマンによって1998年に提唱された「ポジティブ心理学」は、人間のプラスの側面に目を向け、「人生を豊かにするにはどうすればよいか」を考える心理学である。研究領域は「よい気分でいること」から、個人として「よい人生を送ること」、社会の一員として「よい存在になること」にまで及んでおり、どんな人にも役立つ学問だ。本書では、ポジティブ心理学の概要を俯瞰しつつ、「幸福」「愛」「時間」といった人生における重要なトピックをじっくり掘り下げている。400ページに満たない本とは思えないほどの充実した内容だ。

これまで哲学や宗教が扱ってきた「よく生きる」という命題に、統計や実験をもとに科学的な視点から取り組もうというのが「ポジティブ心理学」の新しさである。ところが、近年急速に注目された学問であるためか、どうしても「流行りもの」という印象がつきまとう。著者はその事実にも冷静に向き合っており、学問自体の問題点や解決策についてもしっかりとページを割いて説明している。『ポジティブ心理学が1冊でわかる本』のタイトルに偽りなしといえるだろう。

著者

イローナ・ボニウェル
欧州でのポジティブ心理学の第一人者。ポジティブ心理学欧州ネットワーク(ENPP)を創設。国連の依頼を受け、GNH(国民総幸福)で有名なブータン王国の政策を他の先進国へ応用するプロジェクトに関わっている。本書『ポジティブ心理学が1冊でわかる本』をはじめ、多くのポジティブ心理学関連の著作がある。英・イースト ロンドン大学大学院応用ポジティブ心理学修士課程(MAPP)を創設。ポジティビィティーを促進する社会事業ポジットトランの創業者でもあり、IPPA(国際ポジティブ心理学会)理事も務めている。独自のレジリエンス・トレーニングの開発者として、NHK「クローズアップ現代」でも取り上げられた。

本書の要点

  • 要点
    1
    ポジティブ心理学は、人のポジティブな面を伸ばして、より豊かな人生を送ることをめざす。質的な分析を中心としていたこれまでの学問とは異なり、科学的根拠にもとづいた新しい学問として自らを位置づけている。
  • 要点
    2
    ポジティブ心理学は、「今ここ」で幸せになることがさらなる幸せを呼ぶことを証明した。また、幸福であることは、社交性や生産性を高め、健康や寿命にもよい影響を与える。
  • 要点
    3
    「1日のいいことを振り返る」「自身の強みを活用する」といった簡単なワークで、幸福度が上がることが実証されている。

要約

ポジティブ心理学とはどんな学問か

ポジティブ心理学では、感情が個人的資質を高める

従来の心理学が人の病理や欠陥を対象にしていたのに対し、ポジティブ心理学は、人のポジティブな側面をさらに伸ばすことを目的とし、「人生を真に充実したものにするには何が必要か」を探究する学問である。

ポジティブ心理学の起源は、古代ギリシャの哲学思想にまでさかのぼることができる。アブラハム・マズローなどが提唱し、1960年代~70年代に最盛期を迎えた「人間性心理学」は、ポジティブ心理学の前身といえるだろう。しかし人間性心理学は、質的な分析に重きを置き、実験的な手法に懐疑的な立場をとった。一方、ポジティブ心理学は、実験を重視し、主流な科学的手法を尊重する。そのことからポジティブ心理学は、従来の先行研究とは一線を画す新しい学問だと自らを位置づけている。

ポジティブな感情は、人間の思考や行動の幅を広げ、困難からの回復力(レジリエンス)を高めるなど、人生に多くの恩恵をもたらすと言われている。逆に言えば、永続的に個人的資質を育ててくれるものこそが「ポジティブ感情」であり、「アイスを食べて嬉しい」といった一時的な感覚とは区別される。

ポジティブ感情はそれ自体が目的ではなく、よりよい人生を送るための手段なのである。

ネガティブ感情も罪ではない
federicomarsicano/iStock/Thinkstock

それでは、どの程度ポジティブな感情を持ち合わせるのがよいのだろうか。研究によれば、ポジティビティーとネガティビティーの割合が3:1か、ポジティビティーの割合がそれより多くなったときに、人は活気づくという。注目すべき点は、8:1の割合を超えてポジティビティーを多く経験すると、逆効果になるということだ。

もっと見る
この続きを見るには...
残り3271/3975文字
会員登録(7日間無料)

3,400冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2016.01.18
Copyright © 2024 Flier Inc. All rights reserved.
一緒に読まれている要約
実践 ポジティブ心理学
実践 ポジティブ心理学
前野隆司
未読
「これからもあなたと働きたい」と言われる店長がしているシンプルな習慣
「これからもあなたと働きたい」と言われる店長がしているシンプルな習慣
松下雅憲
未読
明日のプランニング
明日のプランニング
佐藤尚之
未読
新「ビジネス書」のトリセツ
新「ビジネス書」のトリセツ
水野俊哉
未読
眠っているとき、脳では凄いことが起きている
眠っているとき、脳では凄いことが起きている
ペネロペ・ルイス西田美緒子(訳)
未読
行動経済学の逆襲
行動経済学の逆襲
遠藤真美(訳)リチャード・セイラー
未読
孟子
孟子
小林勝人(訳)
未読
うまくいく人がやっている100のこと
うまくいく人がやっている100のこと
上阪徹
未読
法人導入をお考えのお客様