従来の心理学が人の病理や欠陥を対象にしていたのに対し、ポジティブ心理学は、人のポジティブな側面をさらに伸ばすことを目的とし、「人生を真に充実したものにするには何が必要か」を探究する学問である。
ポジティブ心理学の起源は、古代ギリシャの哲学思想にまでさかのぼることができる。アブラハム・マズローなどが提唱し、1960年代~70年代に最盛期を迎えた「人間性心理学」は、ポジティブ心理学の前身といえるだろう。しかし人間性心理学は、質的な分析に重きを置き、実験的な手法に懐疑的な立場をとった。一方、ポジティブ心理学は、実験を重視し、主流な科学的手法を尊重する。そのことからポジティブ心理学は、従来の先行研究とは一線を画す新しい学問だと自らを位置づけている。
ポジティブな感情は、人間の思考や行動の幅を広げ、困難からの回復力(レジリエンス)を高めるなど、人生に多くの恩恵をもたらすと言われている。逆に言えば、永続的に個人的資質を育ててくれるものこそが「ポジティブ感情」であり、「アイスを食べて嬉しい」といった一時的な感覚とは区別される。
ポジティブ感情はそれ自体が目的ではなく、よりよい人生を送るための手段なのである。
それでは、どの程度ポジティブな感情を持ち合わせるのがよいのだろうか。研究によれば、ポジティビティーとネガティビティーの割合が3:1か、ポジティビティーの割合がそれより多くなったときに、人は活気づくという。注目すべき点は、8:1の割合を超えてポジティビティーを多く経験すると、逆効果になるということだ。
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