誰でも一度は「いま、会話に困るなあ」という状況を経験したことがあるのではないだろうか。たとえば、エレベータの中。無理やり話しかける義務はないが、距離感が近いので、話をしないと何となく不自然だ。偶然乗り合わせてしまった瞬間、強制的にコミュニケーションのゴングが鳴る。
本書では、最終的に「エレベータが気まずくなくなる」という段階を目指す。知らない人とコミュニケーションをとることは、誰にとってもある程度ストレスだが、コミュニケーションの技術を身につければ、エレベータもそれほどつらい場所ではなくなる。
一般的に、コミュニケーションは「情報の伝達手段」とされているが、それよりも、「話をしていて楽になる、心地よくなる」ことのほうがずっと重要だ。コミュニケーションをとった後、お互い心地よくなるような会話を、本書では成功したコミュニケーションと考える。
「コミュ障(コミュニケーション障害)」という言葉を耳にすることが増えた。オンライン百科事典「ニコニコ大百科」には、「日本の国民病のひとつで、他人との他愛もない雑談が非常に苦痛、あるいはとても苦手な人のこと」「コミュ障にできないのは、あくまでも休み時間などにおける友人や知人との、どうでもいいけれどじつに楽しげな会話である」と定義されている。さらに「必要以上に空気を読み、自分の発言がその場を悪くするのではないかと不安に思ってしまう。その結果として、人に嫌われるのではないかと考え言葉に詰まる」とも書かれている。
生まれつきコミュニケーションが得意な人は、誰とでも楽しく会話できるかもしれないが、「コミュ障」の気持ちを理解することは難しい。だが、コミュ障を克服した人は、コミュニケーションが苦手な人に共感し続けることができる。つまり、最終的により優れたコミュニケーターになる可能性を持っているのは、人見知りでうまくしゃべることができなかった「コミュ障」の人なのだ。
では、「コミュ障」の人がコミュニケーションの技術を身につけるには具体的にどうすればいいのか。
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