強さとリーダーシップは切っても切れない関係にある。カルロス・ゴーンやスティーブ・ジョブス、マーガレット・サッチャー……。強さを感じさせる有名人は数多く、みな業界をけん引する人物ばかりだ。「強さ」とは、その人がどれだけ世の中を思い通りに動かせるかを測る尺度なのである。
「強さ」は2つの基本要素――世界を動かす「能力」と「意志の力」――から成る。ここでいう「能力」は、体力や資格など技術的スキル、社交術などのあらゆる資質を指す。一方「意志の力」は、障害や抵抗を乗り越えて行動を貫き通そうとする熱意のことで、筋肉と同様、鍛えることができるものである。
「強さ」が物事を成し遂げるための「ツール」なら、意志はツールを動かすための「動力」となる。この2つを両輪として「強さ」のシグナルは発せられ、我々はそうした人物に敬意を抱くようになる。
しかし「強さ」だけでは人々の好感を得ることは難しい。「敬意」を「畏怖」でなく「称賛」にまで引き上げるのに欠かせないのが「温かさ」である。
プリンストン大学のジャニン・ウィリスとアレックス・トドロフによれば、私たちは初対面の人に出会ってからわずか10分の1秒のうちに、相手が「温かい人」であるかどうかの判断を下しているという。「温かさ」は、「共感」「親しみ」「愛」の3つの感情によって生まれる。相手の身になって考え、なじみ深い存在となり、まるで家族や親友のような「愛着」が発揮されるとき、我々はその人物を「温かい人」として評価するのだ。
「強さ」と「温かさ」の間には相互作用が働いている。好感のもてる人物は能力も高い、という判断がされることもあれば(「ハロー効果」)、強さを演出しようとすれば温かさがマイナスとなり、温かさを表に出せば強さが損なわれるという側面もある(「シーソー現象」)。また「強さ」をもたらすホルモンであるテストステロンは、「温かさ」を生み出すホルモンであるオキシトシンの分泌を阻害する働きがある。
一見両立しにくい「強さ」と「温かさ」。しかし、どちらか一方をフルに発揮しているとき、もう一方の特性も同時にアピールできるようになることもある。アイン・ランドは個人の権利を何より重んじる小説世界を構築した。その「強さ」の絶対性が多くの支持者を集め、連帯感という「温かさ」を生み出した。ビートルズは、圧倒的な「温かさ」である愛を説いた音楽で影響力を手に入れ、社会を動かす「強さ」を発揮した。
「強さ」と「温かさ」は、人間の魅力を表す万国共通の指標となる。目指すべきは、その両方を兼ね備えた人物なのだ。
「強さ」と「温かさ」の印象は、会った瞬間にほとんど瞬時に決まってしまう。そのため、性別や体型、ルックスなどの所与の条件によって大きく左右される。
たとえば男性と女性であれば、残念ながら女性のほうが不利と言える。男性は「強さ」と、女性は「温かさ」とひもづけられることが多いが、研究によれば男性のほうが「強さ」と「温かさ」のバランスが取れていると判断されやすい。
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