貞観政要

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貞観政要
出版社
出版日
2015年09月09日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
3.0
応用性
4.5
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おすすめポイント

『貞観政要』(じょうがんせいよう)は、唐代の太宗(たいそう、在位626年~649年)と、それを補佐した名臣たちの間のやり取りを綴った、著名な政治問答集である。太宗は数々の戦乱を収束させ、唐の礎を築いた。その治世は平和な時代として中国史上に名高く、当時の元号をとって「貞観の治」と呼ばれる。本書は、長くリーダーたちの間で愛読され続けてきた書物であり、日本でも、北条政子や徳川家康、明治天皇など、様々な人物が多大な影響を受けたとされている。

本書の一番の特色は、天下を取るための手法ではなく、その先の、天下をいかに保持していくかに焦点を当てたところにある。太宗によれば、トップの座を手に入れることと、それを守っていくことは、異なった努力が必要なのだという。太宗が天下を維持するために常に心がけていたのは、とにかく自らを律し用心深くあること、そして臣下からの諫言をいつでも受け入れる姿勢を持つことであった。本書では様々なエピソードから、そのような態度を持つことの重要性が繰り返し説かれている。

興味深いのは、太宗自身がたびたび自らの信条に逆らうような振る舞いや決断をしようとしている場面が本書に散見されることだ。それでも、自らに非があれば素直にそれを認め改められたところが、太宗が名君と呼ばれた所以なのだろう。

最初から最後まで完璧な人間など存在しない。だからこそ、過ちがあったらそれを指摘してくれるような周辺環境の構築は必要不可欠である。1000年以上前に書かれたこの書物には、現代でも依然として通用する金言が散りばめられている。

著者

呉 兢 (ご きょう)
670(咸亨1年)―749(天宝8年)。中国・唐代の歴史家。汴(べん)州(河南省開封)の人。長年史館にあり、歴朝『実録』などの編纂に従事。また、みずから『貞観政要』『国史』などを撰述した。

本書の要点

  • 要点
    1
    人々の手本になれるよう、常に自らを律し、用心深くあることを心がけよう。そうでなければ人はついてこない。自分より低い立場の意見に積極的に耳を傾け、自らの身を改めるようにするべきだ。
  • 要点
    2
    血筋や家柄で評価するのではなく、あくまで能力にしたがって他者を評価するべきである。優れた人材がいないと嘆いてはならない。人材は自ら進んで発掘するものである。
  • 要点
    3
    仁義をもって、人々の生活向上を第一に考えた政治を行うべきである。また、法は天下のものであるので、君子であってもその尊厳を守らねばならない。

要約

【必読ポイント!】 人の上に立つ者の取るべき態度

常に自らを律し、用心深く

太宗は、上に立つ人物が天下を安定させるには、とにかく自らを律し、慎重に行動すべきだと考えていた。我欲に溺れてしまっては、肝心の政治に身が入らなくなり、人民のことを考えることができなくなってしまう。やがては、臣下や人民からの尊敬を失ってしまうことになるだろう。

太宗が即位して四、五年経つころには、すでに安定した治世が実現されるようになったが、太宗はそうした時こそ、慎重さが要求されると考えていた。その姿勢は、「国を治める時の心構えは病気を治療するときの心がけとまったく同じである。病人というのは、快方に向かっているときこそ、いっそう用心して介護にあたらなければならない」という言葉に端的に表れている。泰平の世の中だからこそ、常に気をゆるめず注意深く行動する必要があるというわけである。

太宗は、国を治めることを、木を植えることにもたとえている。隋の煬帝(ようだい)は、美女や宝物を集めて奢侈にふけり、それでも尽きない欲に動かされて軍事行動を起こした。結果、人民は反抗し、国は滅んでしまった。上に立つ者が身を慎んでこそ、人民の暮らしは安定する。それは、根や幹がしっかりした木の枝葉が、自然に茂るのと同じことなのである。

臣下の進言に耳を傾ける
vvs1976/iStock/Thinkstock

治世の初めのころ、太宗は側近のひとり、魏徴(ぎちょう)から、「明君が明君たるゆえんは広く臣下の進言に耳を傾けること」と言われている。そうすることで、一部の側近に惑わされずに、下々の状況を理解できるからだという。

しかし往々にして、危機に瀕している際は優れた人物の意見に耳を傾けようとするものの、いざ国が安定しはじめれば心にゆるみは生じてしまうものである。

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要約公開日 2016.04.11
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