多くの人は段取りを考えるときに、まず「How」(どうやるか)を優先しがちだ。しかし、その前に「Why」(なぜやるか、目的)に注目すべきである。その目的に沿って、「どうやるか」を決めるのが本来のあるべき手順である。目的を明確にしておかないと、段取り通りに作業が進んでも、期待していた成果が得られないことがある。
段取りをうまく進めるためには、先を見通す力が必要で、経験値がものをいうと思われている。しかし、まずは目的を確認し、それに沿って「いつ、どこで、誰が、何を、どうやるか」といった5W1Hをきちんと押さえることで、経験値の少ない若手でも、突発の事態に備えつつ、様々なケースに対応することができるようになる。
自分の仕事を振り返ったとき、どの作業が付加価値を生んでいるのかを認識しているだろうか。
トヨタでは付加価値の源泉となる作業を「主作業」、付加価値は生まないが現時点では必要な作業を「付随作業」と呼んでいる。例えば、営業の仕事ならお客さまとの商談が主作業、アポイント取りや資料の作成などが付随作業である。トヨタでは、付随作業の時間を極力短くし、主作業の割合を高めることで生産性向上を可能にしてきた。
なお、付加価値に全く貢献しない作業は、即刻なくすよう努めるべきである。段取りは「ムダ取り」といっても過言ではない。まずは、日々の業務に費やす時間を主作業、付随作業、ムダの3つに分類することが重要である。
段取り上手な人は、仕事に着手するのが早い、というイメージを持たれがちだ。しかし、本当に成果を出す人は、デッドラインが決まったら「いかに締め切りに近いタイミングで着手するか」を考えて段取りを組む。作業のリードタイム(所要時間)を把握し、ギリギリまで着手を待つことで、最新の情報を取り込み、品質を上げることができるからである。また、仕事に着手するのが早すぎると、途中で仕様変更が起こり、結局仕事が増えることになってしまう。
自動車の製造においては、企画から販売までに数年間の時間を要する。市場のニーズを取り込み、短期間で市場に商品を送り出すことが重要であるため、全体のリードタイムをいかに縮められるかがカギとなる。
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