トヨタの強さの秘密

日本人の知らない日本最大のグローバル企業
未読
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トヨタの強さの秘密
出版社
出版日
2016年03月16日
評点
総合
3.0
明瞭性
3.0
革新性
3.0
応用性
3.0
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おすすめポイント

2016年3月期、トヨタの売上高ならびに営業利益が、過去最高を記録した。日本企業の中では言うまでもなく1位であり、世界の企業の中でもベスト10位以内、製造業に限れば、アップル社と並び売上世界一の座を争うという好調ぶりである。製造業の凋落が激しい日本で、なぜトヨタとそのグループ企業だけが世界とここまで渡り合えるのか? その秘密を明らかにしたのが本書だ。

トヨタといえば、一般的にカンバン、カイゼンなどの言葉に代表される「トヨタ生産方式」が有名であり、それこそがトヨタの強さの秘密だと考えている人も少なくないのではないだろうか。しかし本書によれば、その回答は今では完全な間違いだという。実際、米国をはじめ世界のビジネスパーソンがトヨタから学ぼうとしているのは、生産方式ではない。彼らがトヨタの強さの秘密とみなしているのは、その製品開発の仕組みなのである。

現在、世界で勝ち続ける企業と、負け続ける企業を分けているのは、トヨタの製品開発を知っているかどうかだと著者は断言する。トヨタの製品開発については、日本発祥とはいえ、これまで謎に包まれてきた。しかし、リーン開発、リーン・スタートアップ、リーン・ローンチパッド、デザイン・シンキングといった経営手法は、もともとトヨタが考えだしたものだ。グローバル市場で勝負をしたいのであれば、まずは本書を片手に、同じ国のトヨタから学んでみてはいかがだろうか。

著者

酒井 崇男(さかい たかお)
1973年、愛知県岡崎市生まれ。グローバル・ソリューションズ代表取締役。東京大学工学部卒業、東京大学大学院工学系研究科修了。大手通信会社研究所勤務を経て独立、人事・組織・製品開発戦略のコンサルティングを行う。また、リーン開発・製品開発組織のタレント・マネジメントについて、国内外で講演・指導を行っている。著書に『「タレント」の時代 世界で勝ち続ける企業の人材戦略論』(講談社現代新書)。

本書の要点

  • 要点
    1
    トヨタの強さの秘密は、有名なトヨタ生産方式(TPS)にあるのではなく、トヨタ流の製品開発(TPD)にある。このTPDを代表する有名なノウハウが、主査制度だ。
  • 要点
    2
    すべての関連部署と連携をとりつつ、開発に携わる人々の能力を最大限に引き出すのが主査の役目である。
  • 要点
    3
    主査になるためには、複数分野の専門知識を持っているうえで、それらを統合して新しい価値を生み出す人材にならなければならない。

要約

【必読ポイント!】 トヨタの強さの秘密

西の生産、東の開発
stanciuc/iStock/Thinkstock

愛知県の国道248号線を岡崎市から豊田市のほうへ北に向かってクルマで走って行くと、「論地が原」と呼ばれる地域がある。その論地が原の真ん中の小高い平山にあるのがトヨタ自動車の本社だ。論地が原はかつて、盗賊や追い剥ぎが跋扈(ばっこ)していた地域であったが、そこから売り上げ27兆5000億円、営業利益2兆8000億円の会社が生まれた。当然、当初から資金や技術が豊富にあったわけではない。しかし彼らには情熱と、ある種の確固たる信念を持っていたからこそ、ここまでの成功を収めることができた。

トヨタの構造は大きく2つに分けられる。国道248号線の西側にあるクルマの生産部門と、東側にある開発部門だ。このうち、西側の生産部門のノウハウである、いわゆる「トヨタ生産方式(TPS)」については有名だろう。ジャスト・イン・タイム、自働化、カンバン、アンドン、多能工、5S(整理、整頓、清潔、清掃、躾)、QC(Quality Control)、サークル(製品管理サークル)、VA(Value Analysis)といった手法は、これまで多くのトヨタ関連本で解説されてきた。そのため、一般的に国内でトヨタといえば、このTPSのイメージが強い。

一方、東側で行われているのは、「トヨタ流の製品開発(TPD)」である。実は、現在のトヨタの強さの秘密はこのTPDのほうにある。TPDで行っているのは、製品の「設計情報」の作成だ。東側のPTDで企画、設計、開発、試作、試験を経て完成した設計情報が、西側に渡され、TPSに基づいて、クルマという形にアウトプットされる。

このTPDを代表する有名なノウハウが、主査制度(現在のチーフエンジニア制度)である。

主査はオーケストラの指揮者のようなもの
cyano66/iStock/Thinkstock

主査は、担当する製品に関するすべての事柄に責任を持つ。まず、(1)市場、顧客・非顧客、競合の情報、(2)技術の情報、(3)

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要約公開日 2016.07.21
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