スカーレット・オハラは、いわゆる美人ではなかった。が、フランス上流階級の血を引く母とアイルランド移民の父から受け継いだ、繊細な目鼻立ちと活力をあわせ持つ、じつに魅力的な顔をしていた。偉大なレディである母と黒人乳母マミーによって厳しくしつけられ、おとなしげな立居振舞をしていても、緑色の目は意志と生命の貪欲さで光っていた。こんなスカーレットに、たいていの男は夢中になった。
スカーレットの父親はかつて、政治をめぐる口論に激情して殺人を犯し、アメリカへ逃亡してきた。持ち前のポーカーの腕を活かして賭けで土地を手に入れ、黒人奴隷を買い集め、南部ジョージア州に綿花の大農園を一代で築いたのだった。その農園はタラと呼ばれた。
大きな館で、ほとんどのことは思い通りに過ごしてきたスカーレットだったが、あるとき不愉快な情報を聞きつけた。自分のことを愛していると思っていた、金髪の優雅なアシュリー・ウィルクスが、パーティーで別の女との婚約を発表するというのだ! やせっぽちで地味なメラニー・ハミルトンとの婚約を! 自分が愛していることを伝えられさえすれば、アシュリーはきっと自分と結婚しようと思うはず。スカーレットはウィルクス家のパーティーへ、とびきり自分が美しく見える、緑色のひだ飾りがついたドレスを着て乗り込んだ。
若い客人たちと挨拶をかわすなか、スカーレットは自分を見つめる不遜な視線に気づく。浅黒くがっちりして、抜け目ない大胆な雰囲気をまとった男性は、レット・バトラーといい、名家の出身だが女性とのトラブルで勘当されている評判の悪い人物だという。
スカーレットは、女性だけの集まりを抜け出し、体よくアシュリーを書斎へ誘いこんだ。いぶかしむアシュリーに、スカーレットは、レディの教えをすっかり忘れて、「愛している」と何度も言いつのった。しかしアシュリーは、スカーレットのことは好きだが、自分と同じく本や音楽を愛するメラニーを結婚相手として決めたのだと告げる。それを聞いたスカーレットは、怒りにまかせてアシュリーを平手打ちし、彼が出ていった後に花入れを暖炉に投げつけた。すると、なんとソファの陰から「昼寝をしていた」というレット・バトラーがぬっと現れた。
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