PDCAプロフェッショナル

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出版社
東洋経済新報社

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出版日
2016年01月29日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

Plan(企画)Do(実行)Check(検証)Action(やり方の修正・進化)の頭文字をとった「PDCA」という手法。「ビジネスの基本中の基本だ。何をいまさら」と言う人は多いだろう。しかし、PDCAを正しく理解し廻す手法がないために時代の変化に対応できず、事業の縮小を余儀なくされる企業や、帳尻合わせの不正に走ってしまい存続の危機に瀕する企業が後を絶たない。

著者は、トヨタグループで実践力を、マッキンゼーで戦略立案力を会得してきた人物だ。一見、共通するものがないように見える2つの企業は「問題解決に際して同じアプローチをとっている」という。かつては日産の後塵を拝していたトヨタが、なぜ世界でも一目置かれる企業に発展したのか。PDCAという概念がありながらも多くの企業とこの2社との大きな差の原因は何なのか。本書によって学べることは、とても重要である。

本書の巻末で稲田氏は、ホモ・サピエンスと同時代にあらわれ、知能的には上回っていたといわれるネアンデルタール人についてこう述べている。「ネアンデルタール人ではなくホモ・サピエンスが生き延びることができたのは、遺伝子上の変異によって新しいことへの好奇心を持ち、物事を言語化する能力が備わったからだ。」PDCAとは、良いことも悪いことも正しく言語化し、失敗の原因を突き止め、改善・進化に役立てるための仕組みである。PDCAを正しく学び、実行することができない企業は、ネアンデルタール人と同じ絶滅の運命を辿ることになるのかもしれない。

ライター画像
下良果林

著者

稲田 将人(いなだ・まさと)
早稲田大学大学院理工学研究科、および米国コロンビア大学大学院コンピューターサイエンス科修了。当時、デミング賞受賞に向けてTQCに取り組んでいた豊田自動織機製作所自動車事業部勤務の後、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、その後は、卑弥呼、アオキインターナショナル(現AOKI HD)、ロック・フィールド、日本コカ・コーラなど、大手企業の代表取締役、役員、事業/営業責任者として売上V字回復、収益性強化などの企業改革を行なう。入念な戦略構築のみならず、企業が戦略を実践し、PDCAを廻して永続的に発展するための習慣づけ、企業文化づくりに取り組む。手掛けた事例は、ワールドにおける低迷していた大型ブランドの活性化による再成長軌道入れなど多数。現在は、RE-Engineering Partnersを設立し、企業改革のディレクターとして、事業の立て直し、企業の再成長軌道入れプロジェクトを請け負う。豊田自動織機製作所では、自動車工場の生産指示のためのALC(Assembly Line Control)システムの初期段階の開発、立上げに携わる。著書に『戦略参謀』『経営参謀』(ともにダイヤモンド社)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    PDCAを廻すとは、これまでの結果の検証を行い、次回の企画に反映するべき「学び」のポイントを明確にして、企画と業務手法を見直し、改善、進化させることである。
  • 要点
    2
    強い組織をつくるには、PDCAを廻して、経験則を積み重ねて、学習する文化を根付かせることが重要である。
  • 要点
    3
    PDCAを廻し続けるには、個人は必要な技術と姿勢を習得し、マネージャーは担当する組織に手順と組み立てる能力をつけ、自らがPDCAを廻すドライバーとなることが必要である。

要約

PDCAの本質

PDCAから得られるもの
sindlera/iStock/Thinkstock

もともとPDCAは、製造工程の不具合、品質改善に取り組んできた米国のウォルター・シューハート博士が提唱した考え方がベースとなっている。製造業におけるエンジニアリングのアプローチから生まれたPDCAの方法論は、個人にとどまらず、組織においても正しく経験値を重ね、その実践力を高めるためのものとなる。

PDCAを廻すということは、結果の検証(C)をおこない次の企画(P)に反映させるべき、学びのポイントを明確にすること。そしてよく考えて企画(P)し、精度高く実行(D)して、改善・進化(A)させることである。PDCAを廻す中で、たとえ失敗したとしても結果の検証(C)を行っているかぎり、場数を踏むたびに経験則が蓄積されて、やがて「自信」にあふれる状態が実現するのである。難易度の高い問題にも的確な判断ができるようになり、さらに、経験則から先を見通す能力をも得ることができ、「次に何がおこるか」をロジカルに説明することも可能となる。

PDCAが廻っていない企業で起きること

経営視点でのPDCAが廻っていない企業では、経営者が社内の実態を把握することが難しくなる。よって経営判断をするにあたり、十分な情報がなく、筋の通った議論もできずに、経営者が「自信」をもてない状況となる。こうした経営者は現状維持を目的とした、組織の和を優先させて、イニシアティブをとらない傾向が強くなる。

さらに「自信」のないマネジメントは個人的な思惑のつけ入る隙をつくり、社内に保身文化を生むことになる。競合企業の真似のみを行う、横並び感覚が横行し、改革への芽が出たとしても「うちの文化と違うから」と摘んでしまうこともある。

このような状況を回避してPDCAを推進するのに欠かせない要素は、優良企業をつくりあげるという「パッション」すなわち、情熱、意思、想いである。

物事の成否は、理論上の正しさもさることながら、「自分にはできる」「自社ならば、なんとかなる」といった「自信」をもって企画と実践に臨めるにかにかかってくる。「自信」を培うためには、正しく場数を踏む、つまりPDCAを廻すという、事業運営を通じての学習が必要となる。「パッション」と「自信」はPDCAを通じて、双方が高められていくものといえる。

優良企業の実践力

「戦略」と「実践力」

業績不振に悩む企業のトップが経営コンサルタントに相談するのは「現状を打破する戦略がほしい」という内容が多い。「戦略」は合理的に組み立てられた賢明なシナリオではあるものの、あくまで成長のための初期仮説である。

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要約公開日 2016.07.14
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