戦略とは、「将来こうありたい」という理想の姿と現状を比較し、その差を埋めていく道筋のことである。企業ごとの理想は異なるのだから、理想に近づくための戦略も、本来はそれぞれ違ってしかるべきである。したがって、既存の戦略論を真似しているだけでは意味がない。
また、近年の企業間競争は以前よりもずっと複雑になっており、今まで戦ってきた相手とは全く異なるタイプの相手と戦わなければならないことも少なくない。そのなかで勝ち続けるためには、自分が優位となる新しいルールをつくるような、独自の戦略が求められている。
既存の戦略論を学ぶことは非常に大事なことだが、それだけではユニークで勝てる戦略を構築することはできない。大切なのは、戦略論という定石を知ったうえで、新たな戦い方をつくりあげる能力である。その能力を身につけたものだけが、自らを差別化し、競合優位に立つことができる。
この能力のことを、BCGのコンサルタントは「インサイト」と呼ぶ。インサイトとは、「勝てる戦略の構築に必要な頭の使い方、ならびにその結果として得られるユニークな視座」のことである。ユニークな戦略を生み出すためには、戦略論の定石を踏まえたうえで、インサイトを研ぎ澄ます必要がある。
インサイトは、「スピード」と「レンズ」という2つの要素から成り立っている。思考のスピードを最大限に上げ、定石を加工、応用して、次々に仮説を打ち立てる。これを競争相手を数倍、数十倍上回るスピードで実行することで、相手が考えついていない戦略で戦いに臨むことができるようになる。
レンズとは、ユニークな仮説をつくるための「モノの見方」のことだ。普段の自分とは違う思考を意識的に働かせることで、はじめて定石を加工・応用していくことが可能になっていく。
インサイトを身につける、すなわち戦略脳を鍛えるためには、とにかく実践が重要である。ただし、体得のしかたには個人差がある。自分が苦手とする部分を克服するためのコツを覚え、できるだけ効率よくインサイトを身につける必要がある。
思考のスピードを上げるためには、特に「パターン認識」、「グラフ発想」、「シャドウボクシング」の3つの能力を鍛えることを意識すべきだ。
パターン認識は、戦略コンサルタントが一人前になっていくうえで最初に必要になるものである。パターン認識ができるようになると、さまざまな角度からパターンをとらえたり、いくつかのパターンを組み合わせたりすることで、状況を端的に把握することが可能になり、より速く適した戦略の仮説が組み立てられるようになる。この力を高めるためには、ことあるごとに「これはこういうことだ」とパターン化して考え、それを記憶するという癖を身につけることが有効だ。いくつものパターンを頭の中に蓄積していれば、必要な時に蓄積されたパターンを使って、新しい戦略を構想することもできるようになる。さらに、1から論理的に思考を積み重ねる手間がなくなり、思考のスピードも上がる。
さまざまな戦略をパターン化するコツは、コンセプトワードを記憶の引き出しとして用いることだ。
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