論点思考

BCG流 問題設定の技術
未読
論点思考
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論点思考
出版社
東洋経済新報社

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出版日
2010年02月11日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

上司からいわれたとおりの仕事をしたはずなのに、なぜか満足してもらえなかったという経験をしたことはあるだろうか? 著者によれば、その原因は「間違えた問題」を解いていることにあるという(もちろん、上司がただのどうしようもない人間ということも考えられるが……)。

ビジネスの世界では、自分自身で課題を見つけ出し、その解決方法を最終的には考えなければならない。ボストン コンサルティング グループ(BCG)では、解くべき課題のことを「論点」と読んでいる。本書のタイトルにもなっている「論点思考」とは、その解くべき問題を定義するプロセスを意味する。論点設定を正しく行うことができれば、考えるべきことが限定され、仕事効率が飛躍的によくなる。これが論点思考のメリットだと著者は語る。

著者の前著『仮説思考』が、問題解決をいかに首尾よく効果的に解くかを論じているとすれば、本書は、取りあげた問題そのものがそもそも間違えていたらどうするべきかを論じている一冊である。元BCG日本代表としてキャリアを積みあげてきた著者が、さまざまなケーススタディを通して「正しい論点」を見極めるために培ってきた知見は、ともすれば職人芸のようなものだ。当然、一朝一夕で身につけられるようなものではないだろう。

しかし、本書を読めば、問題解決のための確かなる「指針」が見つけることができるはずだ。素早い問題解決能力を身につけたいのなら、なによりもまず本書を読むことをお薦めしたい。

著者

内田和成(うちだ かずなり)
早稲田大学ビジネススクール教授。東京大学工学部卒。慶應義塾大学経営学修士(MBA)。日本航空株式会社を経て、1985年ボストン コンサルティング グループ(BCG)入社。2000年6月から2004年12月までBCG日本代表、2009年12月までシニア・アドバイザーを務める。ハイテク、情報通信サービス、自動車業界を中心に、マーケティング戦略、新規事業戦略、中長期戦略、グローバル戦略などの策定・実行支援プロジェクトを数多く経験。2006年には「世界で最も有力なコンサルタントのトップ25人」(米コンサルティング・マガジン)に選出された。2006年より早稲田大学大学院商学研究科教授。ビジネススクールで競争戦略論やリーダーシップ論を教えるほか、エグゼクティブ・プログラムでの講義や企業のリーダーシップ・トレーニングも行なう。著書に『デコンストラクション経営革命』(日本能率協会マネジメントセンター)、『eエコノミーの企業戦略』(PHP研究所)、『顧客ロイヤルティの時代』(共著、同文館出版)、『仮説思考』(東洋経済新報社)、『スパークする思考』(角川oneテーマ21)、『異業種競争戦略』(日本経済新聞出版社)などがある。
著者ブログ「内田和成のビジネスマインド」
http://uchidak.cocolog-nifty.com/

本書の要点

  • 要点
    1
    最初の問いが間違えていたら、成果を出すことは不可能である。真の論点がどこにあるのかを見極める力を養うことが、現代のビジネスパーソンには求められている。
  • 要点
    2
    多くの企業はいくつもの課題を抱えており、そのすべてを解決するのは不可能だ。課題を1つに絞って、その解決に注力すべきである。
  • 要点
    3
    論点は状況によって変化していく。それを正しく捉えるためには、経験を積んでいくしかない。
  • 要点
    4
    論点を設定するときは、解決できるかどうか、解決できたとして十分な成果が得られるかどうかにこだわったほうがいい。

要約

【必読ポイント!】 正しい問いを見つける

前提を疑うところから始めよ
Nastia11/iStock/Thinkstock

ビジネスで成果をあげるためには、問題解決能力が欠かせない。しかし、事前に設定されている問題が、いつも正しいとは限らない。そもそもの問いの設定を間違えていたら、その問いを解いたところで、成果を得ることはできないのである。

真の問題が何かに気づく力こそが、現代のビジネスパーソンに最も必要な能力だ。BCGでは、真の問題、解くべき問題のことを「論点」と呼び、自分で論点を発見し、定義することを「論点思考」と呼んでいる。問題解決能力が高い人とは、実のところ論点思考力が高い人のことだ。彼らは最初の問題設定がうまいからこそ、鮮やかに問題を解決することができる。勝負は、論点を絞り込む段階の巧拙ですでに決まっているのである。

コンサルタントである著者は、クライアントから最初に与えられた依頼(論点)について、まず疑ってみるところから始めるよう心がけている。「どのような新製品を開発したらよいか」「どのようなマーケティングを展開したらよいか」と依頼されたら、「その論点を解いてはたしてクライアント企業の成長につながるのだろうか」と考える。そして「グローバルの勝ち組企業からよい提携先を見つけてほしい」と依頼されたら、「勝ち組企業と提携することがはたしてよいことなのか」と思考を深めるのである。

上司から課題を与えられたとき、疑問を感じながらも「上の言ったことだから」と、そのまま取り組むこともあるだろう。下手に疑問を呈すると、印象を悪くしてしまう可能性があるからだ。しかし、与えられた問題が常に正しいとはかぎらない以上、つねに論点の設定が間違えていないかという視点を持つべきである。与えられた問題を疑うことが、問題解決をするうえでは必要不可欠なのだ。

論点思考はあらゆる人間に必要である
alphaspirit/iStock/Thinkstock

マネジメント以外の仕事の場合、論点思考が日常業務で必要になる機会は、一見すると少ない。そのため、論点思考を学ぶことの意義がわからない人もいるかもしれない。だが、日常の些細な仕事の中にも、必ず問題解決のヘソとなる論点は存在している。論点の存在を意識して仕事をするかしないかで、仕事の結果に大きな違いが生じるものだ。上司から言われたとおりの仕事をやったのに、なぜかあまり評価されないというのは、論点を意識して仕事をしていないからである。

また、論点思考を養うためには、経験を積んでいくことが必要だ。したがって若いうちから論点、特に最も重要な大論点を見つけ出す訓練をしておかないと、いざマネジメントの仕事をすることになったとき、問題解決がうまくできなくなる。

論点思考は、マネジメント、ミドルマネジメント、一般社員といった、あらゆる階層の人間にとって必要なものである。論点を設定する段階が正しくできていれば、成功は半ば保証されたようなものだ。逆に、問いの設定の段階で誤りがあれば、その後の戦略策定・実行がいくら精緻華麗なものであっても、よい結果につながるはずがない。

目的や論点を正しくとらえた提案書ができれば、プロジェクトが成功する確率はかなり高くなる。だからこそ、コンサルティング会社のパートナーは、他の調査や分析の作業を部下に任せることはあっても、論点を策定するときは、自らの経験と能力をフル投入するのである。

論点候補を拾いだす

課題を1つに絞り込む

優秀なコンサルタントは、すべての問題を解決しようとはせずに、課題を1つに絞って、それを解決することに注力するものである。というのも、多くの企業は数えきれないほどの問題を抱えており、それらをすべて解決することは実質的にむずかしいからだ。

仕事には期限があり、工数もかぎられている。そのため、成果を出すためには、解くことで目に見える効果があがる問題を発見しなければならない。ところが、一般企業の場合、期限や工数に対する認識が曖昧な案件が多く、目の前にあるすべての問題を解こうとしてしまったり、解けそうもない大きな問題に取り掛かってしまったりしがちだ。

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要約公開日 2016.08.24
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