ビジネスで成果をあげるためには、問題解決能力が欠かせない。しかし、事前に設定されている問題が、いつも正しいとは限らない。そもそもの問いの設定を間違えていたら、その問いを解いたところで、成果を得ることはできないのである。
真の問題が何かに気づく力こそが、現代のビジネスパーソンに最も必要な能力だ。BCGでは、真の問題、解くべき問題のことを「論点」と呼び、自分で論点を発見し、定義することを「論点思考」と呼んでいる。問題解決能力が高い人とは、実のところ論点思考力が高い人のことだ。彼らは最初の問題設定がうまいからこそ、鮮やかに問題を解決することができる。勝負は、論点を絞り込む段階の巧拙ですでに決まっているのである。
コンサルタントである著者は、クライアントから最初に与えられた依頼(論点)について、まず疑ってみるところから始めるよう心がけている。「どのような新製品を開発したらよいか」「どのようなマーケティングを展開したらよいか」と依頼されたら、「その論点を解いてはたしてクライアント企業の成長につながるのだろうか」と考える。そして「グローバルの勝ち組企業からよい提携先を見つけてほしい」と依頼されたら、「勝ち組企業と提携することがはたしてよいことなのか」と思考を深めるのである。
上司から課題を与えられたとき、疑問を感じながらも「上の言ったことだから」と、そのまま取り組むこともあるだろう。下手に疑問を呈すると、印象を悪くしてしまう可能性があるからだ。しかし、与えられた問題が常に正しいとはかぎらない以上、つねに論点の設定が間違えていないかという視点を持つべきである。与えられた問題を疑うことが、問題解決をするうえでは必要不可欠なのだ。
マネジメント以外の仕事の場合、論点思考が日常業務で必要になる機会は、一見すると少ない。そのため、論点思考を学ぶことの意義がわからない人もいるかもしれない。だが、日常の些細な仕事の中にも、必ず問題解決のヘソとなる論点は存在している。論点の存在を意識して仕事をするかしないかで、仕事の結果に大きな違いが生じるものだ。上司から言われたとおりの仕事をやったのに、なぜかあまり評価されないというのは、論点を意識して仕事をしていないからである。
また、論点思考を養うためには、経験を積んでいくことが必要だ。したがって若いうちから論点、特に最も重要な大論点を見つけ出す訓練をしておかないと、いざマネジメントの仕事をすることになったとき、問題解決がうまくできなくなる。
論点思考は、マネジメント、ミドルマネジメント、一般社員といった、あらゆる階層の人間にとって必要なものである。論点を設定する段階が正しくできていれば、成功は半ば保証されたようなものだ。逆に、問いの設定の段階で誤りがあれば、その後の戦略策定・実行がいくら精緻華麗なものであっても、よい結果につながるはずがない。
目的や論点を正しくとらえた提案書ができれば、プロジェクトが成功する確率はかなり高くなる。だからこそ、コンサルティング会社のパートナーは、他の調査や分析の作業を部下に任せることはあっても、論点を策定するときは、自らの経験と能力をフル投入するのである。
優秀なコンサルタントは、すべての問題を解決しようとはせずに、課題を1つに絞って、それを解決することに注力するものである。というのも、多くの企業は数えきれないほどの問題を抱えており、それらをすべて解決することは実質的にむずかしいからだ。
仕事には期限があり、工数もかぎられている。そのため、成果を出すためには、解くことで目に見える効果があがる問題を発見しなければならない。ところが、一般企業の場合、期限や工数に対する認識が曖昧な案件が多く、目の前にあるすべての問題を解こうとしてしまったり、解けそうもない大きな問題に取り掛かってしまったりしがちだ。
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