部下を育てる! 強いチームをつくる!

リーダーのための行動分析学入門

未読
リーダーのための行動分析学入門
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リーダーのための行動分析学入門
著者
未読
リーダーのための行動分析学入門
著者
出版社
日本実業出版社
出版日
2015年09月20日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

グローバル化が進む現在、多くの企業が文化的差異や価値観の多様化にどう対応するかという課題に直面している。その処方箋となる新たなマネジメント手法として、「ポジティブな行動マネジメント」を提唱するのが本書だ。

マネジメントの立場にある人が、企業の海外進出に伴う経営の課題を文化の違いのせいにすることや、部下が思うように動いてくれないことを部下の性格や能力のせいにすることは、思考停止の典型例だといえる。こうした課題に対処し、企業の業績向上をめざすには、メンバーの性格や適性ではなく「行動」に注目すべきだ、という本書の提案は画期的である。さらには、行動分析学に裏付けられた、ある公式を用いて、PDCAサイクルを回せば、「行動」を変えることができるという。こうして業績向上につながる行動をメンバーに定着させていくことが、リーダーに求められる役割なのだ。

著者は行動分析学の研究者でありながら企業研修にも数多く携わっているため、本書で扱うテーマはマネジメントや人材育成の場面ですぐに活用できる実践的なものばかりだ。学術的な専門用語が少なからず登場するが、身近な事例がふんだんに盛り込まれているため、この分野に馴染みがない方でもすらすらと読み進められるはずだ。リーダーの役割を担っている方や、人材育成に携わる方なら、より良いメンバーとの関わり方を考えるヒントをいくつも見出せるだろう。

ライター画像
櫻井理沙

著者

島宗 理(しまむね さとる)
1964年埼玉県生まれ。1986年、千葉大学文学部行動科学科卒業。1989年、慶應義塾大学社会学研究科修士課程修了。1992年、Western Michigan University心理学部博士課程修了、Ph.D.取得。鳴門教育大学を経て、現在、法政大学文学部心理学科教授。専門は行動分析学。
著書に『パフォーマンス・マネジメント―問題解決のための行動分析学』『インストラクショナルデザイン―教師のためのルールブック』(以上、米田出版)、『人は、なぜ約束の時間に遅れるのか―素朴な疑問から考える「行動の原因」』(光文社新書)、『使える行動分析学―じぶん実験のすすめ』(ちくま新書)、『行動分析学入門』(共著、産業図書)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    ポジティブな行動マネジメントは、性格や能力の違い、文化の多様性を越えて、世界中どこでも通用する普遍的な方法論だ。
  • 要点
    2
    業績は社員の行動から生まれる。行動を引き起こす環境を指す「随伴性」を分析し、様々な公式を用いてコントロールすることで、行動を変容することができる。
  • 要点
    3
    リーダーの役割は、部下の行動に着目し(「行動化」)、その中から業績を向上させるうえで重要な行動を選び(「焦点化」)、選ばれた行動(「標的行動」)の実行を支援すること(「介入」)である。

要約

業績は行動から生まれる

ポジティブな行動マネジメントとは?

グローバリゼーションの時代を迎え、文化や価値観の多様性が尊重される現代社会において、多くの日本企業が「人」の問題に苦戦している。特に海外展開においては、国内では当たり前の経営手法やスタッフのマネジメント方法が現地で受け入れられないという問題が頻繁に起こっている。このような課題に対して本書が提示する解決策は、心理学の一分野である行動分析学に基づいた「ポジティブな行動マネジメント」である。これは世界のトップ企業を支援している米国のコンサルティング会社CLG(Continuous Learning Group)も活用している実践的な方法論だ。部下が思い通りに行動しないと悩むリーダーに対して、多様性を尊重しながら業績向上をめざすためのフレームワークを提供する。そして、ポジティブな行動マネジメントは、性格や能力の違い、文化の多様性を越えて、世界中どこでも通用する普遍的な方法論である。

行動分析学の研究から得られた、人を動かすためのいくつかの公式は、新たな時代のリーダーの強力な武器となる。その最も基本的な公式は、企業の業績や価値はそこで働く人の行動によって決まるという点から導き出される「V(業績:Value)=B(行動:Behavior)」である。

リーダーの役割
ismagilov/iStock/Thinkstock

リーダーシップとは才能や適性ではなく、誰もが学んで身につけられるスキルである。ポジティブな行動マネジメントにおけるリーダーの役割は、業績を生み出すのに重要な行動の自主的な実行を、「引き出し、維持すること」だと定義される。

つまり、リーダーに求められていることは、まず部下の行動に着目し(「行動化」)、その中から事業の成功にとって重要な行動を選び(「焦点化」)、選ばれた行動(「標的行動」)の実行を支援すること(「介入」)である。その過程では、標的行動を部下にとって「やらなければならないこと」から「やりたくてやっていること」へ転換することが重要だ。そして、そのような業績につながる標的行動を、着実に実行し持続させることこそリーダーの仕事である。

このようなリーダーの行動(BL:Behavior of Leaders)は、組織の他のメンバーの行動(BF:Behavior of Followers)を動かす原動力であることから、「V(業績)=BL×BF」と表すことができる。

個人攻撃の罠

業績が思うように上がらないときに、リーダーが陥りやすい落とし穴がある。それは、業績悪化の原因を部下の性格や能力によるものだと考え、解決のための工夫をしなくなってしまう「個人攻撃の罠」である。しかし本来、性格とは、行動の原因ではなく行動の傾向をまとめて表現したものを指す。

個人攻撃の罠から抜け出すには、その行動を引き起こす環境、すなわち「随伴性」を見極め、問題となる行動を引き起こす環境を変えることが重要である。

心理学の罠
eolintang/iStock/Thinkstock

標的行動を洗い出す行動化の段階では、心理学をかじったことのある人が陥りやすい「心理学の罠」がある。これは、例えば「自主性」「想像力」「判断力」といった抽象的な概念を標的行動として設定してしまうことを指す。この罠にはまると、曖昧な能力を高めるために、部下を著名人の講演会に送り出すといった対策を講じることが増える。しかし講演会や研修で得られる知識は、一時的な感動をもたらしても、業績に結びつく継続的な行動変容には至らないことが多い。

この罠から脱するには、「ビデオクリップ法」による課題分析が有効だ。

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要約公開日 2016.08.29
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