チームがうまく回らない大きな原因の1つは、メンバーが同じ方向を向いていないことだ。とくに中小企業は、たまたま同じ地域に住んでいるなどの物理的な理由でメンバー構成されていることが多いため、価値観の異なる者同士が集まっている傾向がある。その場合、何かこちらから積極的に働きかけないと、組織はうまく機能しない。放っておけば、それぞれの社員が自己主張をはじめてしまうからだ。
組織は、「チームの目的や目標達成に向けて、業績をあげる」ことを目的としている。リーダーの役割は、組織がうまく機能するように、共通の目的をメンバーに意識させ、人の能力を結集させていくことである。しかし、多くの中小企業には、共通の目標がなかったり、メンバー同士が能力を引き出せていなかったりということが多い。というのも、チームで動くという発想がなかったり、リーダーがマネジメントの仕方をそもそも理解していなかったりするためだ。
とはいえ、それはリーダーに能力がないからではない。なぜなら、予行練習なしで組織運営のマネジメントを行うことは、そもそも非常に難しいからである。とくに中小企業では、マネジメント研修などのトレーニングを実施する余裕がないため、リーダーはマネジメントの知識がないにもかかわらず、組織を回していかざるをえないことも少なくない。
チームがうまく回らない、もう1つの原因は「プレイングマネジャー体制」にある。中小企業では、現場の仕事をこなしつつマネジメントを行う「プレイングマネジャー」が一般的だ。しかし、現場の仕事とマネジメント業務の2つを両立させることは簡単なことではない。
また、リーダーの中には、自らチームの業績に大きく貢献する「スーパープレイヤー型マネジャー」がいるが、このようなタイプがリーダーになっても、組織がうまく機能するとはかぎらない。なぜなら、チームメンバーがその存在に頼りっきりになってしまうからだ。その結果、自らの存在意義を感じなくなり、やる気を失う人が出てくるリスクも考えられる。チーム運営で大事なのは、特定の人物だけに頼らないチームを構築することなのだ。
リーダーに求められているのは、リーダーシップとマネジメントの2つの役割である。しかし先述したように、中小企業におけるリーダーは、マネジャーでありプレイヤーでもあることが余儀なくされることも多い。
そこで、マネジャー業務とプレイヤー業務の比率を調整するようにしてはどうだろうか。たとえば、プレイヤー業務:マネジャー業=50:50だったのであれば、それを徐々に30:70に変えていくのである。自分が現場に出なければならないという思いが強い人もいるだろうが、リーダーがプレイヤー業務に集中してしまうと、チームの生産性はあがらない。そのことを肝に銘じておこう。
中小企業のチームを動かすには、チームリーダーのリーダーシップだけでは不十分である。なぜなら、中小企業のリーダーは、自分の担当の業務を抱えるプレイヤーでもあるため、マネジメントバランスが極端にかたよってしまう傾向があるからだ。かたよりがあると依存体質になりやすく、チームの危険度が増すことになる。そのため、役割は分散させてしまったほうがいい。
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