マインドフルネスとはどんな状態を指すのだろうか。リーダーシップの文脈でいえば、「意識をその瞬間に集中して新しい物事に気づく」ことである。一度に一つのことに集中することは、実は予想以上に難しい。大量の仕事に忙殺され、脊髄反射のようにメールの返信をし、デジタル・ツールの「しもべ」になってしまっていないだろうか。こうした状況下において、目の前のことに専念し、心を落ち着かせる能力はますます重要になっている。
さらに、マインドフルネスは、リーダーにとって必須の「自分を知る(セルフ・アウェアネス)」の第一歩でもある。マインドフルネスな状態は、自己認識を高め、「混じり気のない本物」のリーダーシップの土台となってくれる。「混じり気のない本物」とは、自らの信念や価値観に従って行動し、目的を達成する情熱に満ちて、果敢な決断ができるという状態を指す。同時にそれは、幅広い人間関係を維持し、厳しい自己統制力を発揮できる状態でもある。このようなリーダーの資質は、変革型や成果重視型、サーバント型などどのようなタイプのリーダーにおいても、その大前提として求められる。
「自分を知る」ことの重要性については、GEのCEOジェフリー・イメルトが強調している。彼は一週間の行動を振り返る時間を、毎週設けているという。また、前CEOのジャック・ウェルチも、自身が最高の経営者と呼ばれるようになった理由について、「自己に対する気づきがあったから」だと述べている。他者に対して影響力を及ぼし、リーダーシップを発揮するには、自分が何者なのかを十分に知ることが必要なのだ。
では、自分の「何」を知る必要があるのか。それは、人々の思考や言動の原理原則ともいえる、「価値観」である。自分の「価値観」を知ることが大事なのは、次の3つの理由によるものだ。
1つ目は、価値観が「自分がどうあるべきか(Be)」を規定するからである。価値観を見定めてから行動に移さないと、周囲からは「ブレる」「優柔不断」という印象を持たれてしまう。
2つ目は、自分の価値観と、日々の仕事や働き方、組織が重視する価値観が一致しているかどうかを確かめるためである。
3,400冊以上の要約が楽しめる