社長以下、全社一丸となって「顧客満足」を掲げている企業は少なくない。ただ、社員が「顧客満足」を第一に追求するのはいいが、中小企業の社長としては「従業員満足」を第一とすべきだろう。
大企業に比べて資源が少なく、社員の会社に対するロイヤリティも弱くなりがちな中小企業であるからこそ、社員を大切にし、その家族を守り、幸せになってもらえるような経営が望ましい。社員に「この会社で働くことが、私の幸せだ」と思ってもらえれば、会社のためにがんばろうという姿勢が生まれ、プラスのスパイラルとなる。そうすると、毎期着実に売上と利益を伸ばすことができる。
企業は利益を追求するものだが、中小企業の場合、その利益とは、「社員とその家族を守るためのコスト」だと定義づけられる。税引き後の利益である内部留保の多い少ないは、不況や貸し倒れなどのリスクにどれだけ対応できるか、社員を守れるか、ということに直結する。
著者が代表を務める古田土会計には、総勢160名のスタッフがおり、無借金で10億以上の預金残高がある。万一、社員の家族が病気になって医療費の捻出に困ったとしても、会社が1億くらい貸せるということを、社員にも伝えているという。さらに、経理も代表の給料も社員に公開しているため、社員はみな経営状態を把握し、安心して働いている。そのことがプラスに働き、古田土会計は、33期連続増収、赤字は一度もないという。
社員の努力は、成果となって「損益計算書」に現れる。そして、社長が、その稼いだ利益をどのように経営に活用する判断をしてきたかは、資産状態を表す「賃借対照表」で見ることができる。賃借対照表が健全であることは、強い財務体質の証でもある。社長には、中長期的な視点で、賃借対照表を良くしていくことが求められる。同時に、安定成長のためにはいくら利益を獲得する必要があるのか、そのためにいくらの粗利益や売上が必要になるのか、と、未来志向的に考えて、予算を策定していくことが大切だ。
こうして、社長がやるべきことをやり、「社員第一主義」を念頭に置いて、進む方向を皆で共有すれば、中小企業は必ず成功する。
全社一丸となって経営にあたるために、著者が勧めるのは、「経営計画書」の作成と活用だ。成長を続ける古田土会計でも、毎年「経営計画書」を作っている。
経営計画書は「方針編」と「諸表編」とに分かれる。「方針編」では経営理念、経営ビジョン/経営の基本方針/中期事業計画/長期事業構想/当期の経営目標/個別方針を決め、会社の存在意義を明らかにし、そのための未来を描く。「諸表編」では、短期利益計画を、個別の目標数値まで落とし込む。経営計画書の大きな目的は、社員一人ひとりのとるべき行動を、社長以下社員全員で共有することだ。
とくに経営理念を書く際に気をつけたいのは、「社員の幸せ」「顧客の幸せ」「社会貢献」を記し、なかでも社員に関することを一番目に表現することだ。社長だけ、会社だけが幸せになる、という未来像を描いても、社員は絶対に努力しようとはしないだろう。
3~5年先の目標を中期事業計画で定めたら、その1年目の目標数値が当期経営目標となる。
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