日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?
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出版社
クロスメディア・パブリッシング

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出版日
2015年02月01日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

日本の伝統的な人材マネジメント方式は、会社が社員に定年退職までの雇用関係や充実した福利厚生を提供し、その代わりとして社員が会社に忠誠を誓う、といった双方向のものだった。このシステムは海外企業でみられる「社員が自身のキャリアプランを自由に描ける」「プランと現状の比較によっては自由に転職できる」という柔軟性には欠けるものの、かつての日本ではとても上手く機能していた。

しかし、高度経済成長の終焉、バブル経済の崩壊といった危機的状況に直面した日本企業は、安定した雇用の提供という責任を果たすことができなくなっている。しかし依然として社員に極端な服従を要求し、社員を取り替えの効く部品として扱い続けている。低賃金の非正規社員が占める割合が増え、「ブラック企業」「パワハラ」「企業内での不正事件」といったニュースが頻繁に報道され、日本企業を重々しく覆う雲は一向に途切れる兆しを見せない。

本書は明らかに停滞している日本企業の人事管理のあり方に一石を投じている。著者ロッシェル・カップは、日本企業での勤務経験や大手日本企業へのコンサルティング経験から感じた日本企業のマネジメントにおける問題をあぶり出し、それらの改善に有効な組織改革を、調査機関が発表した数字や各企業の多くの事例を交えながら具体的に説明している。暗雲を取り払い、再び日本企業を発展させるための一助として、多くの経営者、人事担当者、そして日本で働く人々自身にぜひ読んでいただきたい一冊だ。

ライター画像
下良果林

著者

ロッシェル・カップ
職場における異文化コミュニケーションと人事管理を専門とする経営コンサルタント。シリコンバレー在住。エール大学歴史学部卒、シカゴ大学経営大学院修了(MBA取得)。大手金融機関の東京本社勤務を経て、日本の多国籍企業の海外進出や海外企業の日本拠点をサポートしているジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社を設立、同社社長。現在、北米、日本、ヨーロッパ、南米と中国に拠点を置き、トヨタ自動車、東レ、アステラス製薬、DeNA、JINSなど多くの日本企業へのコンサルティング活動を行う。著書は『外国人部下と仕事をするためのビジネス英語―指示・フィードバック・業績評価』(語研)、『グローバルエリートのビジネス・キーワード100』(IBCパブリッシング)など、多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    日本企業の人材マネジメントは経済状況の悪化とともに、社員のモチベーションと生産性を低下させる傾向にあり、様々な組織の調査結果でも世界水準より低いスコアとなっている。
  • 要点
    2
    日本企業の人事管理システムは、社員を均一の取り替えの効く、歯車のような存在という前提に基づいて成り立っているが、このアプローチを見直すべき時期が来ている。
  • 要点
    3
    日本企業は「雇用の保証」ではなく、「雇用適性の保障」へ移行し、社員に対し能力開発の環境を継続的に提供することが必要である。

要約

日本人の働き方と、日本企業の人事管理の限界

伝統的な日本式マネジメントの現状
filipefrazao/iStock/Thinkstock

終身雇用、年功序列、頻繁な人事異動といった日本企業の伝統的な人事管理法は、戦後の高度経済成長期を中心として、長年にわたりよく機能してきた。その特徴は、社員の採用に際し特定の経験や技術よりも性格や態度、素行が重視されることが挙げられる。どんな仕事を割り当てられてもこなせるだけの潜在能力が求められるからだ。社員は個人の趣味や才能によって仕事の割り当てを考慮されるのではなく、将来のキャリアパスは会社任せとなる。社員は自身の仕事量を調整できず、残業や遠方への赴任に対する拒否権を持たない。社員は企業に服従する代償として雇用が保障されるシステムである。

しかし1990年代に経済成長が衰え、さらにバブル経済崩壊と、その後の長い不況により、多くの企業では人件費の維持が困難となった。人件費削減のため多くの企業が、早期退職制度の導入や非正規雇用を進めた。業績にもとづく賃金制度を導入する企業も増えた。だが、それらは雇用に不安定さと競争を持ち込むばかりで、米国のような流動性ある労働環境の整備は進んでいない。従来の人事管理慣行の一部のみを変更したため、全体的な整合性が損なわれた、中途半端な人事管理システムと言える。早期退職する年上の社員をみて、若手社員は職を失うことに怯え、活力を失い、リスクを回避する傾向にある。

また重要なのは、日本企業の人事管理が企業自体にとっても上手く機能していないという事実である。社員が仕事と人生に求める期待にそぐわない管理が原因で、社員のやる気と生産性が低迷しているのである。企業は人材にコストがかかりすぎること懸念して、コスト削減に重点を置く人事管理を行うが、こうした取り組みは人材のポジティブな側面に焦点をあてていることが少ない。やる気、生産性、利益、成長が向上する好循環への変換のためには、人事管理を根本から見直すことが必要となる。社員を置き換え可能な歯車として扱うのではなく、個々のニーズと願望と能力を尊重する新しいアプローチが求められているのである。

エンゲージメントと生産性の低さ
Roger Jegg/Hemera/Thinkstock

社員が自分の仕事についてどのように思っているか測定する手段として注目を集めているのが、社員の「エンゲージメント」というコンセプトである。社員の「エンゲージメント」とは、社員が会社やその目標に対して抱く感情的なコミットメントのことである。エンゲージメントが高い社員は「仕事に対し深い関心をもち、ポジティブな感情をもっている。また離職せずに長く留まる傾向が高く、やる気が高く、顧客との関係を深めて製品やサービス向上の原動力となる」ことが主に米国で注目されている。

エーオンヒューイットのレポートによれば、日本でエンゲージメントレベルが非常に高い社員は8%と、世界平均の22%よりかなり低い。北米は27%で、アジア太平洋地域では21%だ。エクスペディアジャパンの24ヶ国を対象にした調査で、雇用状態に満足している日本の社員は60%で、調査対象国中最下位となった。これらの結果は日本企業が社員を管理する方法に問題があることを示唆している。

また、日本企業の社員の労働生産性にも問題があることが指摘されている。生産性とは、一定のインプットでどれだけのアウトプットが可能かを測定するものだ。実働1時間あたりの国民総生産GDPは、OECDが提供する2013年の数値によると日本人が41.1で、OECD平均の47.4、アメリカ66.6と比べて低い。この数字から考えて、日本人は同じ仕事に多くの社員を割り当てている、時間を生産的効率的に使っていないなどの原因が垣間見える。

やる気を損ねる「マイクロマネジメント」

なぜ日本企業の社員のエンゲージメントや生産性が、他国と比べてこれほど低いのだろうか。一因として、日本特有の雇用スタイルが挙げられる。

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要約公開日 2016.08.26
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