「今、集中すべき最も重要なことは何か?」マッキンゼーのコンサルタントをはじめ、一流のビジネスパーソンは、この問いに即答でき、限られた時間で最大の成果を生み出せる。その理由は、彼らが「ミニマム思考」を身につけているからだ。ミニマム思考とは、最も重要なことにフォーカスし、それ以外を捨てて、最小限のエネルギーで最大の成果を生み出すための思考法である。
多くのビジネスパーソンは、仕事上、「質」と「スピード」のいずれかに偏りがちだが、それでは顧客や上司、仲間からの評価は下がってしまう。一方、周囲から高い評価を得ている人は、質の高い仕事を、速いスピードで期限までに終わらせている。こうした生産性が高い人材は、成果を生み出すことにのみ集中しているため、ムダがなく、仕事の質もスピードも自然と高まっていくのだ。
段取りの本質は、スケジュール管理や効率的な仕事術といった小手先のテクニックではなく、「どんなバリューを出すべきか」を常に考える思考法にある。バリューとは自分や相手にとってのメリットを指す。ミニマム思考の人は、自分がどんなバリューを出しているかを意識して仕事を進め、バリューを生み出すことを心底楽しんでいる。
バリューを明確にした後は、その実現に向けた具体的な段取りを組んでいく必要がある。そこで欠かせないのが、ミニマム思考の土台となる「仮説を立てる技術」、「全体を設計する技術」、「アウトプットをデザインする技術」の3つである。「ミニマム思考」を構成する3つの技術について、これから詳述していく。
まずは「仮説を立てる技術」について説明する。コンサルティングの世界では、クライアントの問題を解決するうえでキーとなる真の問題、「イシュー」を見つけ出し、「こうすればイシューを解決できるのではないか」という仮説を立てるのが原則だ。
これは、営業先への提案や企画書づくりのための情報収集などにおいても当てはまる。仕事に取りかかる前から仮説を意識しておくと、成果に歴然と差が出る。例えば営業の仕事においては、「お客様が求めているのは、○○ではないか」と、当たりをつけておけば、アプローチの仕方や推奨する商品を絞り込みやすくなる。
ただし、仮説はあくまで「バリューを実現するための仮のアイデア」にすぎない。検証して結果が出ないことがわかれば、新たな仮説を立てればよい。高速で検証し、精度を上げることで、「質」と「スピード」の両方を追求できる。これこそが「仮説を立てる技術」の真髄である。
とはいえ、最初に立てた仮説があまりに見当はずれだと、軌道修正の手間がかかってしまう。そこで、筋がよく、確度の高い仮説を立てることが求められる。確度の高い仮説を立てるには、「情報収集力」と「編集力」がキーとなる。
「情報収集力」とは、誰もが簡単に得られる情報ではなく、現場でしか得られない、さりげなく目にする情報を入手する力を指す。こうした情報を効率よく集めるには、調べたい分野において独自の知見をもった「目利き」に相談することだ。
相談する際も、ミニマム思考の人は、自分なりの仮説に沿った質問を用意することを忘れない。
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