日々の中で、やらなければいけないとわかっているのになかなか気が進まず、つい先延ばしにしてしまうという経験は誰にでもあるだろう。そんな時、あなたはどう思うだろうか。
実のところ、「やる気があればできるはずだ」というのは正しくない。やるべきことがわかっていて、やろうと決意したからといって、そのとおり行動できるようには人間はできていない。「やるべきとわかっているが気が進まないこと」は、「その瞬間やりたいと思ったこと」に簡単に負けてしまうものなのだ。
しかし、やるべきこと、やらなければ大きな失敗をするとわかっていることをやらないままでは、思い描く成功は決して手に入らないだろう。だからこそ、やるべきことに対し、実際に着手できるように、工夫する必要があるのである。
誰にでも、成功のためにやらなければならない仕事がある。その仕事を、「ひとりでにやる気の出る仕事」と「どうしてもやる気が湧いてこない仕事」の2種類に分けよう。
後者の「やる気が湧いてこない仕事」を、ある人は「スライム」と名付けた。スライムは、「重くてネバネバしていて、反抗的で不快な存在」という意味を表している。好きでどんどんやりたくなる仕事とは反対に、ずるずると先延ばししてしまったり、途中で投げ出してしまったりする仕事は、すべてスライムである。
誰にでもスライムはあって当然のもので、スライムがないという人はおそらくいないか、極めて稀だろう。しかし、どんな仕事をスライムと感じるかは人によって違う。労力がいる仕事だからスライムであるとも限らない。ちょっとした事務作業が、ある人にとってはとんでもなく面倒なスライムだということもある。
スライムが厄介なのは、スライムから逃げようとすると、仕事が進まないだけでなく、ネガティブな感情に苛まれ、エネルギーを吸い取られてしまうことである。スライムに対してきちんと向き合わなければ、大きな損失を被ってしまうのだ。
やりたい仕事もやりたくない仕事も選べずに取り組まなければならないという意味で、雇われのサラリーマンはスライムを抱えやすいといえる。だが、勤めている会社を辞めて独立しても、抱えているスライムから解放され、自由を手に入れてハッピーエンドになるとはかぎらない。
経営者は自由とともに、多くのリスクと困難を抱えている。事業が失敗する確率は決して低くはない。そのうえ失敗すると、物理的にも精神的にも失うものが大きい。経営者にとって、事業を失敗させないために多くの危機に立ち向かい、そのために決意したことを実行に移すことは非常に重要なのである。
しかも、経営者は雇われの身の人たちと比べて、締め切り、業績評価、上司からの指示、報酬や罰則など、行動を起こすためのプレッシャーとなるものが少ない。独立してはじめて、今まで助けられていた「仕事をやり遂げるための組織のインフラ」に気づくこともある。抱えるリスクは大きくなるのに、支えるインフラは少なくなるのが起業家なのである。
何かやろうと決意したときに、多くの人は自分に言い聞かせながら行動に移そうとしたり、モチベーションを上げるようなインスピレーションを得て気持ちを盛り上げたりしようとする。そのこと自体は否定しないが、そのやり方だけでは長続きしない。
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