誰でも人生において、失敗や挫折に出くわす。マイナスの状況にどう対処して、壁を乗り越えていくかが、人生の幸福度に密接に関わっている。ひきずらない人は、次々と課題に挑戦していき、経験とチャンスが積み重なって成功への精度が上がっていく。反対に、ひきずる人はなかなか前に進めないために、成功体験にも恵まれず、ますますひきずるという悪循環に陥ってしまう。
しかし、ひきずりは本来、危機を管理し、生存するために必要な機能でもある。ひきずりがない場合、人は失敗や困難を忘れてしまい、同じ過ちをくり返しかねない。大切なことは、ひきずったままにするのではなく、再び走り出し前進することだ。
それでは、良い引きずりと悪いひきずりの差は何なのか。著者は「反省」と「後悔」の違いだという。反省は失敗や挫折を教訓にすることである一方、後悔は「しなければ良かった」と、過去にこだわって前進しなくなることだ。「悪いひきずり」をする人は、悩みを自分の中で増幅させている。失敗やトラブルを引き起こしてしまっても、「これは自分のサクセスストーリーの第一歩だ」と言える未来にしていけばいい。
「良いひきずり」に変えていくための一歩は、自分のネガティブな感情に気づき、ありのままの自分を知ることだ。ありのままの自分には、欠点だけでなく強みもある。自分の強みを活かす方法を考え、理想の未来を描くことが重要である。
つらい経験やストレスを、良いひきずりに変える力を、心理学では「レジリエンス」と呼ぶ。失敗や挫折を経験して心が折れてしまった状態から、もとの元気な状態に戻る力のことである。
本書では、心を回復させるだけではなく、つらい経験をする前よりも成長することや、目標に向かってチャレンジでき、高いパフォーマンスを持続できるようになることを「レジリエンス」、すなわち「ひきずらない技術」と定義している。本書が提起するレジリエンスを身につければ、失敗や挫折が多ければ多いほど、どんどん成長していくことができる。
ひきずりをプラスの力に変えるためには、「逆境を乗り越えるレジリエンス」と「チャンスを活かすレジリエンス」の2つの力が必要だ。もし過去の失敗から立ち直れないなら、前者のレジリエンスが足りないといえる。また、過去の失敗をひきずって、チャンスが来たのに全力を注げないのならば、後者のレジリエンスが足りないのである。悪いひきずりを良いひきずりに変え、ネガティブなことを経験したときよりも一段とたくましい人間に成長するためには、両方のレジリエンスが必要となる。そして、壊れてももとに戻れるしなやかな心の状態をめざすことを、著者は推奨している。
レジリエンスは増えたり減ったりする性質を持つ。レジリエンスは、夢や希望、頑張った経験などで増える一方、怒りや妬み、自信喪失といった、外からの刺激やストレスを受けると減ってしまう。心をコップにたとえると、レジリエンスはコップの中にある水のようなものである。例えばトラブルが生じ、大きな揺れが起こると、コップの水(レジリエンス)がこぼれて減っていき、心が折れてしまう。
そこで、レジリエンスを守るうえでは、サポートしてくれる存在が多くいるかどうかがカギとなる。助けてくれる上司や同僚、励ましてくれる家族や仲間との信頼関係がクッションとなり、外からの刺激をやわらげてくれる。
レジリエンスを維持するには、次のような方法が効果的だ。1つ目は、夢や希望をふくらませたり、うれしい経験を増やしたりして水をたくさん入れることである。2つ目は、
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