仕事も人間関係もうまくいく

ANAの気づかい

未読
ANAの気づかい
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ANAの気づかい
未読
ANAの気づかい
出版社
出版日
2015年12月11日
評点
総合
3.2
明瞭性
3.0
革新性
3.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

本書はANA社員たちが日々実践してきた「気づかい」の秘訣を1冊にまとめたものである。勤続20年以上の現役社員からOBまでにインタビューし、現場での努力を通じて人から人へと受け継がれてきた「口伝の技術」を初めて公開している。

相手を気づかう、相手を思いやるということは、誰もが幼いころから親や周囲の人に言われてきた美徳であろう。しかし、相手を気づかうことがなぜ大切なのか考えたことはあるだろうか。本書はその「なぜ」を明確に教えてくれる一冊であり、理由が納得できるからこそ気づかいをできるようになりたいと思わせてくれる。

私たちが飛行機を利用する際、「何も言ってないのに毛布をかけてくれた」「重い荷物を代わりにもってくれた」といった対面で示される気づかいには気づきやすい。しかしそれらは全体の一部にすぎず、実は私たちの見えないところでより多くの気づかいがなされているのだ。「気づかれない気づかいこそ金」――すなわち気づかれない気づかいこそが、気づかいの本質であると述べているこの言葉を、ANAでは社員一人ひとりが日々実践しているのである。

本書内では随所にベテラン社員の気づかいを、個人のもので終わらせずに、組織に広げて徹底する様子が描かれている。気づかいの本質とともに、社員の目線を合わせて一丸となって課題に取り組み、実践する姿にも注目していただきたい。

ライター画像
和田有紀子

著者

ANAビジネスソリューション
ANAホールディングスの100%子会社。ANAグループのノウハウを活かし、主に「研修事業」「人材派遣事業」を行う。
研修の内容は「接遇&ビジネスマナー」「ヒューマンエラー対策」「コミュニケーション」など。メーカー、小売り、サービス業、医療機関、自治体など、あらゆる業種、業態からの依頼を受け、企業・個人に向けた研修を行っている。
社内で「青い血」と呼ぶDNAの継承を大切にしており、研修はすべて、ANA社員として長年勤務してきた、あるいは現役で勤務する講師が務める。
著書に『どんな問題も「チーム」で解決する ANAの口ぐせ』(KADOKAWA)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    ANAでは「気づかいは仕事をする上で必須のビジネススキルである」と位置付けている。
  • 要点
    2
    組織で仕事を確実に行うためのベースになるのは人間関係であり、人間関係は「気づかい」によって構築されるものである。
  • 要点
    3
    ANAでは「相手に気づかれようとする気づかいは、銀」「相手に気づかれない気づかいは、金」と表現していて、気づかれない気づかいを積み重ねていくことは、自分にも、まわりの仲間たちにも必ずプラスになると考えている。これが気づかいの本質である。

要約

【必読ポイント!】気づかいが必要な理由

ANAはなぜ気づかいを重視するのか
BraunS/iStock/Thinkstock

ANAは2013年~2015年の3年連続で英国SKYTRAX社のエアライン・スター・ランキングで世界最高評価の「5スター」を獲得した。国内の航空会社ではANAだけ、世界でもANAを含めて7社のみという偉業を成し遂げた要因の1つに、社員一人ひとりが実践してきた「気づかい」がある。

「気づかい」というと、「できないよりはできた方がよい」という程度の認識の人も少なくないだろう。しかしANAでは「気づかい」を、「なくてはならないもの」と位置付けている。その理由は、ANAの至上命題である「安全の確保」を実現するためだという。ANA社員にとって「飛行機を安全に飛ばす」ことは何があっても譲れないことである。安全を確保するためには、日ごろからチームのメンバーがよりよい関係を築いておくことが必要だ。そして、よりよい人間関係を築くために必要なことこそが「気づかい」であるという。

仲間を気づかわない人は、お客様も気づかえない

通常、気づかいと聞いてイメージするのは、「お客様」に対しての気づかいである。しかしANAでは、気づかいが「社内」に浸透していることが特徴だという。理由はシンプルで、社員同士の気づかいが、お客様への気づかいの「土台」となるためだ。つまり「仲間を気づかわない人は、お客様も気づかえない」ということである。たとえば笑顔で接客しているCAが、裏方の調理室に入ったとたん、大きな声で、汚い言葉づかいで後輩に接していたとしたら、お客様からの信頼感は損なわれてしまうだろう。

また、気づかいは安全性の向上にも有用である。ある機長は副操縦士に対して、些細なことでも、何でも言ってくれるような人間関係を「気づかい」によって構築するという。副操縦士が機長の判断を過信せずに、疑問を投げかけることが安全性の向上につながるからである。また、ベテラン整備士は「伝えたいことが伝わる人間関係にするために気づかいは必要」と述べる。安全運航を達成するためには、仲間に伝えたいことが伝わらなければならず、そのためには相手の状況を考えた上で伝えることが重要だからだ。

気づかれない気づかいこそ「金」

人は、他人のためと思って行うことに対して、つい見返りを期待してしまうものである。しかし誰が見ていなくとも行う気づかいこそが、本当に大切なものである。それをANAでは「相手に気づかれようとする気づかいは、銀」「相手に気づかれない気づかいは、金」と表現している。自分の行った気づかいを相手に気づいてもらって感謝されれば嬉しい。しかし相手に気づいてもらえなくとも、自分の気づかいで相手が普通に時を過ごすことができれば、よしと考える。このような心意気で全員が気づかいをすると、とても過ごしやすい環境が生まれるのだ。

「気づかれない気づかいを積み重ねていくことは、きっと自分の将来に、そしてまわりの仲間たちの将来にとってプラスになる」。このように考えるところに気づかいの本質がある。

すべての気づかいは「時間を守ること」から

気づかいとは、準備すること
paisan191/iStock/Thinkstock

ANAの社員が安全の他に重要視しているものに「定時運航」がある。時間を守らない航空会社はいざというときに絶対に選ばれない。これは人にも当てはまり、ここ一番で「大切な仕事を頼もう」と思ってもらえるのは、時間を守る人である。どんな仕事であっても、時間・約束を守る行為はすべての人間関係・信頼の「土台」となる。そしてそのために重要になってくるのが、事前の準備だ。

ANAの整備士のあいだでは「段取り八分」という言葉が浸透している。段取り八分とは本番の成否の8割はその前の準備段階で決まるということだ。限られた時間の中で最高のパフォーマンスを発揮するために、整備士たちは事前の情報入手や部品・工具・マニュアルの準備、そして作業同士の意思疎通を欠かさない。また本番では予期せぬことが度々起こり得るため、常に想定通りに行かない場合のことまで考えて「100%の準備」ではなく「120%の準備」をしておくことが大切だという。

プロは常に逆算して決める

ANAのCAは、日常生活の中で「逆算」するのがライフワークになるという。例えば、

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要約公開日 2016.08.16
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