本書では、ストーリー形式で、トヨタの現場で働く人が「自分の頭で考える」ための強力なガイドにしている5つの思考の型を紹介していく。
まず本書で紹介されているのは「改善思考」である。知恵を出しながら、現状を少しでも良くしていこうという考え方だ。改善を重視する背景には、「すべてはお客様のため」という考えがある。改善をうまく進める順序は、身の回りの作業のムダをなくす作業改善、職場環境や設備のムダをなくす設備改善、そして業務フローや工程のムダをなくす工程改善である。人は「変えて失敗したらどうしよう」という恐怖心で足がすくみがちだが、まず身近なところから改善することで、頭が活発化する「作業興奮」が誘発され、さらに大きな課題にも取り組めるようになる。
朝早くから探し物に追われていた主人公は、トヨタでの現場の統括経験を買われて取締役に就任した金城取締役にこう諭された。「時間は動作の影だ。ムダな動作をするほど、ムダな時間が増える。改善や価値提供の活動である『仕事』の時間を創出するために、徹底的にムダな動作を排除しなくてはいけない。」
頑張ることは汗をかくことではない。トヨタは、いかに生産性を向上できるかを考え、改善を重ねてきた。
そのための方法の一つとして、「自動化」という手法がある。主人公は、顧客のサーバーの運用障害を、運用チームが見逃してしまうという問題に対して、運用の監視を自動化できるツールを提案した。コストが低く済むことや、導入作業も負荷が少なく、ツールによって人的ミスを防げることを伝えた結果、ツールの導入が決まった。そこに「自らの知恵を足せ」という取締役のアドバイスを取り入れた結果、運用チームが多くの時間を割いていたレポート作成のムダも省くことができた。
2つ目の思考の型は「横展思考」である。良いアイデアや事例をどんどん広げて、全体の底上げを図るというものだ。トヨタでは、社内の部署同士の情報交換はもちろんのこと、地区ごとに交流する機会や、改善成果のコンテスト、発表会など、様々な規模で「横展」が繰り広げられている。
主人公は、何かと差をつけられている同期に妬みを抱いていたが、取締役は、身近に優れた人をベンチマークする重要性を説いた。
小さな工場から始まったトヨタも、業界を問わず優良企業をベンチマークし、自社との差を測定しては、その差を一つ一つ埋めていくことで、今や売り上げ27兆円規模の会社にまで成長を遂げることができた。トヨタの在庫管理で有名な「カンバン方式」も、アメリカのスーパーマーケットの取り組みをトヨタが独自に進化させていったものである。
周囲から良いものを積極的に取り入れ、自分が成長したと感じたら、視点をずらして、さらなる高みを目指すことが大切である。
トヨタには「多能工」という考え方がある。部品の取り付け担当を毎回変えて、他の人の担当業務もこなせるようになることで、欠員が出ても周囲がカバーでき、個々人の視野も広くなる。
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