図解地政学入門

世界のニュースがわかる!
未読
図解地政学入門
図解地政学入門
世界のニュースがわかる!
未読
図解地政学入門
出版社
出版日
2015年12月17日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
4.0
要約全文を読むには
会員登録・ログインが必要です
本の購入はこちら
書籍情報を見る
本の購入はこちら
おすすめポイント

どの時代でも世界のどこかで紛争が起こっている。戦争や争いの大半は、地理的要因によって勃発するものである。

本書のタイトルにある「地政学」とは、地理的な条件が国家の政治や軍事、経済に与える影響を考える学問だ。著者によれば、地政学を端的に定義すると、「世界で起こってきた戦争の歴史を知ること」であるという。確かに、歴史に残る数々の戦争の原因を探ってみると、領地拡大のためであったり、重要な利権がからんでいたりするなど、地理的条件による各国の切実な事情がからんでいることを再認識させられる。とりわけ、列強によるアジアやアフリカ、南米の植民地化は、その側面が強いと言えるだろう。世界をリードするような国々が、都合のいい論理で国益のために他国や他地域に進攻して争いを起こし、その国の人々をないがしろにして利権を獲得してきたのだ。グローバル化が進んだ現代でも、世界の国々はそれぞれの地理的条件に起因する思惑や野心を背景に外交政策を展開している。

地政学になじみがない人や歴史の授業が苦手だった人でも、本書を読めば、その定義を理解し、各国の歴史と動向が手にとるようにわかるはずだ。世界を大局的に見る視点を養うことは、現代の国際社会を真に理解し、そこで生き抜く知恵を得るだと言っても過言ではない。中高時代に学んだ世界史を思い出しながら、本書をじっくり味わってほしい。

著者

髙橋 洋一
1955年東京都生まれ。都立小石川高等学校(現・都立小石川中等教育学校)を経て、東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業。博士(政策研究)。 1980年に大蔵省(現・財務省)入省。大蔵省理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)、内閣参事官 (首相官邸)等を歴任。小泉内閣・第一次安倍内閣ではブレーンとして活躍し、「霞ヶ関埋蔵金」の公表や「ふるさと納税」「ねんきん定期便」など数々の政策提案・実現をしてきた。2008年退官。現在、嘉悦大学ビジネス創造学部教授、株式会社政策工房代表取締役会長。

本書の要点

  • 要点
    1
    地政学とは、地理的な条件が一国の政治や軍事、経済に与える影響を考えることだ。歴史の背景には、領土にまつわる国家の野心が存在し、地理的条件が大きく関わってきた。
  • 要点
    2
    西洋列強による半植民地時代で弱体化していた中国は、二度の大戦を経て再び大国として存在感を示し、太平洋への足がかりをつくろうとしている。
  • 要点
    3
    アメリカにとって、アメリカ大陸の囲い込みや、太平洋の植民地の奪取は、自由精神を普及させるためであり、これが「世界の警察官」としての意識につながっていく。

要約

「広い海」がほしい中国の地政学

内陸を支配しつつ、太平洋に打って出たい

まずは中国の歴史を概観する。群雄割拠の春秋・戦国時代の後、秦の始皇帝が中国を統一したのを機に、主に漢民族が中国大陸を支配してきた。「中国が世界の文化、政治の中心であり、他に優越している」という中華思想を基盤に、周辺の異民族から朝貢を受け、国王の称号や印綬を与える「冊封・朝貢体制」をつくりあげていった。

以降、数々の王朝が興亡し、17世紀の中ごろに起きた明朝滅亡戦争で漢民族国家が滅亡した後、満州人中心の新王朝である清が興った。清の勢力はロシア国境付近から朝鮮、琉球、台湾、ベトナム、タイ、ミャンマー、ネパール、チベット、モンゴルにまで及び、銀の大量流入で繁栄し、全盛期を迎えた。清の皇帝はまずは内陸部を制圧すべく、直轄領や間接統治領を内陸へと広げたのである。

その後、西洋列強による半植民地時代、日清戦争、第一次世界大戦などを経て現在に至る。

ここで今、中国はかつての英米のように、内陸国家から海洋国家へと転換することで、世界の覇者になろうとしている。台湾や尖閣諸島、南沙諸島にこだわるのも、太平洋へと進出する足がかりをつくりたいためだ。

アヘン戦争の敗北で香港を割譲
Photos.com/PHOTOS.com>>/Thinkstock

広大な帝国を築いていた清の勢力は、18世紀半ばに陰りを見せ始めた。清は、中国との自由貿易を求めたイギリスに対して頑なに拒否の構えを見せた。

そこで、アジアに一大拠点を築きたいイギリスは、清と継続的に商売をするために清にアヘンを大量に輸入させた。イギリスの狙いは、清の市場を開放し、主要な貿易港に自由にアクセスできるようになることだった。こうして、清のアヘン中毒者を増やし、清に流出していた銀を、インドを介して回収する「三角貿易」に持ち込んだ。内政も経済も大混乱に陥った清では、アヘン厳禁令が出され、一般の通商も禁止された。これを機に清に進攻したイギリスが勝利し、清は5港の開港と香港の割譲を強いられた。これがアヘン戦争である。

香港は、イギリスが東南アジアに進出するための重要な拠点となった。香港をアジアの貿易・金融の中心地にすることで、イギリスはアジアで確固たる地位を築いたのだ。これを皮切りに、

もっと見る
この続きを見るには...
残り3260/4172文字

3,400冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2016.05.02
Copyright © 2024 Flier Inc. All rights reserved.
一緒に読まれている要約
「全世界史」講義 II
「全世界史」講義 II
出口治明
未読
ビジネスマンのための新しい童話の読みかた
ビジネスマンのための新しい童話の読みかた
上阪徹
未読
ビジネスを「先読み」する人の日本経済史の読み方
ビジネスを「先読み」する人の日本経済史の読み方
小宮一慶
未読
大前研一 日本の論点2016〜17
大前研一 日本の論点2016〜17
大前研一
未読
データで読み解く中国の未来
データで読み解く中国の未来
川島博之
未読
安倍官邸vs.習近平  激化する日中外交戦争
安倍官邸vs.習近平 激化する日中外交戦争
読売新聞政治部
未読
ヤバい経済学 [増補改訂版]
ヤバい経済学 [増補改訂版]
望月衛(訳)スティーヴン・D・レヴィットスティーヴン・J・ダブナー
未読
ヤバすぎる経済学
ヤバすぎる経済学
望月衛(訳)スティーヴン・D・レヴィットスティーヴン・J・ダブナー
未読