「全世界史」講義 II

近世・近現代編:教養に効く! 人類5000年史
未読
「全世界史」講義 II
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近世・近現代編:教養に効く! 人類5000年史
未読
「全世界史」講義 II
出版社
新潮社
出版日
2016年01月18日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

今日の世界を見渡してみると、大国アメリカが世界をリードし、ここ数十年で破竹の勢いで国力を伸ばしている中国は世界の工場として君臨、我が国日本も戦後高度成長を遂げ、国土は小さいながらも世界有数の経済大国として位置づけられている。しかし、今では当たり前であるこのような情勢は、人類の歴史においてはほんの最近のことであり、アメリカが真に世界の覇権を握るようになったのもここ1世紀ほどのことである。

今ではなかなか考えにくいが、16世紀~17世紀はアジアが世界の中心であった。中国の王朝のみでなく、インド大陸から西アジアにかけて複数の王朝が繁栄し、栄華を極めていた。18世紀末になると、イギリスで始まった産業革命がヨーロッパ各地に波及し、諸国で工業化が進展するとともに、市民革命でいち早く「国民国家」の意識が育まれたこともあいまって、19世紀にはヨーロッパが世界の覇権を握るようになる。ヨーロッパ列強は植民地政策でアフリカやアジアにも進出し勢力を広げるが、20世紀になるとアメリカが台頭し、現在の世界地図が徐々にでき上がっていく。

各国の歴史は緊密に繋がっていて、あらゆる事象には因果関係があり、それ一つだけを取り出しても正確に理解することはできない。なぜアジアが世界の中心になったのか、そのアジアがなぜ衰退しヨーロッパに取って代わられたのか、新大陸アメリカがどのように世界の中心に位置するようになったのか。本書を読むことで、ぜひその全貌を紐解いていただきたい。

ライター画像
和田有紀子

著者

出口 治明
ライフネット生命保険株式会社、会長兼CEO。1948年、三重県美杉村生まれ。京都大学法学部を卒業後、1972年、日本生命保険相互会社入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当する。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て2006年に退職。同年、ネットライフ企画株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。2008年4月、生命保険業免許取得に伴い現社名に変更。2013年より現職。旅と読書をこよなく愛し、訪れた世界の都市は1200以上、読んだ本は1万冊を超える。歴史への造詣が深く、京都大学の「国際人のグローバル・リテラシー」特別講義では歴史の講座を受け持った。著書に『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『直球勝負の会社』(ダイヤモンド社)、『仕事に効く教養としての「世界史」』(祥伝社)、『「働き方」の教科書』(新潮社)、『人生を面白くする本物の教養』(幻冬舎新書)。『生命保険とのつき合い方』(岩波新書)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    16世紀は、明、ムガール朝、サファヴィー朝、オスマン朝という四大帝国が世界に君臨した時期であり、アジアが世界経済の過半を担っていた。
  • 要点
    2
    長い間ユーラシアでは、騎馬隊が最強の軍事力を誇るとされてきたが、オスマン朝のイェニチェリという歩兵と鉄砲の強さが明らかになってくると、騎馬から鉄砲に軍事面の主役が変わっていった。
  • 要点
    3
    18世紀半ばから起きた産業革命により、グレートブリテンの綿織物の生産力が飛躍的に伸びた。また、フランス革命後、ナポレオンの時代を経て、1848年のヨーロッパ革命に至り、自由・平等・友愛の精神がヨーロッパに浸透した。

要約

【必読ポイント!】アジアの時代と宗教改革

アジアの四大帝国
eugenef/iStock/Thinkstock

16世紀は東から、明、ムガール朝、サファヴィー朝、オスマン朝という四大帝国が世界に君臨した時代であった。

中国にはかねてより、世界の人々が欲しがる特産品がたくさんあったが、14世紀半ばに元から明へと王朝が交代すると、海禁という鎖国政策をとったため、経済が停滞した。そこで名宰相の徐階と張居正が大改革を始める。土地の測量を行い大量の隠し田を摘発し、税制をシンプルにし、海禁を解除した。その交易の対価としてメキシコや日本の石見の銀が市場に大量に流入することにつながり、ますます交易が盛んになっていった。

1526年にインド大陸に誕生したムスリムのムガール朝は、1539年フマーユーンの時代にシェール・シャーという人物に攻め込まれ、一度スール朝という王朝に取って代わられた。しかし、インドから逃れサファヴィー朝に身を寄せていたフマーユーンは、55年にサファヴィー朝のバックを得てスール朝を滅ぼし、ムガール朝を復活させた。

ムガール朝復興後はアクバルという名君が王位に就き、この時代からムガール朝は繁栄に向かった。この繁栄はスール朝時代の土地台帳の整備や徴税組織の確立、道路網の充実、貨幣制度の改革などシェール・シャーによる優れた政治が基盤となっていた。なお、世界遺産としても有名なタージ・マハルは、アクバルの孫にあたるシャー・ジャハーンの治世において建設された。

一方、ペルシャ湾岸に繁栄したイラン人の王朝サファヴィー朝は、5代目のアッバース一世の時代に極盛期を迎え、首都イスファハーンは世界の富の半分が集まっていると言われるほどに栄えた。

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要約公開日 2016.05.25
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