インチキするのが人の本性かどうかは別にして、ほとんどの人間の営みにはインチキがついて回る。ここではシカゴの教育現場から「インチキ先生」を排除した事例を紹介する。
シカゴ教育委員会は、毎年シカゴに在住する生徒・児童40万人の教育を担当している。2002年、当時のブッシュ政権による「1人も落ちこぼれさせない法」の施行により、一発勝負のテストが全米で義務化されたが、シカゴ教育委員会はそれより早く1996年から一発勝負のテストを導入していた。
これは年1回のテスト結果にて、児童・生徒の成績を評価しようとするもので、テストの結果に関しては学校側が責任を負うとされた。成績の低かった学校は観察処分を受けることになり、職員も成績次第では解雇されると定められた。
この方式に賛成の立場を取った人々は、授業レベルや、生徒の勉強モチベーションの向上を期待していた。また、出来の悪い生徒を無理に進級させないことによって、出来のいい生徒の邪魔にならなくなることも評価していた。
一方、反対の立場を取った人々は、たまたまテストの出来が悪かった一部の生徒にひどい罰が与えられてしまうこと、そして先生たちが試験対策ばかりやるようになることを危惧していた。というのもこの制度では、生徒たちの点数が悪ければ先生たちにも罰則が課せられることになることに加え、逆に生徒たちがいい点を取れば結構な額のお金が与えられることになっていたからである。
一発勝負のテストが導入されたことにより、授業の質を向上させることで生徒の点数を上げようとする至極真っ当な先生ももちろんいた。だが楽をして、つまりはインチキで生徒の点を上げようとする先生も出てきた。わかりやすいところでは試験時間の延長、過去問の事前入手といった手段が用いられた。
しかし、もし先生が「真剣に」インチキを考えるなら、解答用紙を集めたあと、回収されてしまう前に、間違っている解答を消して正解に書き換えるのが一番効果的である。ではそれをどうやって見抜けばよいだろうか。
著者の見立てはこうであった。もし先生の立場であれば、あまりたくさんの書き直しはしたくないだろう。
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