自分がテロリストだと仮定したら、使える資源が限られている中、どうやって乗客への恐怖を最大化するだろうか。著者によると、人々を震え上がらせるには「自分がテロ攻撃の犠牲になるかもしれない」と思わせるのが効果的だという。人間は珍しい出来事であればあるほど、それが起こる確率を現実より高く見積もる傾向にあるため、テロの恐怖が過大評価されるのである。
そこで、著者の描くシナリオはこうだ。まずは、テロリストが大都市、小都市、郊外などさまざまな場所で一斉にテロを起こし、人々に「大人数のテロリストがいる」と思いこませる。そして商業をストップさせれば、人々は暇になって、余計に怖がる時間が増える。被害そのものは大規模でなくても彼らを恐怖に陥れることが主目的のため、銃を何丁か調達すれば事足りる。そうすれば資金は少なくて済むうえに、実行犯を捕まえるのは困難を極めるだろう。
テロで実際に命を落とすリスクは、交通事故や心臓麻痺、殺人などに比べると小さい。要するに、テロがもたらす真のリスクとコストは「恐れ」なのだ。著者の見解は、テロの危険はそれほど大きくないのに、テロを防ぐ努力をしているように見せることに、国家(アメリカ)がお金を遣いすぎているというものだ。そしてCIAは、テロ攻撃が起きても、前々からテロの可能性について報告しておけば非難されることは少ないと、CIAについても皮肉を言っている。
この記事を著者がサイトに掲載したところ、読者からは「テロのシナリオを考えるなんて不謹慎だ」、と怒りの声が相次いだが、これはテロに備えるためのシミュレーションなのだ。
政治体制を改善するために必要な施策とは何だろうか。一つの方法は、政治家の給料を大幅に増やし、より善良な人が政治の世界をめざすのを促すことである。もちろん、不景気のさなか、政治家の給料向上を政治家自らが謳うのはなかなか受け入れられにくいかもしれない。しかし、これにより次のようなメリットが期待できる。政治が大事な仕事だというメッセージになるし、他の儲かる業界にいた優秀な人材が政治の世界に入りやすくなる。そのうえ、収入の心配が減ることで、政治家は職務に集中しやすくなり、利権に惑わされにくくなるのだ。現に、政治家の給料を大幅に増やしたブラジルのとある地方自治体では、議員の質に改善が見られ、政治家の業績向上にもつながったという。
そこで、もっと過激な名案を著者は思いついた。
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