戦後50周年の「村山談話」と60周年の「小泉談話」には、「植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えた」「痛切な反省と心からのお詫びの気持ち」という共通の文言が使われている。
今回の安倍談話(本稿は2015年夏、安倍晋三首相による「戦後70周年の首相談話」を前に書かれたもの)において、安倍首相は歴代内閣の立場を引き継ぎながらも、「未来志向」の文言を取り入れたい意向のようだ。
70周年談話の主なオーディエンスは、日本国民、アメリカ、中国、韓国である。日本政府が一番気にしているのがアメリカだ。アメリカは歴史認識や集団的自衛権行使容認などで安倍政権が近隣諸国との関係を悪化させている状況を苦々しくとらえている。万一戦闘が起これば、日米安保に基づいてアメリカは日本に加担せざるをえないためだ。そこでアメリカは日本に対して、戦後の総括をきちんと行い、近隣諸国との関係を改善することを求めている。
アメリカは首相談話において、日本を平和国家へと導いたアメリカの功績をほめたたえることを望んでいる。
一方、アメリカが最も恐れているのは、「歴史の見直し」だ。安倍政権が発足した当初、安倍首相は慰安婦問題の強制性を認めた「河野談話」や「村山談話」の見直しに言及していた。日中、日韓の歴史を見直すことになれば、原爆投下や占領政策、東京裁判の正当性が蒸し返され、アメリカ主導の戦後秩序も問い直されかねない。歴史見直し発言や靖国参拝で国際社会から反発を受け、アメリカから警告を受けた安倍首相は、歴史の見直しとともに憲法を改正するという夢を封印した。
大前氏は、日本は過去の大戦の謝罪をもはやする必要はないと主張する。
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