朝型勤務がダメな理由

あなたの睡眠を改善する最新知識
未読
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朝型勤務がダメな理由
出版社
日経ナショナルジオグラフィック社
出版日
2016年01月26日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

睡眠研究の権威によって書かれた本書だが、一般に流布されている睡眠の常識を覆すような知見がいくつも紹介されているため、睡眠に関して少しでも興味がある人にとっては非常に満足度の高い一冊といえる。また、小粋な冗談を交え、軽快なトーンで展開していくので、非常に読みやすいのも本書の特徴だ。

著者は、睡眠科学、睡眠医学の分野ではかなり以前から「常識」となっていることが一般的な知識として広まっていないどころか、睡眠に関する疑わしい知識が氾濫する現状に危機感を覚えている。睡眠は誰にとっても身近であり、生活の質や仕事のパフォーマンスをも左右する重要なものでありながら、まだまだ解明されていないところが多い分野だ。それゆえ、一人ひとりが睡眠リテラシーを高めていく必要があるのだという。

生物にとってほぼ必須の生体現象にもかかわらず、これほどまでに個人差がある「睡眠」。ロングスリーパーにもショートスリーパーにも、朝型にも夜型にも、それぞれメリットとデメリットがあることを本書は示している。自分自身にどのような睡眠傾向があるのかをしっかり見極めつつ、それとうまくつきあっていくためにはどうすればよいのか? 本書はそれを知るための優れたヒント集だ。誤った知識に惑わされないために、そしてより良い睡眠を得るために、本書をぜひ一読していただきたい。

著者

三島 和夫(みしま・かずお)
1963年、秋田県生まれ。医学博士。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神生理研究部部長。1987年、秋田大学医学部医学科卒業。同大精神科学講座講師、同助教授、2002年米国バージニア大学時間生物学研究センター研究員、米国スタンフォード大学医学部睡眠研究センター客員准教授を経て、2006年6月より現職。日本睡眠学会理事、日本時間生物学会理事、日本生物学的精神医学会評議員、JAXAの宇宙医学研究シナリオワーキンググループ委員なども務めている。これまで睡眠薬の臨床試験ガイドライン、同適正使用と休薬ガイドライン、睡眠障害の病態研究などに関する厚生労働省研究班の主任研究者を歴任。『8時間睡眠のウソ。 日本人の眠り、8つの新常識』(川端裕人と共著、日経BP社)、『不眠の悩みを解消する本 満足のいく眠りのための正しい方法』(法研)、『レコーディング快眠法』(朝日新聞出版)、『睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン』(編著、じほう)などの著書がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    眠気の強さはある程度までいくと頭打ちになるが、認知機能は睡眠不足であればあるほど低下してしまう。
  • 要点
    2
    若者は生理的に早寝早起きが難しく、多少の寝坊を許容したほうがパフォーマンスの向上が期待できる。
  • 要点
    3
    人間には「朝型」と「夜型」の体質があり、夜型体質の人間が早起きを継続的にするのは至難の業である。
  • 要点
    4
    寝る直前に体を温めることで、熟眠効果が期待できる。特に適度な入浴や運動は効果的である。

要約

【必読ポイント!】 睡眠時間と現代社会

眠気がなくても認知能力は下がっている

適切な睡眠時間は、個々人の遺伝や環境のバランスで決まってくる。健康な生活を送るために最低限必要な睡眠時間の個人差は2時間程度だが、実際の睡眠時間には3時間台から10時間台まで、7時間以上の開きがある。この多くは、眠気に対する耐性の個人差から生じている。睡眠を我慢することが強いられることの多い現代社会は、持続可能な健康という観点から考えると、決して望ましいものとはいえない。なぜなら、眠気はある程度強くなると頭打ちになるが、認知機能は睡眠時間の短さに応じて、際限なく低下してしまうからである。

朝起きてから16時間以上経過すると、眠気にかかわらず、人間の注意力やパフォーマンスは一気に低下してしまう。これは酒気帯び運転で検挙されるレベルを大幅に超える。さらに、少し寝足りない日々が1、2週間続くだけで、徹夜をした時以上にダメージを受けてしまう。6時間睡眠ですら、10日間を超えると徹夜明けと同じレベルにまで認知機能が低下してしまい、4時間睡眠であれば、2週目には3晩連続の徹夜と同等程度のパフォーマンスになるという。

加えて、睡眠不足が慢性化していると、眠気をうまく自覚することができなくなってしまい、中長期的には心筋梗塞や脳出血のリスクを増大させることにも繋がってしまう。睡眠不足の「金利」は悪徳業者並みに膨れ上がると心得る必要がある。

若者は世界的に夜型傾向
Wavebreakmedia/iStock/Thinkstock

睡眠時間は年代によっても変動する。なかでも、高校生から大学生にかけての思春期は、最も夜型傾向が強まるという。米国小児科学会は、10代の若者に対し、早寝早起きではなく寝坊を勧めている。思春期は生理的に早寝早起きが難しい年代であり、努力だけでは限度があるため、登校時間を遅くするなど、今の制度を変更するべきと提言しているのである。実際、始業時間が早い

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要約公開日 2016.05.05
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