適切な睡眠時間は、個々人の遺伝や環境のバランスで決まってくる。健康な生活を送るために最低限必要な睡眠時間の個人差は2時間程度だが、実際の睡眠時間には3時間台から10時間台まで、7時間以上の開きがある。この多くは、眠気に対する耐性の個人差から生じている。睡眠を我慢することが強いられることの多い現代社会は、持続可能な健康という観点から考えると、決して望ましいものとはいえない。なぜなら、眠気はある程度強くなると頭打ちになるが、認知機能は睡眠時間の短さに応じて、際限なく低下してしまうからである。
朝起きてから16時間以上経過すると、眠気にかかわらず、人間の注意力やパフォーマンスは一気に低下してしまう。これは酒気帯び運転で検挙されるレベルを大幅に超える。さらに、少し寝足りない日々が1、2週間続くだけで、徹夜をした時以上にダメージを受けてしまう。6時間睡眠ですら、10日間を超えると徹夜明けと同じレベルにまで認知機能が低下してしまい、4時間睡眠であれば、2週目には3晩連続の徹夜と同等程度のパフォーマンスになるという。
加えて、睡眠不足が慢性化していると、眠気をうまく自覚することができなくなってしまい、中長期的には心筋梗塞や脳出血のリスクを増大させることにも繋がってしまう。睡眠不足の「金利」は悪徳業者並みに膨れ上がると心得る必要がある。
睡眠時間は年代によっても変動する。なかでも、高校生から大学生にかけての思春期は、最も夜型傾向が強まるという。米国小児科学会は、10代の若者に対し、早寝早起きではなく寝坊を勧めている。思春期は生理的に早寝早起きが難しい年代であり、努力だけでは限度があるため、登校時間を遅くするなど、今の制度を変更するべきと提言しているのである。実際、始業時間が早い
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