心の不調や、子どもとの関係に悩んでいる人の中にも、悩みを掘り下げていくと、夫婦関係の問題が根本にあるという場合が多い。離婚率が上昇している現代、パートナーとの関係に何かしら悩みを持っている人は非常に多いといえる。夫婦のすれ違いを解消するためのカギは、「愛着スタイル」や「自己愛」「怒りのタイプ」など、人それぞれの特性にある。自分と相手がどんなタイプなのかという視点で、相手との関係性を見つめ直せば、解決の糸口が見えてくるだろう。
人と人とが結びつきを持つときには、オキシトシンというホルモンが働いていることがわかっている。オキシトシンには、親密さを深めたり、相手の気持ちへの共感を高めたり、不安やストレスを軽減したりする働きがある。人間だけでなくほかの哺乳類にも備わっており、「愛着」を形成する生物学的なしくみだといえる。
幼い時から安定的に愛情を受けて世話をされていた場合には、愛着のしくみは安定する。逆に、幼い時に受けた愛情や世話が不十分であったり、傷つけられた経験が度重なったりすると、愛着のスタイルが不安定になる。そして、前者を愛着スタイルの「安定型」、後者を「不安定型」と大別できる。愛着スタイルが「不安定型」のまま大人になると、パートナーとの関係や子育てにおいて、思いやりがもてない、厳しすぎる、不安やストレスを抱えるなどの困難を抱えやすい。
また、「不安定型」の中にも2タイプあり、人と親密な愛情を築くのが苦手な「回避型」と、逆に過剰な結びつきを求めるが裏切られたり見捨てられたりすることに強い不安を抱く「不安型」に分けられる。とりわけ「不安型」は、幼少期において、気まぐれにかわいがられたり突き放されたりと、むらのある愛情の注がれ方をしている場合が多い。
「回避型」と「不安型」の反応はあらゆる面で正反対なので、それぞれのタイプの人が夫婦になり、何かのきっかけですれ違いが生まれると、溝がどんどん深くなってしまう。たとえば、子育てのことで悩んでいる「不安型」の妻が、自分の気持ちに共感を寄せてほしい一心で夫に悩みを相談したとする。すると、「回避型」である夫は、人と情緒的なつながりをもつことが苦手であるため、妻の話を受け流してしまう。それどころか、「回避型」は自分の苦しさについては表に出さないために、ストレスをため込みがちだ。このように、愛着スタイルのズレが、互いに不満を募らせる原因となってしまう。そうならないためには、互いの愛着スタイルの違いに対する理解が不可欠なのである。
愛着スタイルのほかにも、夫婦関係のほころびを繕うカギとして「自己愛」というキーワードがある。「自己愛」とは、成熟を遂げることで自信を育み、他者を敬う気持ちや志を実現する力の源泉にもなる、自分を大切にするために必要な能力だと考えられている。
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