集中力が湧き出す泉は、前頭葉にある。前頭葉には、「ウィルパワー」という、思考や感情をコントロールする力が備わっている。このウィルパワーは総量に限りがあり、集中力を使うたびに少しずつ消耗していく。その一方で、良い睡眠やエネルギー源となる食事を心がけると、補給できる。また、ウィルパワーの出どころは1つしかないため、仕事でウィルパワーを消耗すると、プライベートでもその影響が出てしまうのだ。
集中力の源であるウィルパワーを高めるには、「ウィルパワーを増やす」「ウィルパワーの消費量を節約する」という2つの方法がある。
まず1つ目、ウィルパワーを増やす方法について解説する。ある社会心理学者は、学生を3つのグループに分け、それぞれに「2週間姿勢に気をつけて生活をする」「2週間食べたものを記録する」「2週間前向きな気持ちを維持する」という指示を出す実験を行った。すると、「2週間姿勢に気をつけて生活をする」ことに取り組んだグループが良い成績をとったそうだ。
この結果から、日頃、無意識に行っている行為を「やらないようにすること」で、集中力を発揮できることがわかる。姿勢に意識を向ける機会は少なく、気がつけば猫背になっていたり、肘をついていたりするだろう。それを意識的に直すには、想像以上の集中力を要する。そのため、無意識の行動を客観的に観察し、改める行動をくり返せば、ウィルパワーを強化できる。これを「セルフモニタリング効果」と呼ぶ。また、利き手とは逆の手で歯磨きをする、ドアの扉を開ける、パソコンのマウスを使うなどでも、同等の効果を得られる。
次に、2つ目の「ウィルパワーの消費量を節約する」方法について述べていく。大事なのは、集中力を使う作業を習慣化することである。人間の脳は、「何かをやる」ときだけでなく、「何かをやらない」「何かをしたいと望む」といった選択や判断をするときにも、集中力を使うため、ウィルパワーも減っていく。例えば、「朝食は何を食べるのか」「メールの返信をすぐにすべきか」といった些細な判断においてさえも、ウィルパワーを浪費してしまう。
すると、人間は決断を先延ばしするようになる。しかし、先延ばしによって、無意識に「気にした状態」が続き、ウィルパワーがいっそう消費されてしまう。こうした状況を回避するには、即決できる仕組みをつくり、行動を習慣化させることが重要だ。
このように、ウィルパワーの消耗を減らし、トレーニングすることで集中力を高めることができる。
「集中力=ずっと続くもの」だと思い込んでいる人はいないだろうか。実は、人間の脳は集中を持続させないようにできている。なぜなら、敵にいつ襲われるかわからない野生時代においては、多方面に注意を払えるほうが好都合であり、その本能が今も残っているからだ。
集中力が高い人は、この持続しない性質を逆手にとり、あらかじめ時間を短く区切って、短期間の集中状態をくり返している。「もうちょっとやりたかった」というところで仕事や勉強をあえて打ち切ることで、疲れが残りにくくなり、モチベーションを持続できる。これを「焦らし効果」と呼ぶ。仕事や勉強のスピードを速くしたいのならば、自身の気持ちを上手に焦らすことがポイントである。
また、集中力は時間がいくらでもあるときよりも、制限のある状態のほうが高まっていくと言われている。
3,400冊以上の要約が楽しめる