一般的に読書には、3つの誤解がある。
まず、速読に関する誤解。「読書を好きになるには、本を速く読む力が必要。速く読めるようになれば読書量が増え、人生に役立つ読書ができるようになる」というものだ。
次に、多読に関する誤解。「本好きの人は、たくさんのジャンルの本を同時並行でたくさん読んでいる。多読するから興味が広がり、読書の習慣が途切れないのだ」。
最後に、選書に関する誤解。「いい本を選んで読むこと。それが最も効率が良くて、身につく読書法に違いない」である。こうした思い込みが、「本を役立てるための読み方」を妨げている。
要約では、これら3つの誤解のうち、速読の嘘を取り上げる。
科学的には、読むスピードを上げると内容の理解度はむしろ下がること、目の動きや周辺視野は読むスピードにさほど関係がないことがわかっている。つまり、テキストを写真のように眺める「速読」をしても、本の内容はほとんど頭に残らないのだ。
速読にかわって著者がすすめるのは、読む本や読む箇所を減らす「スキミング=拾い読み」である。まず、表紙をスキミングする。そこに書かれたタイトルとキャッチコピー、帯に書かれた紹介文をチェックして、その本のメインテーマを把握しよう。
次に、目次だ。目次には本の構造や骨組みが書かれているので、目次を眺めることで内容の理解度は格段に上がる。
最後に、どこか1つの章を選んで拾い読みする。どの章でもかまわないが、特におすすめなのは本のど真ん中の章だ。本の冒頭には、読者を惹きつける内容が盛り込まれていることが多く、終盤もまた力が入っていることが多い。だから、ど真ん中の章をスキミングして興味を引かれるようなら、その本はあなたにフィットしている可能性が高いのだ。
スキミングをしてみて、難しすぎると感じられたり、逆にすでに知っている内容が多かったりするようなら、その本をそれ以上読む必要はないだろう。
章の本文をスキミングするときは、文章の「構造」に注目するとよい。ある見出しの導入の部分と、最後の結論の部分を重点的に読んでいくのだ。なぜなら、要点は導入と結論を読めばつかめるものだからだ。結論部分は、「しかし」や「つまり」などの接続詞の後ろに書かれている場合が多いので、目安にするといいだろう。
何度も熟読したいような素晴らしい本は、スキミングの対象ではない。そうした本はむしろ繰り返し読むべきだ。スキミングによって1冊の本の中に混在している重要な箇所とそうでない箇所を見分け、役に立つと思う箇所を集中的に読むようにしよう。
知識を得るために本を読むときには、(1)本を読む準備をする、(2)本の読み方を知る、(3)本から得た知識をアウトプットするの3つを意識するとよい。
これら3つのうち最も重要なのは、本を読む前の準備である。読む準備に時間をかけることで、速く読めるようになり、効率的な読書ができる。準備が読書の成否を左右するといっても過言ではない。
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