決定版 FinTech
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金融革命の全貌
決定版 FinTech
出版社
東洋経済新報社

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出版日
2016年05月26日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

フィンテック(FinTech)という言葉を目にしたとき、思い浮かべるものは人によって様々だ。これはフィンテックという言葉のさす領域が実に幅広く、多岐に渡っていることを意味する。フィンテックはまだ定義もあいまいで、なじみのないサービスも多い。

しかし、これからの社会において、フィンテックが私たちの生活に密接に関わってくるのは間違いない。もはや、「知らない」ではすまされない時代がやってきているのだ。まだ世の中に根付いていない今だからこそ、しっかりとフィンテックについての知識を身につけ、金融・情報リテラシーを高めておく必要がある。

もっとも、私たちはすでに、知らず知らずのうちにフィンテックの恩恵を受けている。たとえば、Amazonや楽天などでネットショッピングをするときの決済サービスや、オンライン証券などがそうだ。本書では、すでに幅広く使用されているこういったサービスはもちろん、これから世に出る機会を虎視眈々と狙っているベンチャー企業のサービスに至るまで、わかりやすく紹介されている。これからフィンテックについて学びたいと思っている人にとっては格好の入門書となるだろう。

フィンテックは、今まさに金融業界にイノベーションを起こし、世界を大きく変えようとしている。ぜひ本書を通してフィンテックについて理解を深め、進化する金融サービスを活用していっていただきたい。

ライター画像
山下あすみ

著者

加藤 洋輝(かとう ひろき)
NTTデータ経営研究所 マネジャー
金融戦略コンサルティング部門 金融政策コンサルティングユニット。2004年東京理科大学大学院工学研究科経営工学専攻修了、同年NTTデータ入社。金融分野における企画業務に従事。
2015年よりNTTデータ経営研究所にて、事業戦略の立案や新規ビジネス創出等のコンサルティングに従事するほか、地方創生や地域活性化をキーワードに自治体の支援に取り組む。
2014年度静岡大学非常勤講師。

桜井 駿(さくらい しゅん)
NTTデータ経営研究所 コンサルタント
金融戦略コンサルティング部門 金融政策コンサルティングユニット兼デジタルコグニティブサイエンスセンター DCSマーケティング推進室。2012年に大学卒業後、みずほ証券株式会社を経て現職。
金融機関の新規事業開発・事業戦略策定、業務プロセス改革等のほか、人工知能やロボティクス、IoT、データサイエンス、脳科学を活用した金融分野の新規サービス開発・マーケティング支援に従事。国内外のスタートアップ企業動向を得意とし、大企業によるオープンイノベーション支援にも取り組む。

本書の要点

  • 要点
    1
    フィンテックとは、ITを駆使した、これまでにない新しい金融サービスのことだ。金融サービスの選択肢はかつてないほど広がっている。
  • 要点
    2
    フィンテックには、ビッグデータや人工知能など、最新の技術が使われており、融資や決済などの規制分野だけでなく、仮想通貨のような、これまで存在していなかった領域をも生み出している。
  • 要点
    3
    フィンテックが与える影響は金融機関だけにとどまらず、私たち消費者の生活にも大きく及ぶ。一人ひとりが金融や情報のリテラシーを高め、上手にフィンテックを取り入れていくことが重要だ。

要約

フィンテックとは

PayPalがあたえた影響は大きい
Devrimb/iStock/Thinkstock

フィンテックは、金融(ファイナンス)と技術(テクノロジー)という言葉を掛けあわせた造語であり、使われ方や文脈によって様々な意味を持つが、本書では「金融とITの融合によって生まれた、新しい金融サービス」と定義し、これを提供する企業を「フィンテック企業」と呼ぶ。

フィンテックの起源には諸説あるが、なかでも1998年のPayPalの創業は、非常に重要な出来事として位置づけられている。当時、様々なインターネットサービスが誕生しており、それに伴うオンライン上の決済の必要性が生まれたことで、新しいかたちの決済サービスが誕生したのだ。

PayPalの出身者たちがその後、テスラモーターズ、YouTube、LinkedInなどを創業していることからもわかるように、PayPalの成功はフィンテックだけでなく、シリコンバレー全体にとっても大きな影響をあたえた。

多様なフィンテックサービスの登場

現在、日本でフィンテックサービスの代表例としてあげられているのが、家計簿アプリや、お金の貸し手と借り手をマッチングするソーシャルレンディングサービスである。

家計簿アプリは、日本でも定着しつつある情報管理サービスであり、Money ForwardやZaimといったものが有名だ。一方、ソーシャルレンディングは、既存の金融機関からは融資が受けられないような層にも融資を提供するというサービスで、日本ではmaneoという企業がサービスを提供していることで知られている。

その他の分野だと、「送金」「投資」「業務支援」の領域は注目すべきである。フィンテック企業はこれらの領域において、既存の金融サービスに替わる新しいサービスを提供している。

日本はもともとフィンテック先進国だった

「金融とITの融合によって生まれた、新しい金融サービス」という意味では、実は日本はフィンテック先進国である。たとえば、マネックス証券など、低コストのオンライン証券サービスが誕生したのは1999年のことであり、ソニーやセブンイレブンなど、他業種がインターネット専業銀行に参入したのも2001年と早い時期であった。

しかし、日本人は商品やサービスを選択する際、ブランドで選ぶ傾向が強い。そのため、こういった新たなサービスを提供していたのは、スタートアップ企業ではなく、既存の大企業がほとんどだった。また、そもそも日本では、融資や決済といった規制分野の場合、スタートアップ企業は入ることができない。さらに、日本では既存の金融サービスの質が高かったため、ユーザーはもともとあまり強い不満を抱いていなかった。以上のような理由から、アメリカのように、スタートアップ企業がこれまで出てこなかったと考えられる。

【必読ポイント!】 ビットコインとブロックチェーン

ビットコインという革新
CiberDan/iStock/Thinkstock

フィンテックの多くは、ITを利用することで、既存の金融サービスを新たな形で提供するというかたちをとっている。これに対し、ビットコインは全く新しいかたちの金融商品だ。「1975年のパーソナルコンピューター、1993年のインターネット、それに続くイノベーションが2014年のビットコインだ」と言われるくらい、ビットコインはフィンテックのなかでも画期的なのである。

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要約公開日 2016.10.05
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