現在、日本の多くのメディアは、「Internet of Things:IoT」を「モノのインターネット化」と訳している。このわかりにくい翻訳が、IoTに対する理解を妨げているのではしないだろうか。本書では、IoTを「モノ、ヒト、環境など、現実世界の状態や変化をセンサー搭載機器によってデータ化し、ネットワークを通じてサーバなどにそのデータを収集し、その分析結果を現実世界にフィードバックすることで価値を創出する仕組み」と定義している。
様々なビジネスを支える仕組みであるIoTは、「ヒト・モノ・環境」「インプットデバイス」「データ」「コネクション」「サーバ」「アナリティクス」「アクチュエーションデバイス」の6つで構成される。
まず、IoTは現実世界の状態や変化をセンサーで検知し、それをデータ化するところから始まる。そのため、現実世界を構成するヒト・モノ・環境はすべて、IoTの構成要素である。
次に、インプットデバイスとは、現実世界の状態や変化を検知するセンサーなどを搭載し、ネットワーク接続機能を持った機器である。
データとは、インプットデバイスから得られる様々な情報であり、IoTの仕組みのなかでも主要な構成要素である。
コネクションとは、データをインターネットの向こう側に送る際の経路である。
サーバは、データをデータベースに蓄積し、各種アプリケーションを使って新たな知見を発見したり、効率的にデータを分析したりする。
そしてアナリティクスでは、サーバに蓄積されたデータを分析し、現実世界の状況や変化を可視化し、問題を発見し、トラブルを事前予測し、問題の解決方法を提示する。ここでは、必要に応じて機械学習などに代表される人工知能の技術を活用する。
本書では、IoTという仕組みを活用したビジネスをIoTビジネス、IoTビジネスで提供するモノやサービスをIoTソリューションと呼んでいる。
IoTビジネスの範囲は既存業界の境界線を越えるものである。そして、あるIoTソリューションは隣接する別のIoTソリューションと連携することで、さらに大きな価値を生みだす可能性がある。こうした既存の業界の枠を越えたIoTビジネスでチャンスを掴むには、幅広い視点でモノやヒトのネットワークを俯瞰する必要がある。そこで役立つのがIoTランドスケープである。
IoTランドスケープは、「ヒト=ウェアラブル」「家庭=コネクテッド・ホーム」「車両=コネクテッド・ビークル」「都市=スマート・シティ」「商業=スマート・コマース」「産業=スマート・インダストリー」という6つの領域で構成される。
IoTビジネスの企画にあたっては、既存事業や新規事業がIoTランドスケープのどこに位置するのか、その内側や外側にどのようなモノやヒトのネットワーク、あるいはIoTビジネスが存在するのかを把握しておく必要がある。
スマート・シティは、IoTランドスケープを構成するものの一例である。この領域では、様々な公共サービスを実現するためのIoTソリューションが計画されており、一部はすでに実用化されている。
スペインのバルセロナでは、市内全域をカバーするWi-Fi接続型のスマート・パーキングメータが利用されている。これにより、駐車可能なスペースの情報が利用者にリアルタイムで提供され、スマートフォン上で駐車料金の支払いも可能になっている。
世界45カ国以上で使用されているビックベリーソーラーは、太陽光発電機能を有し、通信機能を搭載した二酸化炭素を排出しないスマートなゴミ箱である。
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