FinTechとは金融(Finance)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語である。両者の融合が進むことにより、金融業界の構造は変化し、新たな金融サービスが次々と誕生した。具体的には、資産運用、会計、融資、決済、保険、不動産といった領域で、革新的なサービスが生まれている。また、それらを安全かつ確実に利用するためのインフラサービスも充実してきている。
とはいえ、FinTechの概念自体はそこまで目新しいものではない。そもそも、金融はテクノロジーの進化によってこれまでも発達してきた産業である。FinTechという概念が有名になったのは、2014年にFinTech企業と分類されるスタートアップが、全世界で120億ドルを調達したことがきっかけだった。この額はそれまでの3~5倍の規模に相当しており、既存の金融サービスがテクノロジーによって大きく変わるのではないかという印象を人々に植えつけた。
さらに、時代背景も後押しした。以前に比べ、技術の開発コストが下がっており、さらには開発したサービスを普及させるコストも下がっていた。また、ユーザーの目が肥えてきており、サービスに対する期待も高くなっていた。
サービス開発コストと普及のコスト低下、そしてユーザーの意識の変化は、様々な業界内の産業構造を変化させてきており、より便利でコストの低いサービスが次々と生み出されている。一方、金融業界はこれまで、その波にうまく乗ることができていなかった。これは金融業界が、「お金」という非常に大事なものを扱う規制産業であり、情報漏えいなどのミスが絶対に許されない業界であるためである。
しかも、金融商品やサービスの内容は目に見えるものでないことから、ユーザー目線で分かりにくいという事情もあった。分かりにくい商品は通常、ネット販売との相性が良くないため、どうしてもプロに直接相談することを人々は選びがちになる。
しかし、どの金融商品やサービスを選ぶかで、人生は大きく左右されるものである。手軽に金融サービスの比較検討ができるようになれば、ユーザーはより適したサービスを能動的に選ぶようになるはずであり、金融機関も従来のやり方だけでは、ユーザーの獲得が難しくなるだろう。
FinTechを推進するべきだという声は、日本政府からも上がってきている。「投資の促進」および「新たな市場の創出」は、安倍政権が提言するアベノミクス「3本の矢」の第3の矢「持続的な経済成長」を実現するための重要な部分を占めている。これらの分野を促進するうえで、FinTechは大きく貢献できると考えられる。
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