本書の要点

  • 他人とかかわりながら生きているかぎり、不安やストレスからは逃れられないが、あまり悩まず、相手をきちんと見きわめることが大事だ。

  • 忙しく時間に追われるのではなく、自分が主体となって時間を自在に使うためには、いま目の前にあることだけに集中する以外にない。

  • 寝る前の習慣を変えて自分の心地よいことをしたり、早朝に起きて近くを散歩してみたり、呼吸を整えたりすることで、心の中のストレスをコントロールすることができる。

1 / 5

仕事の悩みを「見切る」「区切る」

きちんと見る、きちんと聞く

portostock/iStock/Thinkstock

他人の考えていることが気になる。誰にでも少なからずそんなことはある。他人とかかわりながら生きているかぎりそこから離れることはできないが、他人の考えをいくら考えても、気にしてみても、それが変わることはありえない。考えることは意味がなく、ムダなのである。仕事でかかわる相手が心ないビジネストークをしてくることもあるだろう。しかし、心に思っていることは語る言葉の調子や表情に必ずあらわれてくる。表情をよく観察し、口調をよく聞くことでだんだんとそれが見えてくる。言葉の裏をあれこれ考えるより、そこを見きわめることが大事だ。

しんどさは「区切る」

仕事にしんどさを感じやすく、それがストレスになる人は、自分で自分にご褒美を用意するのがいい。たとえば、仕事が一段落したら、自分が楽しめること、好きなこと、心地よいことをする。そうしてご褒美を用意すると、心が大きな仕事を終えた区切りと認識し、気分が落ち着いてくる。ご褒美でしんどさから解放されたら、次の仕事にも新たな意欲とエネルギーを持って取り組んでいけるはずだ。仕事には当然期限があるが、あえて自分のなかで期限を短縮し、余った日を休みにしてしまうのがおすすめだ。むずかしいことかもしれないが、自分自身が期限の短縮という目標を決めることが、大きなモチベーションとなるだろう。

「その場」で、輝く

「この職場では自分の力を発揮できていない」「あいつはラクな仕事をして高い評価を得ている」と考えてしまうことは誰にでも少なからずある。しかし、自分が活躍できる場所は誰かが用意してくれるわけではない。自分がいるその環境を、自分が活躍できるものに変えていくしかないのである。自分を輝かせるには、自分だけの居場所をつくること、言い換えれば、自分を仕事やプロジェクトにとって必要不可欠な人間にすることだ。禅語には「随所に主と作れば、立処みな真なり」というものがある。どんな場所でも自分が主体になったら、そこは活躍の場となり、自分が輝いてくる、という意味だ。どんな仕事であっても、自分なりの工夫を加えていくことで自分ならではの色合いを出すことができる。

2 / 5

他者への苛立ちを「手放す」法

感謝という「妙薬」

会社の中には「ソリが合わない」という相手も一人や二人はいるだろう。対等な相手であればソリが合わないというこちらの感情は態度にもあらわれているかもしれない。同僚だからこそマイナス感情を払拭するのは容易いことではなく、それがさらに大きなストレスとなる。しかし、「ソリが合わない」ということの実相は、多くの場合「あいつはそういうヤツなのだ」と決めつけてしまっていることにある。禅では「あらゆるものには仏性がある」と考える。決めつけを外し、おたがいのなかに仏性(やさしさ、思いやりなど)を認め合うということだ。相手の立場を尊重し、ほめ合う習慣、そして感謝の言葉が「妙薬」となる。

「そんなものだ」

ulkas/iStock/Thinkstock

現在の会社組織は昔に比べて結果が求められ、数値目標を達成しなければ上からのプレッシャーがかかる。そんな組織内事情の中で、「同僚に手柄を横取りされた」というようなケースも少なくない。横取りの中身はさまざまだと思われるが、ゆき着くところは「人間不信」である。「個人主義」といえば聞こえは悪くないが、それがどんどん人と人とのつながりを希薄にし、うつの増加の背景になっているのはたしかだろう。同僚に理不尽なおこないをされたときには、本来なら詰め寄ってしかるべきかもしれないが、禅ではどんなに理不尽だと感じても、気分が落ち込んでも「そんなものだ」と受けとめ、そのうえで、心を前向きに転じていくことが大事だ、と考える。理不尽な出来事自体は、抗議しようが怒ろうが変わらないので、「そんなものだ」と受けとめる。そして、相手と一線を画したところに自分の心を置くというのは、潔く、相手よりはるかに器の大きいことである。

丁寧に言葉を扱う

誠意のこもっていない上っ面の言葉をかけられることほど、心をザワつかせるものはない。たとえば、部下からのわざとらしいご機嫌伺いは、部下の本音が透けて見え、耳障りになる。ご機嫌を伺ってくるその部下の存在がうっとうしくなり、かかわること自体がストレスになる。

もっと見る
この続きを見るには...
残り2543/4304文字

4,000冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2017.04.18
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.

一緒に読まれている要約

「聞き方」を変えればあなたの仕事はうまくいく
「聞き方」を変えればあなたの仕事はうまくいく
上阪徹
ムーブ ユア バス
ムーブ ユア バス
ロン・クラーク橘明美(訳)
「疲れない身体」をいっきに手に入れる本
「疲れない身体」をいっきに手に入れる本
藤本靖
スタンフォード大学 マインドフルネス教室
スタンフォード大学 マインドフルネス教室
スティーヴン・マーフィ重松坂井純子(訳)
スマホの5分で人生は変わる
スマホの5分で人生は変わる
小山竜央
1分で頭の中を片づける技術
1分で頭の中を片づける技術
鈴木進介
世界のエグゼクティブを変えた超一流の食事術
世界のエグゼクティブを変えた超一流の食事術
アイザック・H・ジョーンズ白澤卓二(監修)
老いる家 崩れる街
老いる家 崩れる街
野澤千絵

同じカテゴリーの要約

ハーバード、スタンフォード、オックスフォード… 科学的に証明された すごい習慣大百科
ハーバード、スタンフォード、オックスフォード… 科学的に証明された すごい習慣大百科
堀田秀吾
悩まず、いい選択ができる人の頭の使い方
悩まず、いい選択ができる人の頭の使い方
小川仁志
なぜ、あの人との会話は嚙み合わないのか
なぜ、あの人との会話は嚙み合わないのか
米澤創一
1つの習慣
1つの習慣
横山直宏
精神科医が教える! 心がスッと軽くなる93の処方箋
精神科医が教える! 心がスッと軽くなる93の処方箋
樺沢紫苑
社会は、静かにあなたを「呪う」
社会は、静かにあなたを「呪う」
鈴木祐
DIGITAL STANCE スマホに支配されない生き方
DIGITAL STANCE スマホに支配されない生き方
ピョートル・フェリクス・グジバチ
不機嫌を飼いならそう
不機嫌を飼いならそう
藤野智哉
時間・自己・幻想
時間・自己・幻想
マルクス・ガブリエル大野和基(インタビュー・編)月谷真紀(訳)
不条理な世の中を、僕はこうして生きてきた。
不条理な世の中を、僕はこうして生きてきた。
宮下友彰
無料