自分の会社が1%値上げに成功した場合と、売上数量が1%増加するよう打ち手を実行した場合では、どちらがどのくらい営業利益が増加するかご存じだろうか。あるいは売上数量の増加ではなく、1%の費用減でも構わない。当然、これらの施策を実行するには投資や作業量も必要となる。
手に入れられる果実の大きさから優先順位を述べると、圧倒的に「価格を1%上げる」ことの成果が大きい。これは数多くの学者やコンサルタント会社が繰り返し証明してきたことだ。
しかし、ドイツを基盤とする国際的なコンサルタント会社、サイモン・クチャー&パートナーズがアジア、欧州、米国の3904社に対して行った2011年のサーベイ結果によると、日本は価格競争に明け暮れ、企業が利益志向でない価格設定を行っているという、世界でも稀な市場であることが明らかとなっている。調査によると、高い収益を得るために重要なことを「売上の増加」と考える日本企業は91%である一方で、「価格設定において利益を最も重要視している」と答えた日本企業は33%にとどまる。このように日本企業には売上重視の姿勢が顕著に表れている。
あなたの会社でプライシングが上手でないとしたら、それには4つの理由が想定されると著者は語っている。
1 永いデフレ経済下の経験から値上げが不可能と思い込んでいる
2 価格設定において、①自社コストに必要な利潤を加えて決める、②自社対競合商品の強弱で調整する、③顧客のいいなり、という3つのうち慣習的にどれかのパターンでしか想定していない
3 価格の決定権を持つ責任者が不明確
4 プライシングを科学し、実行するノウハウと仕組みの欠如
そこで本書では『顧客価値創造プライシング』という概念を紹介している。顧客価値創造プライシングとは、同一商品でも異なるセグメントのお客様には、時と場合によって感じていただける価値が異なるため、それぞれに価値を創造し、最適価格をつけて儲ける手法である。
利益を上げるためにはまず、「誰をお客様にするか(顧客のセグメンテーション)」を考えるべきである。現在の顧客のニーズは多様化している。もっと言えば、一人の人間のニーズが時と場合によって多様に変化するようになっている。これによって心理的特性、行動特性を加味し、顧客を姓、年代、年収、家族構成、人種など、単なる数字の羅列としてでない人間の心理特性、購買行動特性に重点を置くことが肝要である。
そのため、マーケティングで成功するには、まず人間が何かを欲しくなる心のメカニズムを理解すること、つまり顧客ニーズとウォンツの理解が必要不可欠だ。
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