確率思考の戦略論

USJでも実証された数学マーケティングの力
未読
確率思考の戦略論
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USJでも実証された数学マーケティングの力
未読
確率思考の戦略論
出版社
出版日
2016年05月31日
評点
総合
4.3
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

「ビジネス書グランプリ2017」のマネジメント部門賞を獲得した森岡氏が世に放つ、渾身のマーケティング本。それが本書『確率思考の戦略論』だ。

著者はユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)に就任してからわずか3年間で、年間来場者数を700万人から1000万人に増やした、まさに凄腕のマーケッターである。前著『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』では、プロジェクトに成功をもたらしたマーケティング思考や、クリエイティブなアイデアの発想法について、惜しみなく公開されていた。ただ、実際にどのような手順を踏んでマーケティング戦略を立案・実行したのかまでは、明確には記されていなかった。

本書では、マーケティングのさらにディープなところにまで踏みこみ、マーケティング戦略を具体的に立案する過程が事細かに書かれている。また、共著者としてUSJのシニア・アナリストである今西氏が加わり、マーケティング理論をどう実践で使っていくべきなのかがわかりやすく解説されている。

数学が苦手な人でも問題なく読めるようにつくられているため、ビジネス規模の大小を問わず、すべてのビジネスパーソンに読むことをお薦めしたい一冊だ。本書を読めば、マーケティング理論をどのように現実のビジネスに活かすべきなのか、はっきりと見えてくるだろう。

著者

森岡 毅 (もりおか つよし)
1972年生まれ、兵庫県出身。神戸大学経営学部卒。96年、P&G入社。日本ヴィダルサスーンのブランドマネージャー、P&G世界本社(米国シンシナティ)で北米パンテーンのブランドマネージャー、ウエラジャパン副代表などを歴任。2010年にユー・エス・ジェイ入社。革新的なアイデアを次々投入し、窮地にあったユニバーサル・スタジオ・ジャパンをV字回復させる。12年より同社チーフ・マーケティング・オフィサー、執行役員、マーケティング本部長。著書に『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』(角川文庫)、『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』(KADOKAWA)。

今西 聖貴 (いまにし せいき)
1953年生まれ。大阪府出身。米国シンシナティ大学大学院理数部数学科修士課程卒業。水産会社を経て、83年、P&G入社。日本の市場調査部で頭角を現し、92年、P&G世界本社へ転籍。世界各国にまたがって、有効な需要予測モデルの開発、世界中の市場分析・売上予測をリードし、量的調査における屈指のスペシャリストとして長年にわたり世界の第一線で活躍。2012年、盟友・森岡毅の招聘によりユー・エス・ジェイ入社。現在シニア・アナリストとして活躍中。

本書の要点

  • 要点
    1
    ビジネス戦略の成否は確率で決まる。その確率を操作するためには、市場構造をただしく理解しなければならない。
  • 要点
    2
    市場構造を形づくっている「本質」は、プレファレンス(ブランドに対する相対的な好意度)にほかならない。
  • 要点
    3
    現実的な戦略を生みだすためには、目的達成のために必要な諸条件を変数として導きだし、そこに具体的な数値を当てはめていく必要がある。
  • 要点
    4
    数学マーケティングを実行するためには、組織文化そのものを変えなければならない。

要約

市場構造の本質

ビジネス戦略の成否は「確率」で決まる
tostphoto/iStock/Thinkstock

2015年10月、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)は175万人を集客し、東京ディスニーランド(TDL)の同月の来場者数(推計値約160万人)を抜いて日本一のテーマパークとなった。さらに、2010年では730万人だった年間来場者数が、2015年には1390万人となり、5年間で660万人も来場者数を増やした。

このV字回復ともいえる成功をもたらしたのは、「ハリー・ポッター」をはじめとした60以上の新規プロジェクトだった。市場構造や消費者の本質を理解したビジネス戦略に則って企画、実行されたからこその結果だった。

ビジネス戦略の成否は確率で決まる。だが、ビジネスの本質的な法則を理解すれば、その確率はある程度操作できる。コントロールしやすい領域とそうでない領域を見分け、経営資源をコントロールできる領域へと集中させることで、成功確率は劇的に高められるのだ。

「本質」はプレファレンスにある

成功確率の高いビジネス戦略を選ぶためには、市場構造を理解することが必要不可欠だ。著者がUSJの新規プロジェクトをことごとく成功に導けたのは、市場構造の理解に思考を集中させてきたからにほかならない。

市場構造とは、ある商品カテゴリーにおける、人々の意思・利害・行動すべてを勘案したうえでの業界全体の仕組みのことだ。そして、その市場構造を形作っている「本質」こそが、消費者のプレファレンス(ブランドに対する相対的な好意度)なのである。

それぞれの商品カテゴリーには、それぞれの市場構造がある。しかし、市場構造の本質そのものはどのカテゴリーでも変わらない。たとえば、「パンケーキ」「歯磨き粉」「図書館の本」の3つはそれぞれ異なるカテゴリーに属するが、プレファレンスにもとづいてカテゴリー構造が形成されているという意味では同じである。

また、購買行動を支配する法則も同様だ。どのカテゴリーでも、(1)消費者ひとりひとりが独自に購買決定をしている、(2)購入行動はランダムに発生している、(3)それぞれのカテゴリーに対してほぼ一定のプレファレンスを持っている、(4)プレファレンスの高いものはより高頻度で購買される、という4つの法則が見られる。

経営資源を集中すべきはプレファレンスである
grinvalds/iStock/Thinkstock

カテゴリーの市場構造はプレファレンスによって決定されると言っていい。なぜなら、どれくらいの割合の人がそのカテゴリーを購入するのか(浸透率)も、そのカテゴリーの商品を何回購入するのか(購入回数)も、そのカテゴリーに対する消費者のプレファレンスによって決まるからだ。まさに、「市場競争とは、ひとりひとりの購入意思決定の奪い合いであり、その核心はプレファレンス」というわけである。

プレファレンスを上げることは、シェアを上げることに等しい。シェアが上がると結果として売り上げが伸びるし、それ以上に会社のパフォーマンスを上げることにつながる。だからこそ、どの企業も消費者視点を最重視して、プレファレンスの向上に経営資源を集中させる必要がある。

【必読ポイント!】 戦略の本質とは何か

戦略の焦点は3つしかない

売上を決定づけるのは、自社ブランドに対する消費者のプレファレンスだ。しかし、それは「認知」と「配荷」によって制限を受けてしまうものである。そのため、売上を伸ばすためには、(1)プレファレンス、(2)認知、(3)配荷の3つを高めなければならない。

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要約公開日 2017.05.01
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