「プレゼンテーション」とは、もともと広告業界でクライアントに説明する時に使われていた専門用語だが、現在は、学校教育やビジネスの様々な場面で使われている。著者によると、「プレゼンテーション」は「一定の目的を達成するために行う自己表現」であり、「相手を説得して目的の言動を引き出すこと」である。
プレゼンテーションを成功させる3要素は、①Program(プログラム=内容)、②Presentation Skill(プレゼンテーションスキル=伝え方)、③Personality(パーソナリティ=人柄)である。プログラムは、目的や対象、時間などの条件を踏まえて、内容や構成を組み立てることである。伝え方は、聞き手の興味を惹き、しっかり理解してもらい、さらに行動に移してもらえるように、プレゼンテーションの内容を伝える技術である。また、人柄は誰が話すかを指す。話す人の印象は、プレゼンテーションの結果に大きな影響を与えるのだ。
多数の人を相手にするプレゼンテーションでは、これらの3要素に加えて、Preparation(プレパレーション=事前の準備・リハーサル)と、日頃のPractice(プラクティス=訓練)が必要になる。
プレゼンテーションスキルの改善や強化のためには、まず、自分の癖や傾向をつかむことが重要である。本書では、「理性―感性」の軸と、「言語量 多―少」の2軸で作成したマトリクスを使い、個人のプレゼンテーションの傾向を、「感性が豊かで、言語量が豊富なタイプ」「感性が豊かで、言語量が少ないタイプ」「理性的で、言語量が少ないタイプ」「理性的で、言語量が豊富なタイプ」の4タイプに整理している。
「感性が豊かで、言語量が豊富なタイプ」は、プレゼンテーションの傾向として、明るくノリがよい、話が冗長、だらだら思いつきで話すなどが挙げられる。このため、プレゼンテーションの構成を綿密につくることや、話の目的や着地点を常に意識すると良い。
「感性が豊かで、言語量が少ないタイプ」は、感覚的に物事をとらえがちで、考えや思いを言語化できない傾向にある。このため、相手にうまく説明できなかったり、話のつながりが不明になったりする。改善策として、具体例やデータを使って根拠を明確にすることや、順序を追って話すことを心掛けるべきだ。
「理性的で、言語量が少ないタイプ」は、合理的に判断し、必要なこと以外は発信しない傾向にある。プレゼンテーションでは無駄を省き、簡潔な説明をする傾向にあるものの、事務的で遊びがなく、無味乾燥なものになりやすい。このため、自分の経験をエピソードや具体例にして盛り込むことや、表情や声が暗くならないように心掛けるとよい。
「理性的で、言語量が豊富なタイプ」は、論理的に考え、メッセージを伝えるために言葉を惜しまない。プレゼンテーションは理路整然としており、丁寧で分かりやすいが、押し付けがましくなり、情報過多になることもある。改善策としては、相手のレベルにあわせて、必要に応じて情報量を加減することや、早口にならないように注意することが挙げられる。
アメリカの心理学者アルバート・メンラビアンによると、人の判断に影響を与えるのは、「外見などの視覚情報」が55%、「声や話し方などの聴覚情報」が38%、「話す言葉や内容などの言語情報」が7%だという。つまり、第一印象は、見た目と声で決まる。
個人が意識して改善できる見た目(外見)は、身だしなみである。身だしなみは、清潔感や品格があり、控えめにすることがポイントだ。クライアントの業界や業種によって評価される服装は異なるため、色合いは十分に検討して選ぶ。例えば、金融業界では落ち着いた色合いが好まれるが、広告やファッション業界はセンスが問われる仕事のため、地味な色合いでは評価が今ひとつになる可能性がある。
顔の表情も、見た目の重要な要素だ。
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