課長から部長、そして役員へ 戦略的に出世する技術

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課長から部長、そして役員へ 戦略的に出世する技術
出版社
かんき出版

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出版日
2016年12月12日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

会社勤めをしている方であれば一度くらいは、人事評価や昇進に対して理不尽さを感じたことがあるだろう。一方で、企業は利益を追求する組織であり、実際には至極合理的に動いている。企業が合理的に行動しているのであれば、それに伴う人事もロジカルな仕組みで決まっているはずだ。では、一部の例外を除き、異動や昇進はどのようなロジックに基づいて決定されているのだろうか? その答えを明らかにしたのが本書である。

著者は、平社員、主任・係長、課長、部長、役員とそれぞれの役職において、効果的に出世の階段をのぼるために必要な要素を経営学の視点から解説している。また、経営学の二大柱である戦略論・組織論、そしてマーケティング理論の見地から、異動や昇進がどのような論理、組織力学によって決定されているかが浮かび上がってくる。各章では、企業経営の文脈で経営学の理論の重要なコンセプトを端的に紹介し、その後個人のキャリアや人事に当てはめて解説するという流れになっており、読者は経営学の応用範囲の広さに度肝を抜かされるにちがいない。

また、経営学が発展してきたプロセスや経営学のポイントもわかりやすく解説されており、チャンドラーの組織論やドメイン戦略など、経営学のキーワードについても楽しく学ぶことができる。合理的に出世をするための技術と経営学の知識の両方を身につけられる、一粒で二度おいしい一冊である。したたかに戦略的な出世をめざすなら、読み逃し厳禁だ。

ライター画像
渡辺智美

著者

加谷 珪一(かや けいいち)
経済評論家・経営コンサルタント。
仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。
野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。大手ゲーム機メーカー、政府系金融機関などに対する各種のコンサルティング業務に従事。現在は、ビジネス、経済、マネーなど多方面の分野で執筆を行っており、多くの媒体で連載を持つ。出世の法則をまとめた人気サイト「出世の教科書」の運営も行っている。

著書に、『新富裕層の研究』(祥伝社新書)、『上司は「顧客」だと思いなさい』(河出書房新社)、『「教養」として身につけておきたい 戦争と経済の本質』(総合法令出版)、『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『稼ぐ力を手にするたったひとつの方法』(清流出版)、『億万長者の情報整理術』(朝日新聞出版)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    平社員のうちは、仕事の「効率化」に注力し、自分の属する組織のメカニズムを理解して、出世マネジメントを意識すべきである。
  • 要点
    2
    主任から課長までの中間管理職は、競争戦略・ドメイン戦略・資源戦略を自分自身に適用し、自分のシェアをいかに広めるかを考えると同時に、リーダーシップの本質を学ぶべきだ。
  • 要点
    3
    部長に昇進する過程においては、マーケティング理論を身につけ、社内で自分自身を効果的にブランディングする必要がある。

要約

平社員は仕事の効率が大切

経営学の基礎を出世に活かす

まずは、出世の基礎となる考え方を紹介していく。出世できる人、つまり仕事がデキる人は、効率よく働くことに長けている。効率化は経営学でも重要なテーマとされている。

テイラーが提唱した科学的管理法という概念は、生産現場での業務の効率化や無駄の排除に着目した考え方であり、経営学の基盤となっている。テイラーの考えに基づき、仕事を「標準化」し、効率よくこなすことでより高い成果を出すことが可能となる。例えば、仕事の最適なタイミングを心得ることで、まとまった時間を捻出し、生産性を向上できるのだ。

管理の概念を、もう少し広い範囲で明確化し、マネジメント自体を重要な業務と位置付けたのがファヨールである。ファヨールは企業活動を構成する6つの機能として技術活動・商業活動・財務活動・保全活動・会計活動・管理活動を挙げた。ファヨールの概念を自らの出世マネジメントに適用すると、やらなくてもいい仕事を見極めることができ、それらをできるだけ捨てることが大事だとわかる。そのうえで、重要度の高い仕事に集中して取り組むことで、評価につながる。

会社の組織を熟知した人が出世できる

組織によってビジネスの進め方は異なっている。出世したいなら、組織がどのようなメカニズムで動いているのかを理解しておくべきである。

米国の経営史家であるチャンドラーは、企業の組織変遷の研究をもとに、組織がどのようなメカニズムで決定されていくのかを明らかにした。そして、企業の戦略を最適化する形で企業形態が変化していくことを結論付けた。つまり、組織を理解することで企業の戦略がわかり、それに応じた出世の法則が見いだせるのである。

自らがめざすべき市場はどれ?
Violka08/iStock/Thinkstock

チャンドラーの業績をさらに発展させ、戦略論を展開したのがアンゾフである。アンゾフは、企業が選択すべき事業領域について、マトリックス上の横軸に新製品か既存製品かを、縦軸に新市場か既存市場かを据え、企業がとるべき4つの戦略を示した。それは、既存製品を既存市場で広める市場浸透戦略、新製品を既存市場に投入する製品開発戦略、既存製品を新市場に投入する市場開拓戦略、そして新製品を新市場に投入する多角化戦略である。

これらの市場戦略を、自分という商品に応用すると、市場浸透戦略は自分の部署での評価を得ること、製品開発戦略は同じ部署で仕事を変更すること、市場開拓戦略は他部署に異動して評価を得ること、そして多角化戦略は他部署で新しい仕事に挑戦し、成果をめざすことだと考えられる。このように、市場戦略を応用して出世の基本戦略を考えることが重要である。

主任・係長は戦略論への理解を深めよ

競争戦略の3項目を利用して優位に立て
Kenishirotie/iStock/Thinkstock

戦略論は、様々な研究を経て、競争戦略・ドメイン戦略・資源戦略へと分化していった。ここからは各戦略を出世にどう応用するのかを解説していく。

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要約公開日 2017.05.15
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