まずは、出世の基礎となる考え方を紹介していく。出世できる人、つまり仕事がデキる人は、効率よく働くことに長けている。効率化は経営学でも重要なテーマとされている。
テイラーが提唱した科学的管理法という概念は、生産現場での業務の効率化や無駄の排除に着目した考え方であり、経営学の基盤となっている。テイラーの考えに基づき、仕事を「標準化」し、効率よくこなすことでより高い成果を出すことが可能となる。例えば、仕事の最適なタイミングを心得ることで、まとまった時間を捻出し、生産性を向上できるのだ。
管理の概念を、もう少し広い範囲で明確化し、マネジメント自体を重要な業務と位置付けたのがファヨールである。ファヨールは企業活動を構成する6つの機能として技術活動・商業活動・財務活動・保全活動・会計活動・管理活動を挙げた。ファヨールの概念を自らの出世マネジメントに適用すると、やらなくてもいい仕事を見極めることができ、それらをできるだけ捨てることが大事だとわかる。そのうえで、重要度の高い仕事に集中して取り組むことで、評価につながる。
組織によってビジネスの進め方は異なっている。出世したいなら、組織がどのようなメカニズムで動いているのかを理解しておくべきである。
米国の経営史家であるチャンドラーは、企業の組織変遷の研究をもとに、組織がどのようなメカニズムで決定されていくのかを明らかにした。そして、企業の戦略を最適化する形で企業形態が変化していくことを結論付けた。つまり、組織を理解することで企業の戦略がわかり、それに応じた出世の法則が見いだせるのである。
チャンドラーの業績をさらに発展させ、戦略論を展開したのがアンゾフである。アンゾフは、企業が選択すべき事業領域について、マトリックス上の横軸に新製品か既存製品かを、縦軸に新市場か既存市場かを据え、企業がとるべき4つの戦略を示した。それは、既存製品を既存市場で広める市場浸透戦略、新製品を既存市場に投入する製品開発戦略、既存製品を新市場に投入する市場開拓戦略、そして新製品を新市場に投入する多角化戦略である。
これらの市場戦略を、自分という商品に応用すると、市場浸透戦略は自分の部署での評価を得ること、製品開発戦略は同じ部署で仕事を変更すること、市場開拓戦略は他部署に異動して評価を得ること、そして多角化戦略は他部署で新しい仕事に挑戦し、成果をめざすことだと考えられる。このように、市場戦略を応用して出世の基本戦略を考えることが重要である。
戦略論は、様々な研究を経て、競争戦略・ドメイン戦略・資源戦略へと分化していった。ここからは各戦略を出世にどう応用するのかを解説していく。
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