1971年、南アフリカ共和国の裕福な家庭で生まれたイーロン・マスクは、幼い時から本が大好きで、本を通して事実を知り、知識を吸収しようとする子供だった。そんなイーロンの姿勢と素養が彼の10年後の未来を切り開いていくとは、両親でさえ想像できていなかった。
イーロンは10歳の時に小遣いをためて、念願のパソコンを購入した。12歳の時には早くもソフトウェアを作り上げて500ドルで販売している。PCとの出会いは、のちのインターネット界での大成功につながったが、父親は「PCなんて大して役には立たない」と言っていたそうだ。親の「予言」は往々にして当たらないものである。
イーロンはその後、クイーンズ大学やペンシルバニア大学を経て、スタンフォード大学の大学院に進学。ウィンドウズ95が発売された1995年のことで、まわりはインターネットブームに沸いていたころだったという。
熱気の中心に足を踏み入れてしまったイーロンが、学業に貴重な青春をかけるよりも、起業してビジネスにエネルギーを向けるべきだと決心したのは、当然のことだったかもしれない。応用物理学と材料工学を学ぶためにせっかく入ったスタンフォード大学をたった2日で辞めると、イーロンは1歳違いの弟、キンバル・マスクとオンラインコンテンツの出版ソフト制作会社「Zip2」を創業した。
24歳で作った会社をコンパック社に3億ドルで売却したことで、億万長者の仲間入りをしたイーロンは、次にインターネットの決済サービス「Xドットコム」を創業。のちにライバル企業であったコンフィニティ社と合体してできた会社があの「ペイパル社」だ。
さらにそのペイパル社を、最大手オークションサイトのeBayが買い取ったことで、共同創業者だったイーロンは約1億7千万ドル(約170億円)の資産を手にする。それを元手に宇宙ロケット企業「スペースX」を2002年に創業するといったように、イーロンはまるでわらしべ長者のように大金持ちになっていった。イーロンの資産は、今や約80億ドル(約8千億円)と言われている。
実はこのペイパル社の売却にあたっては、イーロンの追放劇が裏にある。2000年に開催されたシドニーオリンピックを観に行こうとオーストラリアに旅立ったイーロンは、その道中で社内のクーデターによって解任されてしまったのだ。ハイライトでは割愛するが、本書にて描かれているイーロン追放やペイパル社売却の裏側は、読んでいるこちらがハラハラさせられてしまうようなドラマであり、ぜひ本書をご参照いただきたい。
なぜイーロン・マスクは宇宙ロケット開発に乗り出したのか。それは、アメリカが火星へ人を送り込む希望を捨てたからだった。
実はアメリカが火星に人を送り込むことを諦めたのは、技術的に困難だからではない。
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