日本では外国人旅行客が急増している。その背景には近隣諸国の経済発展や、円安による日本国内の旅行費用の軽減などがある。さらには、政府が実施している「ビジット・ジャパン事業」によるプロモーション活動や情報発信の影響も大きいだろう。
2020年には東京オリンピック・パラリンピックが控えており、今よりもはるかに多くの外国人が日本を訪れることが確実視されている。観光先進国をめざす政府は、東京オリンピックまでに外国人旅行客を4000万人に増やすという目標を掲げている。
中国人旅行客の「爆買い」ブームも一段落し、今後のインバウンド需要の傾向は「モノ」から、日本らしさの「体験」にシフトすると考えられている。そこで重要になるのは、いかに旅先で満足してもらい、「また日本を訪れたい」と思ってもらえるかという視点である。そのためには、外国人旅行客が何を求めて日本にきているかを知る必要がある。
外国人旅行客は、日本人が想像している以上に、日本式の生活文化や空間に興味をもっている。にもかかわらず、「外国人のために和室を洋室に改装する」といった行動をとると、外国人旅行客の期待に反することになってしまう。地元の神社仏閣や昔ながらの和室など、日本人が気づいていない「ありのままの日本」の魅力を、今一度見つめ直すことを著者は推奨している。
また、日本の子育てや介護、教育、生きがい、収入といった、日本人の暮らしに関心をもっている外国人旅行客は多い。「ありのままの日本」を知ることが、彼らの旅の目的の一つになっているにちがいない。こうした素朴な疑問や質問に対応できるように準備をすることも、外国人旅行客に満足してもらうための秘訣といえる。
外国人旅行客は、観光名所やおいしい料理を目当てに日本を訪れている。しかし、彼らが心から満足する瞬間は、日本人のもてなす心にふれたときだ。つまり、どんなに魅力的な観光スポットを見物したり、いくらおいしい料理を食べたりしても、店員に冷たい態度を取られて嫌な思いをすると、満足度は半減してしまう。
観光スポットを整備し、サービス、食事を充実させることも大切だが、まずは「もてなしの心」をもって接していれば、外国人観光客は喜んでくれるだろう。喜びや悲しみといった感性は万国共通である。
近年はSNSなどで口コミがあっという間に広がる。そのため、「日本に旅行したほうがいい」という評判が各国で広がれば、外国人観光客の数はこれからも増えていくだろう。
富士箱根ゲストハウスの原点は、著者が体験したホームステイにある。めざすのは「外国人を友人として迎え、人としてお世話する場」だ。著者が考える「もてなしの心」とは、「外国人を枠にはめず、こちらの価値観を押しつけず、違いは違いとして受け止めて、柔軟な心で相手の立場を思いやり、尊重すること」だという。
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