ビジネスの現場では誰もが、売上、予算、コストといった数字を意識している。しかし多くの人が、数値化の威力や活用方法を理解できていないのが現状である。
ゼロから始めたベンチャーをわずか35年程度で時価総額10兆円規模の巨大企業に育て上げた孫正義氏。彼は、徹底的に数字にこだわり抜く人物の一人だ。そのこだわりの強さは間違いなく世界トップクラスに入る。これを受け、ソフトバンクでは役職を問わず、「数字に基づいて話さなければ相手にされない」という文化が確立されている。
著者は、数値化によって仕事の問題を高速で解決するための技術、「数値化仕事術」の重要性を説く。数値化のメリットの一つは、目標達成までの道筋が明確になることである。身近な例としてダイエットを挙げよう。「体重を減らす」より「3ヶ月で6kg痩せる」というように、目標を数値で表すほうが、「1週間で500g減量するために夕食を少し減らす」といった次の具体的なアクションを考え出しやすく、実践に移しやすい。また、問題を数値化すれば、現状を正しく認識し、根本的な問題の要因を明らかにしやすくなるのだ。
数値化をビジネスに活かすには、「数字の扱い方のコツ」をつかむ必要がある。基本となるポイントの一部を紹介する。
まずは、問題を解決するための数字は、与えられるものではなく、「自ら取りにいくもの」だと認識することである。自分にとって役に立つ数字は、計測や分析によって自ら作り出すものだ。仕事の中でささいな違和感を抱いたときに、「この事象を裏づける数字はないか」と考え、積極的に数字を取りにいくのである。また、作り出した数字が「次のアクション」につながっていることも大事なポイントとなる。
こうしたポイントを押さえたうえで、数値化に向けた最初のステップは「分ける」ことだ。分け方は種類別やジャンル別にくわえ、「プロセスで分ける」という方法も有効である。
例えば、不動産仲介業の営業で毎月の契約数の目標に達しないという問題を抱えているとしたら、お客様と初めて会うところから契約を結ぶまでの間を、いくつかのプロセスに分ける。「ヒアリング」「物件案内」「条件交渉」「契約」と分けていけば、各ステップまで進んだ人数を計測できる。そして、もし物件案内から条件交渉に進む人数が少ないことが判明すれば、その間で何らかの問題が発生していると推測できる。
現在は様々なITツールが開発されており、誰もが低コストで、しかも簡単にデータを収集し、分析することができる。中には無償で提供されている分析ツールもあるほどだ。
そのような時代においては、数字を上手く活用できる人と、勘や経験則に頼る人との間に致命的な差が生まれることは間違いない。今の時代は、数値化する技術を身につければ、限られたリソースしかない中小企業やベンチャーであっても、イノベーションを起こすことも可能となっている。逆に、数字に疎いままでは、大企業といえども、やがて淘汰されていくだろう。
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