仕事をサボっているわけではないのに、リーダーや上司の立場であるあなたの指示に対しては、正しく行動しない。このような状況が生まれる理由として、次の2つが考えられる。
1つ目の理由は、部下たちに動かなくてもいい環境が与えられているからだ。例えば、ある部下が期限までに書類を提出しないとしよう。それは、過去に同じ指示が出されたとき、そのとおり行動しなくても問題ないという体験が繰り返されたためといえる。
2つ目の理由は、部下が自分の判断基準で動いていいという認識をもっているからである。今まで上司の指示より自己都合を優先して問題がなかったために、こうした認識が定着してしまったと考えられる。
このように、「動かない部下」をつくり出した原因は、上司自身の普段の関わり方にある。問題なのは、部下に指示しかしていないという点だ。上司は、指示した内容を部下にやりきらせるところまで管理、サポート、教育をしなければならない。
成果をつくり出すには、行動を変えることが必須となる。ただし、ビジネスにおいて、成果の出る行動は明確ではない。市場や世の中のトレンド、法律、ライバル会社の取り組みなどが変化すれば、成果を出すための行動も変化していく。だからこそ、成果の出る望ましい行動の仮説を立て、それに沿って行動する必要がある。そのうえで、得られた結果が成果につながっているかどうかを検証し、行動を改善して組織のミッションをクリアしていく。これがマネージャーの役割といえる。
著者が提唱するのは、部下の行動を変革するマネジメント手法、壁マネジメントだ。部下が望ましくない行動に流れないように、上司自身が揺るがない壁になる。具体的には、マネージャーが部下の行動に介入することで、望ましくない行動を止め、成果の出る行動を継続できるよう促す。このマネジメント手法は、業種やリーダーの性格を問わず通用するものである。
マネジメントのよくある失敗の一例として、「間違った場所に壁をつくっている」というケースが挙げられる。
著者の過去のクライアントの営業部長は、「会議でもっと建設的な意見を出してほしい」と考えていた。しかし、実際に著者が会議を観察していると、発言した部下に対し、部長がこう叱りつけていた。「おまえのアイデアは売上に貢献しない。もっと大きなアイデアを出せ」。
本来、望ましい行動は「全員が積極的に発言すること」である。にもかかわらず、部下がその行動をとると、マネージャーが「認めない」「否定する」「怒る」という状態を続けていた。このままでは、望ましい行動が組織やチームに定着することはまずない。マネージャーは「必要な行動は何か」を見極めて介入する必要がある。
壁マネジメントを運用するには、次の3つを決めなければならない。①「行動ルール」の設定、②行動ルールに対して漏れなく介入する「介入ルール」の設定、③介入する際の「フィードバック方法」である。ここからは、それぞれの具体的なポイントを紹介していく。
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