日本が少子高齢化社会にあることは、誰もが知る「常識」だ。だが、その実態を正確に分かっている人はどれだけいるだろうか。実際のところ、政策決定に大きな影響力を持つ政治家や官僚さえも、正確にはわかっていないのが現状である。
2015年の時点で、1億2700万人を数えた日本の総人口は、100年も経過しないうちに5000万人ほどに減ると予想されている。ここまで急激に人口が減ることは、世界を見渡しても前例がない。私たちは、きわめて特異な時代を生きているのだ。
人口が減少しても、すぐさまその影響を感じることはないかもしれない。実際、人口減少に関心をもっていない人も多い。だが、真綿で首を絞められるように、確実に日本国民1人ひとりの暮らしが蝕まれていっている――まさに、これは「静かなる有事」なのである。
人口減少が避けられないのだとすれば、それを前提にして、社会を作り替えていくしかない。そのためには、拡大路線でやってきた従来の成功体験と決別し、「戦略的に縮む」ことを選ぶ必要がある。ただ、その過程では多くの痛みが伴うだろう。
しかし、その改革から逃げるわけにはいかない。めざすべきは、人口激減後を見据えた、コンパクトで効率的な国への作り替えである。高齢者が激増する2042年までに残された時間はちょうど25年だ。国の作り替えにかける時間としては、決して「潤沢」だとはいえない。
それでも、未曽有の人口減少時代を乗り越え、豊かな国であり続けるには、1人ひとりが発想を転換していくしかない。若い世代になればなるほど、人口減少問題を「自分たちの問題」としてとらえており、強い関心をもっている。一方、年配者の中には、「自分たちは“逃げ切り世代”だから関係ない」と決めこんで、人口減少や少子高齢問題に無関心な人も少なくない。
しかし実態を知れば、誰もが逃げ切れないという事実に気づくはずだ。少子高齢化と人口減少に、楽観論や無関心は禁物なのである。
本書は、2017年から2115年までの間に、日本で何が起こるかを時代順に示している。ここではそのなかから、2065年頃までの出来事をピックアップしてご紹介する。
まず、18年になると、国立大学が倒産の危機に陥り、21年には介護離職が大量発生する。24年には戦後のベビーブーマーである団塊世代が全員75歳以上となり、3人に1人が65歳以上という「超・高齢化大国」になるだろう。同時に、全国民の6人に1人が75歳以上になり、毎年の死亡者は出生数の2倍となる。
26年になると、認知症患者が700万人規模となり、介護する側もされる側も認知症患者という現実が待ち受ける。その後も少子高齢化の影響は広がり、27年には輸血用の血液が不足。30年になると、地方から百貨店も老人ホームも消えると予想される。
生産年齢人口が極端に減ると、当然ながら生産力が低下し、需要をまかない切れなくなる。試算では、都道府県の80%が生産力不足に陥るという。
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