いじめからは夢を持って逃げましょう!

「逃げる」は、恥ずかしくない「最高の戦略」
未読
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いじめからは夢を持って逃げましょう!
出版社
パンローリング

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出版日
2017年06月03日
評点
総合
3.5
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

もしも、自分の子どもがいじめにあっているとしたら……、そのせいで、子どもが自分の命を断ってしまったとしたら……。そのような想像したくない出来事を投げかけることから始まる本書は、現在のいじめの実態、学校はいじめにどのように対応しているかということや、子どもを救うために親がとるべき対策について、読みやすくまとめている。

「子ども同士のことに親が介入するのは……」と遠慮する意見もあるかもしれないが、いじめがひとたび大きな問題に発展してしまえば、「昔ながらの精神論では子どもは救えない」と著者は断ずる。残念ながらいじめを認めず、隠蔽しようという学校も多い以上、最終的に自分の子どもを守れるのは自分だ、という覚悟が親には求められる。いじめという問題に大人が正しく介入することの大切さを、首尾一貫して書き続けているのが本書だ。

現在、児童学部の教授を務める著者は、校長職も歴任してきた。自身も学校でいじめ対策に力を入れてきたが、それでも、学校という環境ではいじめが起こることを前提に考えたほうがよいと言う。いじめをなくすことより、いじめが起こったときにきちんと対応し、子どもが幸せに生きていける道を探ることを目指すことがより重要なのだ。わが子がいじめに巻き込まれたとき、親ができることは何か、本書を通じてぜひ考えてみてほしい。

ライター画像
新井作文店

著者

長野 雅弘
名古屋市生まれ。南山大学外国語学部卒業後、教職に就く。数校の校長職(15年)を経て、現在聖徳大学児童学部教授として6期目。長年の現場経験を活かし、実践的な知の体系化研究をしている。特に「学力向上」「生徒指導」「学級経営」「学校危機管理」に精通している。新聞の教育相談連載や関係紙への寄稿が多い。「思春期の学力を伸ばし心を育てる45の言葉」(学研)など、著書約40冊。

本書の要点

  • 要点
    1
    生徒が2人いて、片方が「いじめられた」と言えば、いじめは定義上成立する。いじめ問題はますます身近なものになっている。
  • 要点
    2
    いじめ対策が十分に行われていない学校があるからこそ、親によるいじめ対策が重要だ。親は、子どもの異変を感じたら、子どもの部屋や持ち物をまず調べて、いじめの痕跡があるかどうかを確認しよう。
  • 要点
    3
    いじめの事実が発覚しても、冷静に受け止めること。そして、子どもの話を聞き、学校に訴え、解決しなければ転校に向けた行動を起こそう。子どもが幸せに生きていけるよう、上手に逃がしてやろう。

要約

いじめの実態

いじめは、親が関与すべき問題
bodnarchuk/iStock/Thinkstock

「いじめ 自殺」と検索すると、痛ましい事例が多く並ぶ。短い期間のニュースをたどるだけでも、多くの子どもの命が失われていることがわかる。

いじめは単なるいたずらではない。自殺や不登校など、重大な事態に陥れば、損害賠償請求をされることもある。ひと昔前から現在にかけて、いじめの定義も変わってきたことで、大人たちにますます真剣な対応が求められるようになってきている。

文部科学省の定義によれば、昭和61年度からの定義に、学校としていじめの事実を確認しているものという文言があるのに対して、平成18年度からの定義ではその文言はなくなり、いじめられた児童生徒の立場に立って認定されるものとされている。新定義では、生徒が2人いて、片方が「いじめられた」といえば、いじめと認定される可能性があるのだ。このことは、いじめは、今までよりも件数が増えること、今まで以上に身近な問題になっていることを示唆している。自分の子どもが、「いじめる側」としても「いじめられる側」としても、いじめに巻き込まれる可能性は高くなっているということだ。

そして実際にいじめは、子どものみならず家庭にも大きな災いをもたらす。子どもが悩んでいれば、親もともに悩むことになり、その姿を見た子どもはまた心労を深めてしまう。そうした負の連鎖に入ってしまうと、家族全体が最悪の状態に陥ってしまうことになる。だからこそ、親は子どもがいじめにあわないように最善を尽くすべきであるし、子どもがいじめにあったときのための対処法を学ぶべきなのだ。

学校と「いじめ」の関係性

ニュース番組などで、校長が「いじめは把握しておりませんでした」と謝罪する様子をよく見かける。その後、第三者による調査により、いじめの実態が認められ、報告されることがある。

学校がいじめを隠蔽しようとするケースは多々ある。なぜなら、学校や先生の評価が下がるからだ。いじめに関係している生徒たちが卒業するのを待つ場合さえある。いじめの実態を報告しようものなら、「何を言っているんだ」「あなたの評価が下がるよ」と指摘されることもあるという。

だが一方で、風向きに変化も出てきている。例えば、2015年に茨城県内のいじめ件数が前年比1・5倍になった。一見いじめが増えてまずい状況のように見えるが、実はこれは、学校側がいじめを認め始めた証拠だという。今、教育現場では、何十億と費用をかけていじめ問題に対応するより、いじめがまだ小さな芽のうちに摘み取る体制を作るほうが効果的だという流れが生まれている。

現場の対応
monkeybusinessimages/iStock/Thinkstock

では、具体的に学校では、いじめが大きな問題にならないうちに対処するために、どんなことをしているのだろうか。

著者が実際に学校で行ってきたことを踏まえた「いじめ発見のアクションプラン」は、次のようなことだ。

まず、先生のもとに生徒から情報が上がってくる体制を作る。つまり、「シンパ(共感・信頼してくれる生徒)」を3人ほど作るのだ。作るといっても、学校生活の中で、生徒から相談された際に真剣に対応していくことで自然と絆はできていくので、難しいことではない。そして、シンパの生徒たちからクラスの情報を得るようにする。

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要約公開日 2018.01.13
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