「いじめ 自殺」と検索すると、痛ましい事例が多く並ぶ。短い期間のニュースをたどるだけでも、多くの子どもの命が失われていることがわかる。
いじめは単なるいたずらではない。自殺や不登校など、重大な事態に陥れば、損害賠償請求をされることもある。ひと昔前から現在にかけて、いじめの定義も変わってきたことで、大人たちにますます真剣な対応が求められるようになってきている。
文部科学省の定義によれば、昭和61年度からの定義に、学校としていじめの事実を確認しているものという文言があるのに対して、平成18年度からの定義ではその文言はなくなり、いじめられた児童生徒の立場に立って認定されるものとされている。新定義では、生徒が2人いて、片方が「いじめられた」といえば、いじめと認定される可能性があるのだ。このことは、いじめは、今までよりも件数が増えること、今まで以上に身近な問題になっていることを示唆している。自分の子どもが、「いじめる側」としても「いじめられる側」としても、いじめに巻き込まれる可能性は高くなっているということだ。
そして実際にいじめは、子どものみならず家庭にも大きな災いをもたらす。子どもが悩んでいれば、親もともに悩むことになり、その姿を見た子どもはまた心労を深めてしまう。そうした負の連鎖に入ってしまうと、家族全体が最悪の状態に陥ってしまうことになる。だからこそ、親は子どもがいじめにあわないように最善を尽くすべきであるし、子どもがいじめにあったときのための対処法を学ぶべきなのだ。
ニュース番組などで、校長が「いじめは把握しておりませんでした」と謝罪する様子をよく見かける。その後、第三者による調査により、いじめの実態が認められ、報告されることがある。
学校がいじめを隠蔽しようとするケースは多々ある。なぜなら、学校や先生の評価が下がるからだ。いじめに関係している生徒たちが卒業するのを待つ場合さえある。いじめの実態を報告しようものなら、「何を言っているんだ」「あなたの評価が下がるよ」と指摘されることもあるという。
だが一方で、風向きに変化も出てきている。例えば、2015年に茨城県内のいじめ件数が前年比1・5倍になった。一見いじめが増えてまずい状況のように見えるが、実はこれは、学校側がいじめを認め始めた証拠だという。今、教育現場では、何十億と費用をかけていじめ問題に対応するより、いじめがまだ小さな芽のうちに摘み取る体制を作るほうが効果的だという流れが生まれている。
では、具体的に学校では、いじめが大きな問題にならないうちに対処するために、どんなことをしているのだろうか。
著者が実際に学校で行ってきたことを踏まえた「いじめ発見のアクションプラン」は、次のようなことだ。
まず、先生のもとに生徒から情報が上がってくる体制を作る。つまり、「シンパ(共感・信頼してくれる生徒)」を3人ほど作るのだ。作るといっても、学校生活の中で、生徒から相談された際に真剣に対応していくことで自然と絆はできていくので、難しいことではない。そして、シンパの生徒たちからクラスの情報を得るようにする。
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