男性と女性では、買い物の仕方が異なる。男性は目当ての売り場に直行し、さっと商品を選んですぐに帰るタイプが多い。一方、女性は「ついでに」色々な売り場を見てウインドウ・ショッピングをしつつ、気に入ったものがあれば衝動買いすることも珍しくない。
また、男性は「数字」や「機能性」などのスペックを重視する傾向があるのに対し、女性は「ピンとくるか」「背景にあるストーリーに共感できるか」などのイメージに左右されやすい。
ビジネスとして「女性にモノを売る」うえでは、購買行動にこうした大きな男女差があることをよく意識しておかなければならない。
女の子があこがれる物語の代表格、それが『シンデレラ』だ。シンデレラは「私は本来お城にいるべき人間なのに」と思いながら毎日を過ごしている。
多くの女性もシンデレラと同じように、「いまいる現実の場所」よりも「何不自由なく暮らしている世界」を本来の自分がいる場所だと思っている。女性にとってお城での生活は「めざすべきゴール」ではなく、「本来あるべき姿」なのだ。
したがって女性には、「ないものを手に入れる手段」ではなく、「本当の自分を取りもどす魔法」として、商品やサービスを提示するといい。「もともともっているものが目覚める」というニュアンスを含ませるだけでも、売れ行きは大きく変わる。
女性にとって、自分がいまいる現実は「機械が故障している状態」に似ている。女性は「どこかを少し修理し、足りない何かを手に入れさえすれば、本来の完璧な状態に戻れるのではないか」という「欠乏感」をもっている。加えていまの自分は「仮の姿」だと思っているため、「一瞬ですべてを解決してくれる魔法がある」と、無意識のうちに信じている。だからこそ「本来の自分を取り戻してくれる魔法」に出会うと、衝動買いに走ってしまうのだ。
しかし機能やスペックの説明では、「運命の出会い」は演出できない。女性に必要なのは、商品やサービスを手に入れた先にある「理想の場面」、そこで得られる「理想的な感情」である。その商品が「簡単に手間なく『本来の自分』を取り戻してくれる魔法」と感じさせなければならない。
女性は「理想の自分」を本当の姿だと捉えている。多くの女性は「現実の太っている姿」をそのまま冷静に受けとめてはいない。少しでも痩せて見える角度から自分を見て、ごまかしていることがほとんどだ。「本当の現実」は見たくないのが女性なのである。
したがって商品やサービスを売る際にも、過酷な現実を見せてはならない。ダイエット商品を売るときは、太った女性の写真を使って現実を突きつけるのではなく、スリムな女性が鏡を見ているような写真で、問題をイメージさせる程度にするのが望ましい。
一般に女性は男性よりも、色などの「パッと見たときの印象」に敏感だ。「なんとなくイヤ」と感じてしまうと、その商品はもう買われなくなってしまう。
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