シンガポールやバリ島を拠点にし、日本に定期的に帰国するという著者。意外なことに彼がやっていることは、日本のオフィスで働く会社員とさほど変わらないという。著者のような働き方をする人は、世界中で確実に増えている。
いま日本の働き方は大変革期にある。社会の仕組みやビジネスはインターネット化する一方だ。それにより企業と個人が対等(フラット)な関係でつながり(リンク)、知識などを分け合う(シェアする)方向へ進んでいる。
こうした環境に適応できるのは、何らかの専門性をもった人だけだ。これまで日本を守ってきた「島国という距離の壁」は、インターネットによって破壊された。そして、「日本語の壁」はAIによって取り去られようとしている。本書が提示するのは、これからやってくる変化の波を乗りこなすための心構えや方法である。
タイトルの「どこでも誰とでも働ける」には2つの意味がある。1つは、どんな職場で働いたとしても、周囲から評価される人材になること。もう1つは、世界中のどこでも好きな場所にいながら、気の合う人と一緒に働けることである。では、実際にどうすればいいのか。著者の提言を紹介していこう。
現在のように変化のスピードが速いネット時代においては、PDCAサイクルを回していては時すでに遅しとなる。それよりも、どんどんアイデアを実行して、軌道修正が必要だとわかった時点で適宜それに対応していく、DCPAサイクルを回すほうが望ましい。実行回数が多ければ、失敗してもすぐに取り返せるし、失敗が多い人ほど学びも多いということになる。
『LIFE SHIFT ライフ・シフト』で書かれていたように、人生100年時代が到来すれば、1つのことしかやらないというのはリスクになる。なぜなら、いまは価値ある専門技術でも、その価値がいつまでも続く保証はないからだ。
では、どのようにして新しい知識を身につければいいのか。もちろん転職も1つの方法である。だが、手っ取り早く、低リスクで始められるのは副業やボランティアだ。将来価値が高まる分野や技術がわからなければ、色々と試してみればいい。試行する回数を増やせば、確率論的に最適解が見つかる可能性が高まる。副業やボランティアであれば、たとえ見込み違いだった場合でも傷口は小さくて済む。
著者がプロフェッショナルとしての仕事のやり方を学んだ場所は、マッキンゼーだった。同社では、コンサルタントは社会人1年目の新人であっても、高額報酬を請求する。なぜならコンサルタントはみな、プロフェッショナルとみなされるからだ。
プロフェッショナルという言葉の語源は、自分が何者で、何ができて何ができないかを「プロフェス(公言)」することである。自分の名前で生きる勇気をもつことが、プロフェッショナルの条件といってよい。
自分の名前で生きるためには、自分に何ができて何ができないかをプロフェス(公言)することになる。会社のブランドも肩書も役に立たない。だが、プロフェスを繰り返すことは自分に責任をもつことであり、そういう姿勢がプロフェッショナルへ近づくことを可能にする。逆にいえば、会社名に隠れて個人の名前で生きようとしないことが、これからはリスクになっていくだろう。
嫌な人間や人の足を引っ張る人間というのは、どこにでもいるものだ。本書に書かれていることを実践した結果、社内で目立つこととなり、頭の固いおじさんたちに妬まれることもあるかもしれない。そんなときは、仕事をゲームととらえてみるとよい。
ゲームはすぐに攻略できないほうがおもしろい。ラスボスが強いゲームのほうが、何度もトライしたくなるし、裏技を探してなんとか攻略しようと熱くなるものだ。しかし、ゲームにのめり込む人も、リアルな世界に戻ったとたん、裏技などそっちのけになり、正攻法でいこうとする。
しかし、仕事をゲームととらえればどうか。すると、上司が意地悪であればあるほど、攻略までの過程を楽しめるようになる。そして、自分に対する否定的な意見など気にならなくなるだろう。
また、たとえ嫌な上司がいたとしても、仕事上の関係である以上、そのつきあいは期間限定である。そもそも、今の会社や上司の評価が唯一絶対のものではない。相手が違えば、自分への評価は変わる。たった1つの評価軸に縛られず、失敗を恐れずに新しいことに挑戦するようにしたい。
自分の価値を知るには、転職サイトに登録して労働市場からフィードバックをもらうのがいちばんだ。実際に転職するかどうかはさておき、著者自身も毎年登録内容を更新して、自分への客観的評価を知るのだという。
なぜ毎年転職活動をするのか。それは、自分の市場価値を把握するためだけではない。将来価値が高まりそうな分野を見極め、自分がこれから先、その分野に進むべきかどうかの参考材料にするためでもある。
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