福岡市が地方最強の都市になった理由

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福岡市が地方最強の都市になった理由
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福岡市が地方最強の都市になった理由
著者
出版社
出版日
2018年02月22日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.5
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おすすめポイント

多くの地方都市が、人口減少、産業衰退、広げすぎた市街地の縮小などに悩んでいる。そんななか福岡市は、人口増加、産業集積、密度の高い都市機能を実現している稀有な都市だ。どのようにして福岡市は「地方最強」の都市になったのか。また具体的にどこがどうすごいのか。

福岡市が発展した理由を都市経営的な視点で絞りこみ、丁寧に整理したのが本書だ。時代背景や経済・行政の状況、発展に寄与したキーパーソンたちのエピソードなど、さまざまな観点から福岡市が発展してきた理由を探りつつ、他の地方都市開発における問題点をも浮かび上がらせている。その手腕は見事の一言だ。

しかもここに書かれている指摘は、地方創生という領域以外でも重要なものである。「やれること」ではなく「やるべきこと」をやる。流行に左右されず自分たちの判断でおこなう。誰とどう競争するのか、競争してはいけない点はどこか、あるいはどこで協調すべきなのかを見極める。こうした教訓はそっくりそのまま、自分の人生にも当てはめられるはずだ。

いうまでもなく福岡市や都市開発に興味がある人にとっては必読だろう。だが同時に、いつの間にか自分の生き方についても考えさせられる、そんな一冊でもある。今後の日本を考えるうえでも、自分自身の将来を見つめなおすうえでも、あなたの力になってくれるはずだ。

ライター画像
山田宗太朗

著者

木下 斉 (きのした ひとし)
まちビジネス事業家
一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事
一般社団法人公民連携事業機構理事
1982年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。経営学修士。
高校在学中に早稲田商店会の活動に参画、出資会社の社長に就任。大学院在学中に経済産業研究所、東京財団などで地域政策系の調査研究に従事。2009年、一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立、代表理事就任。内閣官房地域活性化伝道師をはじめ各種政府委員も務める。
主な著書に、『地方創生大全』(東洋経済新報社)、『まちで闘う方法論』(学芸出版社)、『稼ぐまちが地方を変える』(NHK出版新書)、『地域再生の失敗学』(共著、光文社新書)、『まちづくり:デッドライン』(共著、日経BP社)など多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    まちづくりにはいくつか大切にするべき心構えがある。やるべきことに向き合うこと、流行に乗るのではなく自分たちの判断と責任でおこなうこと、量ではなく利益にこだわること、優秀な人材を民間に集めること、そして従来のやり方にこだわりすぎないこと、などである。
  • 要点
    2
    福岡市が評価される理由は、人口、教育、密度、産業、投資という5つの視点で整理できる。
  • 要点
    3
    福岡市の個性の秘密として、民間主導で発展していること、民間投資が活発なこと、周辺都市との協調と競争のバランスが優れていること、伸びしろをムリに伸ばさなかったこと、などが挙げられる。

要約

まちづくりは「常識」を疑え!

「やれること」ではなく「やるべきこと」を

都市経営は50年から100年という時間をかけて成果が現れる分野であり、二世代三世代を経て、ようやく花を咲かせる。したがって数年で到達可能な「やれること」ではなく、「やるべきこと」に取り組むべきである。

そのためには都市をひとつの企業に見立て、ヒト・モノ・カネの生産性を高め、平均所得の向上をめざすことが大切だ。企業と同じように、都市も他の都市とは競争関係にある。競争と協調を理解し、適切な判断ができる都市は発展する。逆にいうと、競争を意識せずに他の都市を真似たり、本来は戦う必要のない都市同士で潰し合いをしたりする都市は発展しない。どこと競争し、どこと競争してはいけないのかを見きわめる必要がある。

流行りを無視して、自分たちの判断と資金で
wildpixel/iStock/Thinkstock

その都市独自の事業に取り組み、他にはない優位性を確立することで、都市は発展する。したがってトレンドを追うのではなく、その対極をめざすべきだ。

国というのは過去の成功事例を、全国で水平的に展開したがるものである。だがそもそも成功とは、リスクを負いながらも、それまで他の地域が考えつかなかったものにいち早く取り組んだからこそ、なし得るものである。同じことを一足遅れで取り組んでも成功にはつながらない。

量ではなく利益を

最近では「人口減少によって地方が消滅する」といわれることが多く、全国各地で人口増を求める政策が強化されている。しかし実際には、人が住み続けている限り、地域そのものが一気に消滅することはない。むしろ人口が多すぎると行政効率は悪化するし、産業規模や密度が適切でなければ、人口増加によるデメリットも浮き彫りになる。

近年は上下水道や道路維持、自動運転といった、インフラ分野での新規技術が次々登場している。そのため低コストで環境を整備し、住人の生活を維持することも十分可能だ。

都市発展において重要なのは、稼ぎを拡大してコストを低下させることである。人口の多さだけでなく、人口規模、人口密度、人口構成を組み合わせて考えていくべきだ。

優秀な人材を民間に

地元の有力大学や東京の大学の出身者にとって、いまや地方公務員は他の有名企業や国家公務員よりも魅力的な就職先となっている。

しかし都市発展という点で考えると、これは由々しき問題だ。なぜなら地方公務員には市場メカニズムが働かないため、生産性の低い環境で働くことになるからである。しかも地方公務員によい人材が流れると、地元民間企業ではよい人材が不足することになり、生産性の低下に繋がってしまう。

地方を活性化させるためには、優秀な人材を役所ではなく民間に集め、生産性を向上させたほうがいい。とくにイノベーションを起こしうる、民間のクリエイターを大切にするべきだ。

【必読ポイント!】 福岡市はここがすごい!

人が住みたくなる都市づくり
Sean Pavone/iStock/Thinkstock

2016年の政令指定都市の人口ランキングにおいて、福岡市は神戸を抜いて第5位にランクインした。人口増加数・増加率ともに急増し、とくに若者人口の多さは政令市のなかで第1位だ。また在留外国人の増加率も高い。

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要約公開日 2018.07.05
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