スノーボーダー用のウェアラブルコミュニケーションデバイスを展開するBONXの創業者兼CEOの宮坂貴大氏。彼は、もともと起業家になりたかったわけではない。地方公務員として働く父を反面教師に、漠然と安定したサラリーマンにはなりたくないと思っていたという。
宮坂氏が大学時代にニュージーランドで日本人スノーボーダーたちと寝食を共にした際、転機が訪れる。直接お金に結び付かないものに人生をかけている人々に出会い、その価値観に強い影響を受けた。そして、スノーボードにのめりこんだ。あるとき、滑っている最中にスノーボード仲間と連絡がつかなくなった体験をきっかけに、滑りながらコミュニケーションをとれるデバイス、BONXのアイデアが生まれた。
スノーボードが好きで、それをもっと面白くするためのアイデアがあるという宮坂氏の状況は、技術力の高い仲間集めに役立った。スタートアップの人材探しでは、技術の高さよりも、ハートの部分、いわばバイブスが重要となる。ノリが合わない人が入ると、組織全体の空気が悪くなったり、結局その人が辞めてしまったりすることにつながる。バイブスが合う人を採用し、試用期間を長く設けるなど、お互いに不幸にならないような採用の工夫を宮坂氏はすすめる。
ハードウェアは比較的調達がしづらいものの、グローバル展開がしやすいという強みもある。GoProがウェアラブルカメラという新しい市場を作り、数千億の規模になったように、BONXも用途や国の広がりによって、ますます市場が拡大する可能性がある。
ビジネスは人と人とのつながりを基本とする。自分たちが参入する業界のネットワークに入りこみ、味方を増やしていくことが大切だ。宮坂氏は、スケート、スノーボード、サーフィンといった、これまで自身が影響を受けたカルチャーに関わる人々に海外で出会ってきた。そして、彼らにBONXを気に入ってもらうことに、喜びを感じると語る。世界的スノーボーダーのビクター・ダビエが商品の使い勝手を褒めてくれたことは、その一例である。尊敬する人に「良い」と思われるものを作れるということが、彼のものづくりの源泉だ。
一方で、会社は人同士がつながり、価値観を伝え合う場所であるというのが宮坂氏の持論だ。人間は、億万長者になることよりも、楽しい時間と仲間がいることのほうが幸せだという。事業の成功をめざすのは前提としながらも、次世代に金銭的なものだけではない成功の尺度を残したい。自分と同じ価値観を持った人が最高だと思える会社にしたい、と野望を語った。
DMM.com創業者兼会長の亀山敬司氏は、露天商のアクセサリー売りからキャリアをスタートさせた。人気のあったトルコ石の卸売りを試みたが、信用がないために買ってもらえないという経験をする。逆にいうと、信用さえあれば、お金がなくても掛け売りで商売ができる。そう痛感した亀山氏は、腰を据えた商売の方向性を探り始めた。
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