未来をつくる起業家 vol.2

未読
未来をつくる起業家 vol.2
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出版社
クロスメディア・パブリッシング

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出版日
2018年03月01日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

スタートアップや起業家と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、シリコンバレーのような求心力のある土地に集まる、情熱に燃える若者たちの姿ではないだろうか。起業支援は今や世界的な流れとなり、日本もその例外ではない。日本の起業家たちの成功ストーリーは、数多く語られるようになってきた。だが、失敗を含むリアルな体験談が広く共有される機会はまだまだ少ない。

著者のケイシー・ウォールは、前作の『未来をつくる起業家』では、日本の起業家たち自身の言葉による成功談と失敗談をまとめ、大きな反響を呼んだ。日本にも起業家精神を浸透させようという思いは一貫している。現在は、スタートアップの立ち上げに挑戦する若き女性を描いた映画をプロデュースしており、2018年下旬に公開予定だという。

続編となる本書では、起業家たちの失敗談が削られることのないように、前作以上に工夫を重ねたという。その甲斐あって、起業で直面するであろうさまざまな障害に対し、克服の道筋が臨場感たっぷりに、詳しく描かれている。起業検討中の方にとって「まさにこんな情報がほしかった」と思う内容ばかりだ。クラウドファンディングのデメリットや、仲間集め、創業から大企業の経営者となるまでの変化など、具体例は枚挙に暇がない。こうした困難を乗り越えて理想を語る起業家たちの姿勢は、読者の仕事観に大きな希望を与えてくれるだろう。起業への一歩を踏み出したいと考えているならば、前作と合わせ、ぜひ読んでおきたい一冊である。

ライター画像
菅谷真帆子

著者

ケイシー・ウォール(Casey Wahl)
創業者&CEOウォール・アンド・ケース
創業者&マネージング・パートナー レッド・ブリック・ベンチャー
米国ニューヨーク州出身、サウジアラビアの砂漠地帯で幼少期を過ごした。米国テキサス大学オースティン校を卒業後、日本に移住。エグゼクティブ人材に特化した人材紹介会社ウォール・アンド・ケースを創業、現在同社は東京、サンフランシスコにてサービスを行い、2015年にはベルリンに進出。リクルートメントにHRテックを積極的に取り入れ、革新的手段と妥協のないサービスを提供している。最も優秀なヘッドハンターに贈られる賞の受賞歴があり、日本語も堪能。また、東京を拠点としたエンジェル投資及びインターネット企業のインキュベーションを行うレッド・ブリック・ベンチャー社を創業。2014年にはスペインに本拠地を置くIEビジネススクールにてMBAを取得。

本書の要点

  • 要点
    1
    良いビジネスとは、よいものをつくるだけではなく、よいストーリーがあり、よい人が集まり、よいお金が循環することによって成立する。
  • 要点
    2
    めざすビジネスを成し遂げるには、社会におけるビジョンとミッションを明確にし、自分と会社や従業員の成長に重きを置くことが必要だ。
  • 要点
    3
    スタートアップにとって重要なのは、売上へのこだわりであり、リソースがない中でもきちんと収益を出すことである。

要約

好きなことで人を喜ばせる:宮坂貴大氏

サラリーマンになることへの違和感
Digital Vision./iStock/Thinkstock

スノーボーダー用のウェアラブルコミュニケーションデバイスを展開するBONXの創業者兼CEOの宮坂貴大氏。彼は、もともと起業家になりたかったわけではない。地方公務員として働く父を反面教師に、漠然と安定したサラリーマンにはなりたくないと思っていたという。

宮坂氏が大学時代にニュージーランドで日本人スノーボーダーたちと寝食を共にした際、転機が訪れる。直接お金に結び付かないものに人生をかけている人々に出会い、その価値観に強い影響を受けた。そして、スノーボードにのめりこんだ。あるとき、滑っている最中にスノーボード仲間と連絡がつかなくなった体験をきっかけに、滑りながらコミュニケーションをとれるデバイス、BONXのアイデアが生まれた。

バイブスの合う仲間を探す

スノーボードが好きで、それをもっと面白くするためのアイデアがあるという宮坂氏の状況は、技術力の高い仲間集めに役立った。スタートアップの人材探しでは、技術の高さよりも、ハートの部分、いわばバイブスが重要となる。ノリが合わない人が入ると、組織全体の空気が悪くなったり、結局その人が辞めてしまったりすることにつながる。バイブスが合う人を採用し、試用期間を長く設けるなど、お互いに不幸にならないような採用の工夫を宮坂氏はすすめる。

自分が最高だと思える会社をつくる

ハードウェアは比較的調達がしづらいものの、グローバル展開がしやすいという強みもある。GoProがウェアラブルカメラという新しい市場を作り、数千億の規模になったように、BONXも用途や国の広がりによって、ますます市場が拡大する可能性がある。

ビジネスは人と人とのつながりを基本とする。自分たちが参入する業界のネットワークに入りこみ、味方を増やしていくことが大切だ。宮坂氏は、スケート、スノーボード、サーフィンといった、これまで自身が影響を受けたカルチャーに関わる人々に海外で出会ってきた。そして、彼らにBONXを気に入ってもらうことに、喜びを感じると語る。世界的スノーボーダーのビクター・ダビエが商品の使い勝手を褒めてくれたことは、その一例である。尊敬する人に「良い」と思われるものを作れるということが、彼のものづくりの源泉だ。

一方で、会社は人同士がつながり、価値観を伝え合う場所であるというのが宮坂氏の持論だ。人間は、億万長者になることよりも、楽しい時間と仲間がいることのほうが幸せだという。事業の成功をめざすのは前提としながらも、次世代に金銭的なものだけではない成功の尺度を残したい。自分と同じ価値観を持った人が最高だと思える会社にしたい、と野望を語った。

【必読ポイント!】 露天商から高層ビルの上へ:亀山敬司氏

信用がないと売れない
GYRO PHOTOGRAPHY/amanaimagesRF/iStock/Thinkstock

DMM.com創業者兼会長の亀山敬司氏は、露天商のアクセサリー売りからキャリアをスタートさせた。人気のあったトルコ石の卸売りを試みたが、信用がないために買ってもらえないという経験をする。逆にいうと、信用さえあれば、お金がなくても掛け売りで商売ができる。そう痛感した亀山氏は、腰を据えた商売の方向性を探り始めた。

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要約公開日 2018.09.05
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